2009/11/02

こんにゃくの話

効果・効能:便秘改善効果、ダイエット効果、カルシウム供給源、コレステロール値上昇抑制作用など。
こんにゃく主成分グルコマンナンの効果・効能:便秘改善効果、ダイエット効果、コレステロール値減少作用、中性脂肪値減少作用、血糖値減少作用など。

 こんにゃく芋はサトイモ科の多年生草で、原産地はインドネシア半島といわれています。こんにゃく芋は種芋から増やしますが、成長するのに2~3年が必要です。中国から日本へ伝わったと考えられますが、その時期ははっきりしません。こんにゃくのことが日本で最初に書物に記載されたのは平安時代であり、一般食品として重用され始めたのは江戸時代になってからです。
 こんにゃく特有のプリプリした歯ざわりは、主成分であるグルコマンナンという水溶性食物繊維がアルカリ性物質(消石灰や炭酸ソーダ)によって凝固したためです。こんにゃくの作り方は、こんにゃく芋を薄く切って乾燥させ、さらに細かい粉末(精粉)にします。この精粉の水溶液にアルカリ性物質を加えると、精粉中のグルコマンナンが凝固します。何回もアク抜きをして、こんにゃくができます。こんにゃくを日常的に食べている民族は日本人だけです。室町時代、こんにゃくは高級食品でした。僧院で精進料理に使われたり、寺院から武家や公家への贈答品にも用いられました。こんにゃくには体内をきれいにする作用があることは古くから知られ「胃腸のほうき」、「おなかの砂おろし」などといわれ、季節の変わり目などに心身の不浄を払うために食べられることが多かったといわれています。これに対して、欧米人はこんにゃくのことを「悪魔の舌」と呼び、彼らには親しめない食べ物のようです。
 こんにゃくおよび主成分グルコマンナンの効果・効能について次に記します。
1.こんにゃく:板こんにゃく、糸こんにゃくなどは主成分グルコマンナンが凝固し水に不溶性になったもので、水溶性のグルコマンナンとは生理作用がかなり異なります。こんにゃくは消化酵素では分解されず、噛み砕かれたこんにゃくは小腸下部から大腸において腸内細菌によって分解されます。便中にはこんにゃくの形は残っていません。 
・便秘改善効果 こんにゃくのような食物繊維が多い食品は一般に、かさが大きく、便の量も多くなりますので、腸の内壁を刺激し便の流れをよくし、便秘の解消になります。
・ダイエット効果 こんにゃくは水分が96~97%で、残りの大部分はほとんど消化されない水溶性食物繊維であるグルコマンナンです。こんにゃくは栄養分がほとんどないため、昔からダイエット食品として注目されてきました。毎日、こんにゃく製品200gを食べ、糖質・脂肪の摂取量をその分だけ減らし1カ月間継続したところ、
体重が約3キロ減ったという事例があります。
・カルシウムの供給源 カルシウム含量は板こんにゃく100g当たり43mg;しらたき100g当たり75mgと多くはありませんが、こんにゃく中のカルシウムは胃酸のような溶液に溶出されやすいことが確認されています。胃中で溶出されたカルシウムは小腸から吸収利用される可能性が大きく、こんにゃくはカルシウムが唯一の栄養素であると考えられます。
・コレステロール値上昇抑制作用 健康な被験者6名がバターを大量に摂取したところ、血液中のコレステロール値は数日で著しく上昇しました。次いで、バターに加えて大量のこんにゃくを摂取したが、コレステロール値は低下しませんでした。しかし、こんにゃくの摂取期間中はコレステロール値の上昇が抑制されました。
 これらのほか、噛み砕かれたこんにゃくが胃・腸内を移動するため、こんにゃくは胃や腸をきれいにすることが期待されます。
Ⅱ.主成分グルコマンナン:水溶性のグルコマンナンは胃や小腸の上・中部でゼリー状となり、コレステロールや中性脂肪、さらに発がん物質までも包み込んで、大腸に移動させ排泄させます。
・便秘改善効果 グルコマンナンのような食物繊維を摂取すると便が固まらず、腸が運動しやすくなり、便も流れやすくなります。グルコマンナン1日3gを便秘の高齢者に投与したところ、被験者の約2/3に便秘改善効果が認められたと報告されました。
・ダイエット効果 上記こんにゃくと同じです。
・コレステロール値・中性脂肪値の減少作用 コレステロールが増えすぎると、動脈硬化の原因となります。グルコマンナンは一緒に食べた食品中のコレステロール吸収を抑制するだけでなく、既に体の中にあるコレステロールも減少させる作用があります。健康な女子16名がバターを摂取しました。血中コレステロール値はバターの摂取によって上昇しましたが、バターと高純度のこんにゃく精粉(主にグルコマンナン)(12g/日)を一緒に摂取すると減少しました。また、70歳以上の女子12名が高純度のこんにゃく精粉3g/日を4週間摂取したところ、血中コレステロール値の約10%が減少し、中性脂肪値は約20%も減少しました。実験動物の場合でも、血中総コレステロール値、悪玉コレステロール値、中性脂肪値の減少が報告されました。
・血糖値減少作用 糖尿病患者13名がグルコマンナン7.2gを30日間続けて摂取した結果、絶食時の血糖値が29%減少することが認められました。さらに、健康な男子7名が16%の糖(グルコース)溶液500ml;別に同液にグルコマンナン5g添加した溶液を摂取したところ、グルコマンナンを添加した場合には、糖溶液に比べて30分後の血糖値が15%減少し、インスリン濃度も33%減少することが分かりました。また、Ⅱ型糖尿病患者72名が高純度のこんにゃく精粉を65日間続けて摂取した結果、食事2時間後の血糖値が著しく減少しました。中性脂肪過多の患者では中性脂肪値も著しく減少しました。このほか、血糖値や血中コレステロール値、悪玉コレステロール値を改善させるので、グルコマンナンは高血糖症の予防に大変有用であると報告されました。
・血圧降下作用 こんにゃく精粉のアルコール抽出液をウサギに注射すると、明らかな血圧降下が示されました。このことからグルコマンナンには血圧降下作用が期待されます。
 これらのほか、グルコマンナンが実験動物の乳がんや大腸がんの発症を抑制することも報告されています。
 最後に、グルコマンナンがアルカリ性物質によって固められていない食品には、こんにゃくゼリーがあります。これはこんにゃく粉に果汁などを加えて加熱したもので、健康によいと宣伝されています。また、米と一緒に炊くことで、カロリーを抑えることができる米粒状の食品も開発されました。病院や社員食堂などで利用されています。
一休み:「コンが尽きたらコンのつくものを食べよ」という言葉があります。「精根尽きた」とき、だいこん、れんこんこんぶ、こんにゃく、ごんぼうなどを食べるとよいと昔の人は教えています。カロリーが少なく、排便を促す食物繊維食品は「精根尽きた」とき体をリセットし健康によいと教えているのでしょう。
参考資料:1.沖増 哲:こんにゃくの科学 渓水社 平成5年
       2.辻 啓介:健康食 こんにゃく 農山漁村文化協会 昭和62年
       3.辻 啓介ら:栄養学雑誌 Vol.31 No.4 152(1973)
       4.Mao CPら:Acta Pharmacol Sin 2002 Sep;23(9):855-9
5.Hou YHら:Biomed Environ Sci. 1990 Sep;3(3):306-14
   6.Chen HLら:J Am Coll Nutr. 2003 Feb;22(1):36-42

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2009/10/01

アボカドの話

 アボカドはクスノキ科ワニナシ属の熱帯性常緑高木、または、その果実を指します。原産地はメキシコ南部から中央アメリカを経てコロンビア・エクアドルにかけての地域といわれています。アボカドは数千年の歴史があるといわれていますが、栽培記録があるのは13世紀頃で、当時のインカ王の墓から種子が出土しています。その後、16世紀頃にアメリカに伝来し、ヨーロッパやオーストラリアなどに伝わり、日本に導入されたのは100年ほど前のことです。現在では、メキシコと並んでブラジルとアメリカのカリフォルニアが大産地となっています。
 アボカドの果肉にはタンニンが含まれているので、空気に触れると酸化し、黄緑色が黒くなります。これを防ぐにはレモンなどを加えて酸化を防止するか、空気に触れないように冷凍します。
 アボカドは生食されている38種類の果実のうち、最も栄養価の高い果実です。カロリーは100gで187kcal(ご飯:
168Kcal)もありますが、カロリーの多い割りには糖質は6.2%(ご飯:37.1%)と少ないので、糖尿病患者が食べるとよいといわれています。また、脂肪分が豊富であり、「森のバター」とも呼ばれており、この脂肪分はオリーブ油に近い組成で、動脈硬化や心筋梗塞を防ぐ不飽和脂肪酸のオレイン酸が多く含まれています。オレイン酸は善玉コレステロール(HDL)を低下させずに、悪玉コレステロール(LDL)を低下させ、また、がんを抑制する効果が大きいことが認められています。地中海沿岸に住む人々は心筋梗塞の発生率が極めて低く、オリーブ油の消費量と心疾患の発生率の低さに深い関係があることが分かりました。この事実によってオリーブ油に多く含まれているオレイン酸が注目されるようになりました。このほか、ミネラルやビタミン類なども豊富で、カリウム、マグネシウム、リンは生食されている果実の中では最も多く、ビタミンE、葉酸、食物繊維はトップクラスです。カリウムは非常に多く含まれ、その量はバナナの2倍程度です。カリウムは心臓病や全身筋肉の脱力感などを予防します。また、カリウムは激しいスポーツによって汗と一緒に流出し、欠乏すると筋肉が痙攣を起こすといわれています。テニスの女王と呼ばれたキング夫人がアボカドの愛好者であったことも有名な話です。ビタミンEはアボカド1個半程度で成人男性のビタミンEの目安量である10mgを摂取できます。ビタミンEは強力な抗酸化作用があり、老化の原因となる過酸化脂質の害を防ぎ、シミ、ソバカス、ひわの防止に役立つといわれており、また、がんなどの原因となる活性酸素を消去します。
 アボカドの機能性について研究例を次に記します。
血液中の脂質状況改善:アボカドを加えた食事が血液中の脂質にどのように影響するか、高コレステロール血症の患者13名について4週間にわたって試験したところ、アボカドを加えた食事では悪玉コレステロールおよび中性脂肪が減少したと報告されました。高コレステロール血症の患者37名および健康者30名の試験では、アボカド添加食は健康者では総コレステロールレベルが16%減少、患者では総コレステロールが17%、悪玉コレステロールが22%、中性脂肪が22%減少し、善玉コレステロールは11%が増えました。
 一方、アボカドなどから得られるオレイン酸に富んだ食事(アボカド食)、他方は炭水化物に富んだ食事(炭水化物食)が、Ⅱ型糖尿病患者12名における食後の脂質状況や血糖値にどのように影響するか試験されました。その結果、アボカド食では血液中の中性脂肪は大きく減少し、血糖値は両食事ともほぼ同レベルでした。炭水化物食の一部をアボカド食に置き換えると、脂質状況が改善されました。
前立腺がん予防:緑黄色のアボカドにはカロテノイドのルテインやビタミンEが多く含まれています。ルテインは大腸がん、肺がん、子宮がんなどの発生を抑え、ビタミンEはがんなどの原因となる活性酸素を消去します。これらを含んだアボカド抽出物は前立腺がん細胞の成長を阻止することが示されました。
 上記のほか、追熟したアボカドからたんぱく質分解酵素の作用を抑制するシスタチンが見出されました。このシスタチンは細菌・ウイルスなどから生体を守る生体防御作用、炎症を抑える作用などの生理機能を持つたんぱく質であると考えられています。このほか、乾燥肌や老化肌に有効であるとされるアボカドオイルが市販されていますが、最近開発されたアボカドオイル含有のB12クリームは乾癬症の局所治療に著しい効果があったと報告されました。
 アボカドはサラダやサンドイッチ、ハンバーガーなどに用いられますが、甘味がほとんどないため鮮魚の刺身のようにわさび醤油で食べたり、巻き寿司のネタとしても利用されます。
 なお、アレルギーをもつ人はアボカドでも症状が出ることがあります。また、特定のクスリを阻害する成分が僅かに含まれているため、療養中の人は医師に相談してください。また、インコ、ウサギなどのペットに与えると中毒症状を起こし、痙攣・呼吸困難などに陥ることがあります。注意してください。
参考資料;
①間芋谷 徹・田中敬一:くだもののはたらき 日本園芸農業協同組合連合会 2005年
②五訂 食品成分表 第一出版    
③Carranza-Madrigal Jら:Arch Med Res. 1997 Winter;28(4):537-41     
④Lopez Ledesma Rら:Arch Med Res. 1996 Winter;27(4):519-23     
⑤Lerman-Garber Lら:Diabetes Care. 1994 Apr;17(4)311-5       
⑥Lu QYら:J Nutr Biochem 2005 Jan;16(1):23-30

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2009/09/08

なすの話

 なすはナス科ナス属の植物で、わが国では一年生植物ですが、熱帯では多年生植物で越年して灌木状となります。原産地はインド東部で、日本では既に奈良時代には広く栽培されていたようです。なすは大昔から漬けものにして保存したり、煮物、焼き物、和え物、揚げ物などに利用され重要な野菜の一つでした。江戸時代になると、静岡県の三保では油障子を被覆材として保温した促成栽培を行い、5月頃から初なすを生産して江戸に送っていました。初なすは賄賂に使われるくらい高価で人気のあった野菜でした。なすはビタミン類、ミネラル類は少なく、栄養価は低いとされていますが、なす皮の黒紫色はアントシアニン系色素で主としてナスニンによるものです。アントシアニンや切り口を褐変させる物質ポリフェノール類には活性酸素の働きを抑制する作用があります。
アントシアニンは網膜を活性酸素の害から守るとともに毛細血管を強化し、血行をよくします。また、血圧を上げる酵素の働きを抑制して高血圧を予防します。このため、アントシアニンは動脈硬化や心筋梗塞、脳血管障害の予防にも役立ちます。ポリフェノール類も活性酸素の攻撃を抑え、がんの発生・進行や老化を防ぎ、動脈硬化も予防するといわれています。さらに、なすはアルカロイドを極微量含んでいます。アルカロイドには一般に強い生理活性がありますが、低濃度では薬理作用があります。このアルカロイドには強心作用、消炎作用、中枢神経に対する作用、がん細胞抑制効果などが報告されています。なすの民間療法で、のぼせや高血圧に効く、体温を下げる、鎮静作用、消炎作用がある、悪酔い防止効果などがあるといわれていますが、このアルカロイドが関係していると考えられます。このほかの民間療法として、イボ、あせも、ニキビにはヘタの切り口汁を塗布する;歯槽膿漏の予防にはヘタの黒焼き粉末に塩を混ぜて使用するなどがあります。なすは体温を下げる効果があるので、夏に適した食品です。夏バテ気味の人はビタミンEを豊富に含む植物油を使って炒めものにする、また、カロリーを抑えたい人は焼きナスや漬け物にして皮ごと食べるとよいでしょう。
 なすの機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:私たちが普段食べている野菜や果物である、キャベツ、トマト、なす、ほうれん草、りんごなどの中から16種類を選び、これらのアルコール抽出物が強力な発がん物質(Tr-P-2)の働きを抑制するかどうか試験したところ、なすでは82.5%という優れた抑制率が示されました。さらに、自動車の排気ガスなどに含まれる発がん物質ベンツピレンやカビ毒で強力な発がん物質アフラトキシンB1の働きも抑制するなど、なすには種々の発がん物質に対して幅広い抑制力があることが明らかになりました。しかも、100度で20分間加熱しても、なすでは82.5%の高い抑制率が認められました。
 別に、なす皮に含まれているアントシアニンには抗酸化作用があり、抗変異原性(発がん物質の生成を抑制する性質)が認められました。また、なすの抗酸化成分は合成抗酸化剤(BHA)に匹敵することも分かりました。
糖尿病の患者食:アメリカ国立衛生研究所の国立糖尿病教育計画ではⅡ型糖尿病患者用の食事メニューとして、食物繊維が豊富で炭水化物が難溶性という理由で、なすをベースとした食事が推奨されているようです。しかし、より科学的な根拠として、なすはでん粉などの糖質を分解する酵素の働きを抑制し血糖値をコントロールする、さらに血圧を上げる酵素の働きも抑制して血圧もコントロールすると報告されました。
免疫増強作用:免疫とはウイルスやがんのような異物を見つけ、それを排除する力です。実験動物にいろいろな野菜や果物の抽出物を静脈注射して血液中のTNF(白血球が作り出す物質)の産生能を調べたところ、なす、キャベツ、だいこんなどは臨床で用いられている免疫剤と同じくらいのTNFを増やすことが分かりました。TNFは免疫ホルモンの一種で腫瘍壊死因子と訳されており、腫瘍を動物に移植し、その動物にTNFを静脈注射すると腫瘍だけを壊死させるという物質ですが、さらにTNFはウイルスや病原菌を排除する作用もあります。そこで、なすはがん予防だけでなく風邪などの感染症予防にも期待できます。
コレステロール値の改善:なすは血中コレステロールを減らすと広く信じられ、多くの国々でコレステロール低下食として利用されてきました。しかし、これらに関係した研究はほとんど報告されていませんでした。2004年、高コレステロール血症患者32名を対象として、なす粉末が血中コレステロールにどのように影響するか5週間継続して試験されました。その結果、悪玉コレステロール値はやや減少し、善玉コレステロール値はやや増加しました。しかし、高コレステロール血症患者の食事治療に相応しい効果は認められませんでした。
 これらの研究のほか、なすが皮膚の急性アレルギー反応を阻止した、手足の浮腫(むくみ)を阻止した、紫外線によるシミ、ソバカスの原因物質であるメラニン生成を抑制したなどが報告されました。
 なすに関する諺を次に紹介します。
その1:「秋なすは嫁に食わすな」
   なすは嫁の体を冷やし、種が少ないので食わすと子宝に恵まれないとの説があります。
その2:正月に「一富士、二鷹、三ナスビ」の夢を見ると縁起がよい。
   駿河の国(現在の静岡県)の高いものとして、「富士山、愛鷹山、初なすの値段」から由来しているといわれて   います。当時、初なすの値段はバカ高かったようです。
その3:「親の小言とナスの花は千に一つの無駄がない」
   なすの花は結実する割合が高いことと、親の小言の大切さを説いた諺です。
 なお、なすは連作障害を起こしやすい野菜です。なすはトマト、ジャガイモ、ピーマン、とうがらしなどナス科野菜とも相性が悪く、何も処置を施さない場合、これらの野菜栽培5~7年後から、なすを植えるとよいといわれています。
参考資料:
①中村 浩編:野菜の魅力p.163 2001年7月 化学工業日報社
②西野輔翼:がん抑制の食品事典p.56平成18年10月 法研
③Kwon YIら:Bioresour Technol. 2008 May;99(8):2981-8 
④山崎正利:サイトカイニンの秘密 1999年7月 PHP研究所    
⑤Guimaraes PRら:Braz J Med Biol Res. 2000 Sep;33(9):1027-36               
⑥Praca JMら:Arq Bras Cardiol. 2004 Mar;82(3):269-76

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2009/08/01

ジヤガイモの話

 ジャガイモはナス科ナス属の植物で、地下茎の先端が肥大してイモになります。ジャガイモは原産地が南米・アンデス山中のチチカカ湖周辺と考えられており、かって栄えたインカ帝国の主要な作物でした。スペイン人がヨーロッパに持ち込みましたが、運搬中に芽が出たものを食べて腹痛や下痢などの中毒を起こしたため、ジャガイモは「悪魔の植物」と呼ばれました。17世紀にアイルランドで食用として栽培されるようになりましたが、1800年代に主食であるジャガイモに疫病が大流行して収量が激減し大飢饉となり、多くのアイルランド人がアメリカに移住しました。この中にケネデイおよびレーガン・元アメリカ大統領の祖父がいたのは有名な話です。日本へは慶長6年にオランダ船がジヤカトラ(現、インドネシアの首都ジヤカルタ)を経由して長崎に伝えたとされています。当初は観賞用植物として栽培されていました。ジャガイモは寒冷な気候に耐え、痩せた土壌でも栽培しやすく、生育が非常に早く、単位面積当たりの太陽エネルギー固定率があらゆる作物の中でもトップクラスです。そのため、江戸時代に幾度となく発生した飢饉の際に、救荒作物として主食である米・麦等の代用食として食べるようになりました。
 現在、ジャガイモは世界の五大食用作物(小麦、水稲、大麦、トウモロコシ、ジャガイモ)の一つとされています。
 ジャガイモの主成分はでん粉で、現在市販されている片栗粉のほとんどはジャガイモでん粉です。ジャガイモは低カロリー食品です。可食部(水煮)100g当たりのカロリーは73Kcal、ご飯の1/2以下;カリウムは340mg、ご飯の約12倍、たまねぎの2倍以上;ビタミンB1、B2は、ご飯の3倍;ビタミンCは21mg、ご飯はゼロ、小松菜(茹で)と同程度;食物繊維は1.6g、ご飯の5倍以上、セロリーと同程度含まれています。
 このように、ジャガイモは穀物と野菜の両方の働きを持っています。カリウムはナトリウム(食塩)を排泄する作用があるので、血圧低下に効果があり、食物繊維によるナトリウム吸着作用や便秘予防効果もあるので、ジャガイモは高血圧の予防食品といえます。また、ジャガイモのビタミンCはでん粉に包まれているため、加熱調理しても分解しにくいのが特徴です。アントシアニン色素を含む赤紫色のジャガイモには強い抗酸化作用があり、インフルエンザウイルスに対する増殖抑制やヒト胃がん細胞を死滅させるような機能も確認されています。
 ジャガイモの機能性について研究例を次に記します。
「がん」に関する研究:食品を高温(120℃以上)で加熱調理すると有害物質「アクリルアミド」が生成されます。この物質はヒトに対して「おそらく発がん性がある」とされており、ポテトチップス、フライドポテト、コーヒー、ほうじ茶、野菜の炒めもの、トーストパンなどに広く含まれ、特にポテトチップスには多く含まれています。2006年、食品から摂取されるアクリルアミドが大腸がんや直腸がんの発症リスクを高めるかどうか、女性61,467名を対象にして疫学調査が実施されました。その結果、食品から摂取されるアクリルアミドが大腸がんや直腸がんの発症リスクを高めることは認められませんでした。また、大規模な疫学調査でも食品から摂取されるアクリルアミドが大腸がんや直腸がんの発症リスクになるという証拠は認められませんでした。しかし、逆に食品中のアクリルアミド摂取量が最も多い集団は、少ない集団に比べて、子宮内膜がんと卵巣がんの発症リスクが2倍近くなるという報告もありました。また、ジヤガイモ自体の摂取が肺がんや乳がん、腎臓がんの発症リスクを減少させるとか、大腸がんの発症リスクを高めるという疫学調査の結果も発表されました。
 このように、ジヤガイモが各種がんの発症リスクを減少させるのか、高めるのか、現状では十分には明らかではありません。
 ジヤガイモやポテトチップスを食べるときは、ご飯代わりに沢山食べるのではなく、野菜・果物などと一緒に適量食べるのがよいでしょう。
中性脂肪低下作用:生ジヤガイモでん粉を20%添加した食餌で実験動物を14日間飼育したところ、血液中の中性脂肪(mg/dl)が対照群と比べて著しく低下しました。このことからジヤガイモには中性脂肪低下作用が期待されます。
腸内環境改善の効果:生ジヤガイモでん粉を9%添加した食餌で18匹の実験動物を14日間飼育したところ、腸内善玉菌を増殖する効果が認められました。このことからジヤガイモには腸内環境を改善する効果が期待されます。
 最後に、ジヤガイモにはα-ソラニン、α-カコニンというアルカロイドの仲間が含まれています。これらの成分は古代ギリシャ時代から抗がん薬として使われていたといわれていますが、多量摂取すると中毒します。ジヤガイモを食べる際には、これらの成分が多く含まれている芽や緑色を帯びた皮の部分を取り除かなければなりません。ジヤガイモは日光に当てずに、冷蔵庫は避け暗所に保管します。
参考:
①日本食品保蔵科学会誌vol.33(1)27-31 2007
②西野輔翼:がん抑制の食品事典p.38 法研 平成18年10月 
③Mucci LA ら:Int J Cance. 2006 Jan 1;118(1):169-73
④Hogervorst JG ら:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2007 Nov;16(11):2304-13
⑤Ruano-Ravina A ら:Nutr Cancer. 2002;43(1):47-51
⑥kristi A ら:Am J Epidemiology 1994 Jan;139(1):1-15


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2009/07/02

キウイフルーツの話

 キウイフルーツ(別名:キウイ)がニュージーランドからアメリカへ初めて輸出された当時、アメリカと中国は朝鮮戦争を契機として敵対関係にありました。輸出業者は英名「チヤイニーズ・グズベリー」ではキウイフルーツは売れないと考えて、この果実がニュージーランドの国鳥「キウイ」と姿形が似ているので、キウイフルーツと名付けたといわれています。キウイフルーツはマタタビ科マタタビ属の雌雄異種の落葉蔓性植物、またはその果実です。
 原産地は中国長江流域の山岳地帯で、ニュージーランドへは1906年に種子が導入され栽培・改良されました。日本には1964年に果実が輸入されました。栽培は比較的簡単で、園芸店などで購入した雌雄の苗を1株ずつ植え栽培すれば、秋には食べきれないほどの果実が収穫できます。しかし、キウイフルーツはマタタビ属植物であり、ある種のネコ科動物に麻酔性があるので、幼木や若葉はネコ害を受けることがあります。また、キウイフルーツは樹上では完熟しないので、果実は収穫後30~60日程度の追熟をさせる必要があります。ニュージーランド産キウイフルーツは5月から12月頃、国内産は11月から5月頃に市場に出回ります。
 キウイフルーツは栄養の宝庫といえる果物です。ビタミンC、ビタミンE、カリウム、カルシウム、リン、食物繊維などは果物の中でトップクラスです。ビタミンCは69mg/100g含まれており、みかんの2倍以上、いちごを上回ります。2個食べると、成人の1日推奨量を十分に摂取できます。更年期障害などに伴う肩こり、手足のしびれなどの改善に有効なビタミンEはキウイフルーツ1個(100g)中に1.3mg含まれており、この量は卵(1.1mg/100g)とほぼ同量です。血圧を下げ、心臓発作のリスクを低下させるカリウムは290mg/100g含まれています。カリウムの摂取量は生活習慣病予防の観点からみて著しく少ないので、キウイフルーツを食事に加えると高血圧などの生活習慣病予防に有効です。また、成長促進や貧血の予防、アルツハイマー認知症や心臓病などを予防する葉酸も
36μg/100g含まれています。葉酸を長期にわたって多く摂取すると、すい臓がんの発症リスクが下がることが、スウエーデンに住む81,922名を対象とした疫学調査で明らかにされました。このほか、蛋白分解酵素アクチニジンが含まれています。生肉にキウイフルーツのスライスを挟んでおくと、肉が軟らかくなり、消化促進効果も期待できます。
 キウイフルーツの機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:ヒトの体細胞の核の中にあるDNAが酸化され傷つくと「がん」の原因となります。野菜や果物が「がん」を予防するのは、これらの抗酸化力がDNAの酸化を抑制するからです。2003年、ノルウエーのオスロ大学の研究によると、健康人が食事の時にキウイフルーツを3週間摂取したところ、キウイフルーツの摂取量に応じて血液中の抗酸化レベルが増大し、さらに、酸化され傷ついたDNAを修復することも認められました。また、キウイフルーツの強力な抗酸化力はビタミンCよりも効果的であることも分かりました。また、キウイフルーツには非常に強い抗変異原性(発がん物質の作用や生成を抑制する性質)が認められました。ある種の発がん物質に対しては、たまねぎ、にんにく、人参よりも抗変異原性が強いことが明らかにされました。
心臓病予防効果:ビタミンCやビタミンE、ポリフェノール類を豊富に含むキウイフルーツは心臓病に有効であるといわれています。コレステロールなどが溜まって生じる動脈硬化によって血栓ができやすくなりますが、2004年、ノルウエーのオスロ大学の研究によると、毎日、2~3個のキウイフルーツを28日間摂取すると血栓の形成が抑制され、血液中の中性脂肪も15%低下しました。2006年、日本で70歳以上の高齢者961名を対象とした疫学調査の結果が発表されました。それによると、体内のコレステロールや中性脂肪など脂質の最終酸化物は動脈硬化や冠動脈性心疾患の発症因子になることが既に明らかにされていますが、この最終酸化物はキウイフルーツ、いちご、柿などを摂取すると減少することが分かりました。また、キウイフルーツの抽出物について、抗酸化力、血圧上昇抑制力、血栓溶解活性などが試験された結果、キウイフルーツには心臓血管を保護する性質があることが認められました。別の試験でも血圧上昇抑制力が大きいことが証明されました。
疲労回復効果:キウイフルーツには有機酸としてクエン酸、リンゴ酸が含まれ、レモンやライムなどに次いで有機酸が多く、疲労回復に役立ちます。1990年、中国の北京医科大学で暑い環境下でトレーニングする運動選手に対してキウイフルーツベースのスポーツドリンクの効果が試験されました。このドリンクの飲用によって、疲労するまでの時間が延長し、選手の血流量も増加し、2.5時間以上トレーニングしても血液中の糖濃度は正常なレベルであったと報告されました。
 これらのほか、60歳以上の高齢者38名に対して、体重30kg当たりキウイフルーツ1個を3週間継続して食べてもらい、排便状況を調査したところ、キウイフルーツは高齢者の排便機能を改善し、健康でリラックス気分を向上させたなどの報告が数件ありました。
 なお、キウイフルーツはアレルギーの原因となることがあるので、この果物を使用した加工食品ではそれを表記することが推奨されているといわれています。
参考:  
1.農林水産省果樹花き課:果物&健康NEWS:Vol.76&225
2.Collins ARら:Carcinogenesis. 2003 Mar.24(3):511-5
3.Collins BHら:Nutr Cancer. 2001:39(1)148-53
4.Duttaroy AKら:Platelets. 2004 Aug;15(5):287-92
5.Kuriyama Sら:Int J Vitam Nutr Res. 2006 Mar;76(2):87-94
6.Chen JDら:J Sports Med Phys Fitness. 1990 Jun;30(2):181-4

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2009/06/03

レタスの話

 レタスはキク科植物で、ヨーロッパの中部からトルコ、コーカサス地方にかけて野生種が分布しています。BC4500年にはエジプトで野菜として利用されていたことが古墳の壁画から知られています。ギリシャ・ローマ時代には盛んに栽培され、ギリシャの哲学者アリストテレスもレタスを賞味したといわれています。6世紀頃には中国に伝播され、「チシャ」と呼ばれました。16世紀のヨーロッパで玉レタスが現れました。現在、レタスは欧米では非常に重要な野菜になっています。日本でレタスと呼ばれている玉レタスは明治以降にアメリカから導入されましたが、本格的に普及したのは洋食化が進んだ第二次大戦以降です。
 レタスの茎葉は乳状の汁液を出し苦味があります。この液体はラクチュコピコリンと呼ばれるポリフェノールの一種で、「軽い鎮静作用、睡眠促進作用」の効果があり、19世紀頃まで乾燥粉末にしたレタスが鎮静剤として利用されていたといわれています。
 レタスの語源はラテン語で「牛乳」を意味し、また、和名のチシャ(チサ)も「乳草(チチクサ)」を意味し、洋の東西を問わず同一語源から由来していることは興味深く感じられます。
 余談になりますが、レタスだけを使ったサラダを「ハネムーンサラダ」というそうです。lettuce alone(レタスだけ)は、let us alone(私たちだけにして)と発音が類似しているからです。
 レタスには次のような種類があります。
1.玉レタス(玉チシャ):わが国における普通のレタスで、結球は堅く完全に包合しています。食味は良好で歯切  れよく、甘味があり水分に富み、アメリカで多く栽培されています。
2.サラダ菜:結球するが、柔らかく頂部は完全には包合しません。主に皿に敷いて色取りや添え物に使われる   ほか、サンドイッチなどにも利用されます。
3.コスレタス(立チシャ):白菜に似て丈の高い球状になります。
4.リーフレタス(葉チシャ):結球しないが葉数は多い。わが国での栽培は少ない。この仲間にはサニーレタスが
  あります。
5.ステムレタス(掻きチシャ、茎チシャ):葉色は淡緑色で生育するにつれ茎は長く伸びる。葉は掻いても食べる  が、主として茎を食べます。茎は煮てアスパラガスのように食べたり、油炒めなどします。わが国ではこの茎を  乾燥した後、水で戻し漬け物に加工した「山クラゲ」が有名です。
 レタスは種類によって栄養価が大きく異なり、サラダ菜は玉レタスよりビタミン類、ミネラルともに多く含まれています。特に、カロテン(2,200μg/100g)は同じサラダ野菜のブロッコリー(770μg/100g)やトマト(540μg/100g)よりも、はるかに豊富です。玉レタスは栄養豊富な野菜ではありませんが、アメリカではサラダやハンバーガーなどへの利用が多いため、栄養分としてレタスの貢献度は高いといわれています。
 レタスはサラダやハンバーガーなどに利用するほか、中華炒め、みそ汁の具、おでんの添え物など加熱処理することもできます。加熱すると苦味が弱まり甘味が増します。
 レタスの機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:2000年、フランスで非喫煙者における食物と肺がんの関係が、肺がん患者506名および対照者1,045名を対象として疫学調査が実施されました。その結果、レタスを頻繁に摂取する人たちは肺がんの発症リスクが40%低いことが分かりました。わが国に在住する喫煙者および過去の喫煙者について、肺がん患者282名、対照者282名を対象として疫学調査が実施されたところ、果物、生野菜、緑黄色野菜、レタス、キャベツの摂取が肺がん予防に効果が認められました。レタスやキャベツを頻繁に摂取する人は肺がんの発症リスクが半減しました。特に、喫煙者の場合、発症リスクは著しく減少しました。また、2004年、わが国で胃がん、乳がん、肺がん、結腸・直腸がんの発症リスクと、がんの家族歴やライフスタイルとの関連を調査するため、胃がん患者1,988名、乳がん患者2,455名、肺がん患者1,398名、結腸・直腸患者1,352名および対照者50,706名を対象として疫学調査が実施されました。その結果、果物、生野菜、にんじん、かぼちゃ、キャベツ、レタスなどを頻繁に摂取しており、運動習慣のある人たちは上記4つのがんに対する発症リスクが減少していました。生野菜の頻繁な摂取および運動習慣は、がんの家族歴の状況にも拘わらず、がんの発症リスクを減少させることが明らかにされました。2000年、アメリカで、α-カロテン、 β-カロテン、リコペン、ルテインなど6種類のカロテノイドと大腸がんの発症リスクを、結腸がん患者1,993名および対照者2,410名を対象として疫学調査が実施されました。その結果、ルテインには大腸がん予防効果が認められ、その他のカロテノイドでは効果は明らかでありませんでした。ルテインが豊富なほうれん草、ブロッコリー、サラダ菜、サニーレタスなどの食品を食事に加えることによって大腸がんの進行リスクを減少させるだろうと報告されました。
心臓血管症予防: 実験動物の餌にレタスを20%添加し、3週間飼育したところ、餌中のコレステロールの吸収が著しく(-37%)低下し、糞中のコレステロ-ル関連物質の排泄が44%増え、さらに総コレステロールに対する悪玉コレステロールの割合が減少し、肝臓のコレステロ-ルレベルも著しく減少(-41%)しました。レタスを習慣的に摂取することは体内におけるコレステロールレベルの低下のほか、ビタミンC、E、カロテンのような抗酸化物も供給されるので、心臓血管症に対して予防的に働くと期待されます。
 なお、レタスは冷蔵庫に保管してもビタミンCは1週間で半減しますので、購入後できるだけ速やかに食べきります。また、鉄に触れると切り口が褐色に変化しますので、包丁を使わず手でちぎるとよいでしょう。
参考:1.清水 茂監修:野菜園芸大事典 養賢堂発行 1985年
    2.Brennan Pら:Cancer Causes control 2000 Jan;11(1):49-58
    3.Gao CMら:Jpn J Cancer Res. 1993 Jun;84(6):594-600
    4Huang XEら:Asian Pac J Cancer Prev. 2004 Oct-Dec;5(4):419-27. 
5.Slattery Mlら:Am J Clin Nutr. 2000 Feb;71(2):575-82
    6.Nicolle Cら:Clin Nutr. 2004 Aug;23(4):605-14

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2009/05/01

メロンの話

 メロンとマクワウリはウリ科キュウリ属の植物です。ウリ科植物には数多くの変種があり、原産地は西アフリカのニジェール川流域と推定されています。わが国には中国を経て伝わったと考えられていますが、西アフリカから東方へ伝わった品種群はウリと呼び、マクワウリや主として奈良漬けなどに使用される「シロウリ」があります。わが国の古墳時代には既にマクワウリ品種やウリ品種が存在していました。
 一方、西アフリカから古代エジプトを経て西方に伝わり、後にヨーロッパで改良されたのがメロンです。
 わが国へは明治時代に西洋系ネットメロンがイギリスやフランスから導入されましたが、メロンは非常に高価で一般庶民には高嶺の花でした。
 昭和30年代後半に、マクワウリとメロンの交雑育種によって新しいメロンが作られ、皇太子(平成天皇)のご成婚に因んで「プリンスメロン」と命名されました。このプリンスメロンは栽培しやすく低価格で味もよいため、メロンが一般家庭へ急速に普及しました。同一起源のマクワウリとメロンが数千年の時を経て東回りと西回りで再会し、交雑してプリンスメロンが誕生したことになります。何か、大変なロマンを感じさせられます。
現在、メロンには次のような品種があります。
ネットメロン(緑肉系)・温室メロン・・・・アールスメロン(マスクメロン)
             ・アンデスメロン、アムスメロン
ネットメロン(赤肉系)・夕張メロン
             ・クインシーメロン
ノーネットメロン    ・プリンス系・・・・プリンスメロン
             ・ホームランメロン
             ・マクワウリ系・・キンショウメロン      
 ガラス温室で栽培されているアールスメロン(マスクメロン)は高級品種であり、ビニルハウス栽培されているアンデスメロン、アムスメロン、夕張メロン、クインシーメロンは外観と肉質がアールスメロンに近い特性を有しています。露地でビニルトンネル栽培されているのはノーネットメロンです。
 メロンは甘くておいしい果物ですが、100g当たりのカロリーは42Kcalと少なく、バナナの1/2以下、ジャムパンの1/7以下、ポテトチップスの1/13以下であり、パセリ程度です。赤肉系のメロンにはカロテンが緑黄色野菜の基準である600μg/100gをはるかに超え、3,600μg/100gも含まれています。カロテンは体内でビタミンAとして作用するほか、種々の疾病の原因となる活性酸素を取り除く抗酸化作用や抗がん作用が明らかにされています。このカロテン含量はビタミンAの一日当たりの推定平均必要量をかなり上回っています。
 また、メロンにはカリウムが可食部100g当たり340~350mg含まれており、生鮮果実の中ではトップクラスです。カリウムは体内の余分な塩分を排除する働きがあり、高血圧や腎臓機能障害の予防に役立ちます。また、温室メロンにはギャバ(γ-アミノ酪酸)が豊富に含まれていることが明らかにされました。ギャバを含む食品には「血圧が高めの方に適する」とされる特定保健食品があります。この点からもメロンの摂取は高血圧の予防によいといえます。メロンの機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:2002年、インドで胆のうがん患者64名、胆石持ち101名を対象に疫学調査が実施されました。その結果、メロンの摂取は胆のうがん予防に効果があると認められました。また、66歳以上のマサチューセッツ住民1,271名を対象に5年間の死亡率を疫学調査したところ、メロンを含む緑黄色野菜・果物の摂取量「多」のグループは、「少」に比べ、がんの死亡リスクが70%低かったと報告されました。さらに、赤肉系メロンに豊富に含まれているβ-カロテンは強い抗酸化力で活性酸素の生成を抑制し、がんを防ぎ、特に口や喉のがん、肺がんなどの予防作用が明らかにされています。
血栓予防:昔からアルゼンチンやドイツなどでは、たまねぎ、にんにく、メロンなどが血液の粘度を下げる食品とされていましたが、メロンには血小板凝集を抑制する作用が強いことが認められました。27種類の果物のうち、血小板凝集を抑制する作用が強いものとして、ホームランメロン、アムスメロン、マスクメロン、プリンスメロンなどが挙げられました。このことからメロンには脳血栓や心筋梗塞などの予防効果が期待できると考えられています。
白内障摘出リスク低下: イタリーで白内障摘出と食物摂取の関係が患者207名および対照者706名を対象として疫学調査された結果、メロン摂取量「多」のグループは、「少」に比べ、白内障摘出リスクが50%低下したと報告されました。
 なお、メロンは追熟すると香りや甘味が増します。冷蔵庫にはすぐ入れずに常温で保管して果皮がやや黄色になり香りが強くなってから食べましょう。また、メロンにはアレルゲンがある可能性があります。口の中がチクチクしたり、違和感があるときは注意が必要です。
 チョット一休み 
その1:アンデスメロンは日本産です。農家が「安心して」作れて、消費者も「安心して」買えるということから、「安    心ですメロン」を略して「アンデス」と名付けられたといわれています。
その2:メロン、いちご、すいかは果物?「くだもの」とは「木になる果実」を指すといわれています。これらは「草に    なる果実」ですから生産段階では野菜に分類されており、流通段階の店頭では果物として扱われていま     す。 
 参考:
①間芋谷 徹・田中敬一:くだもののはたらき、日本園芸農業協同組合連合会、2003         
②津志田藤二郎編:地域農産物の品質・機能性成分総覧p.213 サイエンスフォーラム、2000年     
③中嶋洋子・蒲原聖司監修:最新栄養成分事典p.162 主婦の友社 平成15年      
④Pandey Mら:Eur J Cancer Prev. 2002 Aug; 11(4):365-8
⑤Tavani Aら:Ann Epidemiol. 1996 Jan; 6(1):41-6    
⑥Colditz GAら:Am J Clin Nutr. 1985 Jan;41(1):32-6 

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2009/04/01

アスパラガスの話

 アスパラガスは玉ねぎ、にんにく、にらなどと同じユリ科の雌雄異種の多年生植物です。アスパラガスは、歴史が非常に古く、紀元前からギリシャやローマで栽培され、薬用や食用に供されていたといわれています。日本へは江戸時代にオランダ人によって長崎に伝えられました。当時は繁茂した姿がかすみ草に似ているので、観賞用に栽培され、オランダキジカクシ、オランダウドなどと呼ばれていました。食用としての導入は明治4年とされており、大正になって本格的な加工用栽培がされるようになりました。アスパラガスは長さが25cmくらいに伸びた柔らかい茎を食用とします。盛り土をして日光を当てないように栽培したものをホワイトアスパラガスといい、普通に栽培した緑色のものはグリーンアスパラガスといいます。ホワイトアスパラガスはクリーミーな独特の風味、柔らかい歯ざわりと高級感があり、「野菜の女王」とか、「貴婦人の指先」などと呼ばれますが、栄養的にはグリーンアスパラガスの足元にも及ぶません。ホワイトアスパラガスにはビタミンCおよび食物繊維が含まれていますが、グリーンアスパラガスにはカリウム、カロテン、ビタミンB1、B2、E、葉酸(水溶性ビタミン)、アスパラギン酸のほか、穂先にはルチンが含まれています。特に、カリウム、ビタミンB1、B2、E、葉酸はサラダなどによく使われる野菜(ブロッコリー、トマト、キュウリ、レタス、キャベツ、セロリ、大根、カリフラワー、玉ねぎ)の中ではトップクラスです。しかも、グリーンアスパラガスの葉酸(ゆで180μg/100g)は、ほうれん草(ゆで100μg/100g)、いちご(90μg/100g)よりもかなり多く含まれています。
 グリーンアスパラガスは野菜の中ではタンパク質と糖質が比較的多く、ビタミン類、ミネラル、食物繊維など、さまざまな栄養をバランスよく同時に摂れる緑黄色野菜です。
 アミノ酸の一つであるアスパラギンはアスパラガスから初めて発見されたために命名されました。これは体内でアスパラギン酸に変化し、新陳代謝を促し、スタミナの増強や疲労回復にも効果があるといわれています。ルチンは毛細血管を丈夫にする働きや、弾力性がなくなり破れやすくなった血管を修復する働きがあるため、高血圧や眼底出血を防ぐ作用があります。
 アスパラガスの機能性に関する研究例は余り多くありません。
発がん、認知機能障害などの予防:アスパラガスに豊富に含まれている葉酸を多く摂取すると、すい臓がんの発症リスクが減少することがスエーデンに住む男女81,922人を対象とした疫学調査で明らかになりました。葉酸の摂取量が最も多いグループ(1日当たり350μg以上)は、最も低いグループ(1日当たり200μg以下)と比較すると、すい臓がんの発症リスクが75%も低いことが分かりました。サプリメントから葉酸を摂取しても、すい臓がんの予防効果は認められませんでした。
 また、ホワイトアスパラガスの特徴ともいえる苦味成分であるサポニンは、ある種のがん細胞の増殖に対して抑制作用が認められた、ルチンは初期段階のがんを抑制したなどの報告もありました。葉酸とビタミンB12の組み合わせが肺がん予防に効果があるということも話題になりました。さらに、葉酸が不足すると、特に高齢者では認知機能障害や血管症などが誘発されるので、アメリカでは数多くのインスタント穀類に葉酸が添加されているが、アスパラガスやいちごなど葉酸に富んだ食品を摂取するほうがよいと報告されました。
血圧上昇抑制作用:血圧を上昇させるメカニズムの一つとして、血液中に存在するホルモンの一種アンギオテンシン1がACE(酵素)によってアンギオテンシンⅡに変換されます。このアンギオテンシンⅡは血圧を上昇させる物質です。したがって、このACEの作用を阻害してやればアンギオテンシンⅡができにくくなり、血圧の上昇を抑制することができます。数多くの食物の抽出物について、このACEに対する阻害試験を実施したところ、そば粉、アスパラガス、からしな、いちご、小豆、パイナップルなどに阻害活性が高いことが分かりました。この事実からアスパラガスには血圧上昇抑制作用が期待されます。
便通解消など:アスパラガスやバナナには消化吸収されにくい低カロリーのフラクトオリゴ糖が含まれています。この糖は小腸で消化されずに大腸まで到達し、ビフィズス菌や乳酸菌などの栄養源となり善玉菌を増殖します。アスパラガスには便通解消や腸内環境の改善効果があります。
 なお、アスパラガスは茹でてよし、揚げてよし、焼いてよし、和食や洋食、中華料理のいずれにも広く使用できます。保存する場合には濡れた新聞紙などに包んで乾燥を避けて冷蔵庫に立てて入れます。
参考:1.津志田ら:地域特産物の生理機能・活用便覧 サイエンスフォーラム 2004年                    2.飯野久栄・堀井正治編:医食同源の最新科学 農文協 1999年                       
    3.Larsson SCら:J Natl Cancer Inst. 2006 Mar 15;98(6):407-13                  
    4.Shao Yら:Cancer Lett. 1996 Jun 24;104(1):31-6
    5.Rampersaud GCら:J Am Coll Nutr. 2003 Feb;22(1):1-8 
6.Gibson GR:Br J Nutr 1998 Oct;80(4):S209-12
                  

   

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2009/03/01

グレープフルーツの話

 グレープフルーツは木の高さが5~6mの常緑樹ですが、成長を続けると13~15mほどになります。一本の枝になる果実が、ぶどうの房のように見えることからグレープフルーツと名付けられました。起源は18世紀前半に中米カリブ海のバルバドス島に伝わったブンタンと他のオレンジとの自然交配によって誕生したと考えられています。
 グレープフルーツの学名に「paradisi」という文字が入っていますが、原産地では「楽園(パラダイス)の禁断の実」として珍重されていたといわれています。
 現在、グレープフルーツは世界各地で広く栽培されています。特に、アメリカのフロリダ、カリフォルニア、アリゾナに大産地があります。一年中出回っていますが、4~6月頃が一番おいしい時期です。日本には大正初期にアメリカから渡来しましたが、寒さに弱いため栽培が難しく、国内ではほとんど栽培されていません。
 グレープフルーツは果肉によって、白系と赤系(ピンク、ルビー)がありますが、一般に赤系のほうが甘みが強いようです。グレープフルーツは生で食べたり、ジュースとして飲用されます。また、皮はマーマレードやジャムを作るのにも適しています。
 グレープフルーツにはビタミンCが温州みかんよりやや多く含まれており、2/3個のグレープフルーツはビタミンCの成人一日推奨量をほぼ満たしています。ビタミンCは肌にうるおいを与え、肉体疲労やストレスからの回復、風邪、がん予防に効果があります。また、ビタミンCのほか、カリウムも豊富に含まれているので、心臓の健康にも役立ちます。アメリカではグレープフルーツ製品(果実や果汁など)に、心臓を守る食材であることを示すハートマークを付けて販売しているようです。
 グレープフルーツの苦味成分などには発がん物質の無毒化や排除を促す抗がん作用が認められています。また、赤系のグレープフルーツには、がん発生を抑える強力な抗酸化力のリコペンも含まれています。
 グレープフルーツの果皮の裏側や袋の白くふわふわした部分などに食物繊維のペクチンが多く含まれています。食物繊維のペクチンは血中コレステロール値を低下させ動脈硬化を予防したり、腸の調子を整え便秘を解消します。
 グレープフルーツは他の果物に比べると、100g当たりのカロリーが少ないので、ダイエット中の人や糖尿病の人などのビタミン補給に適切と思われます(註)。また、グレープフルーツダイエットという言葉が一時期流行しました。ダイエット効果のある成分が沢山含まれているとかで、一週間で2~3kg減った人も、しかもリバウンドしないとの触れ込みでした。後述するように、グレープフルーツによるダイエット効果は科学的にある程度認められています。
 グレープフルーツの機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:2000年、ハワイ州で肺がん患者582名、対照者582名を対象とした疫学調査が実施された結果、グレープフルーツを多く摂取する人は肺がんの発症リスクが半減したと報告されました。また、2007年、アメリカで果物および野菜の摂取と食道がんの発症リスクについて、490,802名を対象とした疫学調査が実施された結果、柑橘類を多く摂取する人は食道の扁平上皮がんの発症リスクが半減することが明らかにされました。2005年、オーストラリアで前立腺がん患者130名、対照者274名を対象とした疫学調査では、リコペンの摂取が多いほど前立腺がんの発症リスクが減少し、柑橘類の摂取が前立腺がんの発症リスクを減少させることも分かりました。
これらのほか、実験動物でもグレープフルーツおよび含有する苦味成分であるリモニンが大腸がん;高濃度で含有する成分(ナリンジン、ナリンゲニン)が口腔がんの進展を阻止することが示されました。ただし、乳がんについてはグレープフルーツによって発症リスクを減少させるとか、高める恐れがあると逆の研究結果が報告されました。コレステロール低下作用:1988年、アメリカで高コレステロール血症による冠動脈性心臓病患者27人に対して、グレープフルーツに含まれるペクチンが血液中のコレステロール値にどのように影響するか調べたところ、ペクチンが患者のコレステロール値「総コレステロール、悪玉コレステロールなど」を改善することが認められました。2007年、アメリカで心臓血管症でない女性34,489名を対象として15年間追跡調査した結果、グレープフルーツが冠動脈心臓病による死亡リスクを低下させることが認められました。実験動物を用いた研究でも、グレープフルーツのペクチンの摂取は高コレステロール症の発症を抑制し、動脈硬化の予防に有効であることが明らかにされました。
ダイエット効果:2006年、アメリカでグレープフルーツダイエットが肥満者91名を対象として研究されました。新鮮グレープフルーツ半分あるいはグレープフルーツジュース(237ml)を、毎日3回食前に摂取し12週間継続したところ、体重が1.5~1.6kg減少しました。さらに新鮮グレープフルーツを摂取した場合には、血液中の糖をエネルギーに変えるときに必要なインスリンの効きがよくなると報告されました。
 なお、薬を飲むときに水代わりにグレープフルーツジュースで飲むと、薬の作用が強くで過ぎて事故を起こすことがあります。一般的には服用の10時間前から服用後4時間はグレープフルーツジュースを控えた方がよいといわれています。薬を飲むときには、水や熱くないお湯で飲むほうがよいでしょう。
註)各種果物の可食部100g当たりのカロリー(kcal)
グレープフルーツ:38g、温州みかん:46、ネーブル:46、柿:60、キウイフルーツ:53、さくらんぼ:60、すいか:37、
日本なし:43、夏みかん:40、はっさく:45、バナナ:86、ぶどう:59、りんご:54 (参考:精白米ごはん:168kcal)
参考:①Le Marchand Lら:J Natl Cancer Inst. 2000 Jan 19;92(2):154-60            
    ②Freedman NDら:Int J Cancer. 2007 Dec 15;121(12):2753-60        
    ③Jian Lら:Int J Cancer. 2005 Mar 1;113(6):1010-4        
    ④Cerda JJら:Clin Cardiol. 1988 Sep;11(99):589-94       
    ⑤Mink PJら:Am J Clin Nutr. 2007 Mar;85(3):895-909         
    ⑥Fujioka Kら:J Med Food. 2006 Spring;9(1):49-54
               
     


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2009/02/01

カリフラワーの話

 カリフラワーはブロッコリー、キャベツ、大根などと同じアブラナ科の一年生および二年生植物で、キャベツの変種であるブロッコリーが原種といわれています。カリフラワーは日本には明治初年に導入されましたが、観賞用として「ハナハボタン」といわれてきました。ボタン(牡丹)といえば、昔、美人を「立てば芍薬(シャクヤク)、座れば牡丹(ボタン)、歩く姿は百合(ユリ)の花」と形容したものです。ボタンは華やかな綺麗な花です。カリフラワーは野菜界の第一級の美人といえます。
 カリフラワーは品種の改良、栽培技術の進展、さらに食生活の洋風化に伴って、1965年頃には一般野菜としての仲間入りするようになりました。カリフラワーの可食部は白くこんもりとした花のつぼみと花茎の部分です。つぼみには約3万個の花芽が付いています。
 日本ではカリフラワー栽培が最初に定着し、10年以上も遅れてブロッコリーが定着しましたが、最近ではブロッコリーの生産量が飛躍的に伸び、栄養的に劣るカリフラワーの生産量は激減しています。
 カリフラワーのビタミンC含有量はブロッコリーに比べて少ないが、加熱による損失が少ないため、調理後は同程度(53mg/100g)となります。ビタミンC含有量はサラダなどに使われる他の野菜と比較すると、ブロッコリー(茹で54mg)、キャベツ(41mg)、トマト(15mg)、キュウリ(14mg)、大根(12mg)、セロリ(7mg)、レタス(5mg)であり、カリフラワーにはビタミンCが多いことが分かります。ビタミンCは抵抗力をつけ風邪の予防に有効です。また、シミやソバカスの元になるメラニン色素の生成を抑え肌を美しくしてくれます。
 さらに、カリフラワーには食物繊維が3.2g/100g含まれており、上記のサラダ野菜の中ではブロッコリー(3.7g/100g)に次いで、トップクラスです。食物繊維には食物中のコレステロール吸収抑制による狭心症や心筋梗塞などの予防;血糖値の急激な上昇抑制による糖尿病の予防・軽減;便秘の改善などが期待されます。
 カリフラワーにはブロッコリーに比べるとβ-カロテンやビタミンE、ビタミンkのほか、がん予防が期待される成分の含有量が少ないが、特有の抗がん成分であるMMTSという硫黄化合物が注目されています。
 カリフラワーの機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:2007年、カナダにおいて男性29,361名、このうち前立腺がん患者1,338名を対象に、野菜や果物の摂取とがん発症の関係が疫学調査されました。その結果、アブラナ科野菜、特に、カリフラワーおよびブロッコリーでは前立腺がんの発症リスクが減少していました。具体的には、1月に1サーピング*以下しか摂取しない場合に比べて、1週間に1サービング以上摂取した場合には、カリフラワーでは発症リスクが52%;ブロッコリーでは45%減少したことが明らかにされました。2001年、オランダにおいて55~69歳の男女120,852名を対象に、21種類の野菜および9種類の果物の摂取と尿路上皮がん発症の関係が疫学調査されました。その結果、アブラナ科野菜では発症リスクが25%;たまねぎやにんにくなどユリ科野菜では発症リスクが11%減少しました。特に、カリフラワーや調理後の人参では著しく減少したと報告されました。1996年、オランダにおいてキャベツ、ブロッコリー、カリフラワーなどアブラナ科野菜のがん予防に関係する87の疫学データがまとめられました。その結果、これらのデータのうち、キャベツでは70%の疫学データに、ブロッコリーでは56%、カリフラワーでは67%に、がん予防効果があることが認められました。このことから、アブラナ科野菜を多く摂取すると、肺がん、胃がん、大腸がん、直腸がんなどの発症リスクを減少させると結論づけられました。 
また、1995年、岐阜大学において、カリフラワーから単離されたMMTSという硫黄化合物、および発がん物質を添加した餌で実験動物を飼育し、大腸がんの発症率が試験されました。大腸がんの発症率はMMTS無添加では43%、MMTS20ppm添加では25%、MMTS100ppm添加では発症なしでした。カリフラワーに含まれているMMTSが、がんの発症を抑えることが明らかになりました。
 これらのほか、アブラナ科野菜は胃がんや大腸がんの発症リスクを減らした;アブラナ科野菜は乳がんの発症リスクを著しく減らした;カラフラワーを加えた食餌は肝臓中に存在するある種の解毒酵素の活性を著しく上昇させた。このことは、カリフラワーにがん発症を防止する作用があることを示していると報告されました。
 なお、カリフラワーは、ブロッコリーに比べてビタミンやミネラルなど栄養面で劣りますが、味にクセがないので、茹でてグラタン、シチュー、炒めものなど種々の料理に使用できます。保存するときは冷蔵庫の野菜ボックスに濡れた新聞紙、またはラップに包んでおくと、1週間くらいは保てます。茹でるときには水1リットルに対して塩大さじ1杯を入れた湯で、カリフラワーに布巾をかぶせて茹でるとよいでしょう。このとき、酢またはレモンの輪切り3,4片を入れると黄変を防ぎ、色鮮やかに茹で上がります。
*1サービング:果物では中程度の大きさのもの1個;野菜では葉野菜1カップ(237ml)、その他の野菜では1/2カップ。
参考:
1.Kirsh VAら:J Natl Cancer Inst. 2007 Aug 1;99(15):1200-9
2.Zeegers MPら:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2001 Nov;10(11):1121-8
3.Verhoeven DTら:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 1996 Sep;5(9):733-48
4.Kawamori Tら:Cancer Res. 1995 Sep 15;55(18):4053-8
5.Hara Mら:Nutr. Cancer. 2003;46(2):138-47
6.Fowke JHら:Cancer Res. 2003 Jul 15;63(14):3980-6

 

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2009/01/01

ほうれん草の話 その2

白内障の発症リスク軽減:白内障は水晶体を構成するたんぱく質が黄白色または白色に濁ることによって発症し、45歳以上の中年に多く、年齢を重ねるにつれて増加します。
 1999年、アメリカで45~71歳の女性77,466名を対象とした疫学調査を実施したところ、ほうれん草に豊富に含まれているルテインやゼアキサンチンを多量に摂取している人は、ほとんど摂取していない人に比べて白内障摘出が22%減少することが明らかになりました。また、ほうれん草をしばしば食べる人は白内障の発症リスクを減少させることも分かりました。45~75歳の男性医療従事者36,644名を対象とした疫学調査でも、上記の結果と同様にルテインやゼアキサンチンを多量に摂取している人は白内障の摘出リスクを減らし、カロチノイド類を豊富に含む食品のうちでも、ほうれん草やブロッコリーを多く食べる人は白内障の発症リスクを大きく減らしました。また、アメリカ11州に在住の45~67歳、女性50,828名を対象とした疫学調査でも、ほうれん草の有効性が認められました。β-カロテンが豊富な人参より効果がありました。
老化に伴う神経・認識機能の低下改善:2007年、アメリカで65歳以上の認知症を患っていない965名を対象とした疫学調査を実施したところ、ほうれん草に豊富に含まれている葉酸を多く摂取している人は、ほとんど摂取していない人に比べてアルツハイマー病の発症リスクが半減しました;2005年、イタリアにおける疫学調査でも葉酸の摂取量が低い場合には、認知症やアルツハイマー病の発症リスクが高まったなどが報告されました。
 また、ほうれん草やいちごを添加した餌を実験動物に長期間与えると、ドーパミン(神経細胞間で情報を伝達する物質)の放出が著しく高まりました。ほうれん草を餌に添加した実験動物ではドーパミンの放出が4倍に高まり、いろいろな老化現象が現れるのを遅らせました。ほうれん草のような抗酸化物を含む野菜や果物を多く食べると、中枢神経や認識行動の衰えを遅らせるのに有益であろうと報じられました。さらに、ほうれん草を添加した餌を与えると、実験動物は瞬目(めばたき)反応の遅れを著しく改善した;ほうれん草やいちご、ブルーベリーなどを添加した餌は加齢動物における脳の機能低下を改善させ、運動機能も向上させた;ブルーベリーやほうれん草を添加した餌を実験動物に長期間与えると、加齢動物における神経の機能低下が改善し、脳皮質の梗塞も著しく減少し、また、梗塞後の運動機能も向上したなどが報告されました。
 ほうれん草には上記のような機能性があるほか、ビタミン類やミネラル類が豊富に含まれているため、コレステロールの酸化防止、動脈硬化の予防、風邪の予防や貧血・冷え性の改善、丈夫な骨作り、メラニン色素の生成抑制などの作用があります。
 しかし、ほうれん草にはシュウ酸が多く含まれています。シュウ酸は尿路結石の原因となり、また、カルシウムの吸収も阻害します。シュウ酸を除くために1~2分間茹でると、ビタミンC、カリウム、葉酸などのおよそ半分はお湯の中に溶け出してしまいます。カルシウムを多く含む食品と一緒に食べると、シュウ酸はシュウ酸カルシウムとなり小腸で吸収できず、体外に排泄されます。ほうれん草はかつお節や魚介類、牛乳などと一緒に炒めたり、スープにするとよいでしょう。
参考:
①Longnecker MPら:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 1997 Nov;6(11):887-92   
②Tajima Kら:Gan No Rinsho. 1990 Feb; Spec No:351-64
③Slattery MLら:Am J Clin Nutr. 2000 Feb;71(2):575-82  
④Chasan-Taber Lら:Am J Clin Nutr. 1999 Oct;70(4):509-16  
⑤Brown Lら:Am J Clin Nutr. 1999 Oct;70(4):517-24  
⑥Luchsinger JAら:Arch Neurol. 2007 Jan;64(1):86-92 

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2008/12/02

ほうれん草の話 その1

 漫画アニメの主人公ポパイは、ほうれん草を食べると、たちまち超人的パワーが湧いてきて、大男ブルートをやっつけ恋人を奪い返します。ほうれん草の代わりにニンニクも試みたが、ほうれん草の方が断然効果があったと物語の中で語っているそうです。
 ほうれん草は野菜の王様です。100gのほうれん草はビタミンAの成人一日推奨量をほぼ満たしています。また、がん予防や加齢性黄斑変性のような目の疾患を抑えるカロチノイドの一種ルテインは、にんじんの39倍;夏かぼちゃの8.5倍;冬ほうれん草のビタミンCは60mg(グレープフルーツの1.6倍);貧血予防や成長促進のために必要で、特に妊婦にとって重要な葉酸は210μg(ブロッコリーと同程度);血圧を正常に保ち、不足しやすいカリウムは690mg(バナナの約2倍)含まれています。このほか、日本人に不足がちなビタミン類が豊富に含まれています。
 ほうれん草はアカザ科ホウレンソウ属の植物で、原産地はイランです。今でもイランからアフガニスタンにかけての一帯に野生種が分布しています。ほうれん草は原産地から東方に伝わり、「東洋種」と呼ばれる品種群が作られ、西方に伝わったものはヨーロッパで「西洋種」の品種群が作られました。日本へは17世紀に中国から東洋種が渡来しました。東洋種は根から葉の下部が赤く、葉の切れ込みが多く、また、結石やえぐ味の原因といわれるシュウ酸がやや多く含まれています。一方、西洋種は19世紀になって欧米から導入されました。西洋種は根の赤みが少なく、葉の切れ込みも少ないのが特徴です。現在では純粋な東洋種や西洋種はほとんど栽培されていませんが、夏期には西洋種、冬期には東洋種の性質を残す品種が栽培されています。
 ほうれん草は冬が旬で、夏に比べると甘味は倍増し、ビタミンCは3倍も多く含まれます。
 ほうれん草の機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:ほうれん草には乳がん、大腸がん、前立腺がんなど各種のがんの発症リスクを減らす作用があります。1997年、アメリカで乳がん患者3,543名、対照者9,406名を対象とした疫学調査が実施されたところ、ほうれん草やにんじんを週2回以上食べている人は、食べない人に比べて乳がんの発症リスクが44%減少しました。1990年、愛知がんセンターで乳がん患者175名、頸がん患者56名、対照者231名を対象とした疫学調査が実施されたところ、緑黄色野菜やにんじんをしばしば食べている人は乳がんの発症リスクが半減し、頸がんも70~50%減少しました。
 2000年、アメリカで大腸がん患者1,993名、対照者2,410名を対象とした疫学調査が実施されたところ、ほうれん草に豊富に含まれているルテインの摂取が多いと、大腸がんの発症リスクが17%減少し、特に若者の場合には34%減少したと報告されました。また、緑黄色野菜が少なく、赤肉が多い食事は大腸がんを引き起こしやすいといわれていますが、ほうれん草は食物中の赤肉成分(ヘム)によって引き起こされる細胞障害を予防し、大腸がんの発症リスクを減らすことが分かりました。
 2005年、オーストラリアで前立腺がん患者130名、対照者274名を対象とした疫学調査が実施されたところ、前立腺がんの発症リスクは、ほうれん草に含まれているルテイン、ゼアキサンチン、α-カロテン、β-カロテン;トマトに豊富に含まれているリコペンの摂取が多くなると減少し、ほうれん草、トマト、かぼちゃ、スイカなどを多く食べるほど減少しました。別の疫学調査でもほうれん草を多く食べると、進行性前立腺がんの発症リスクが減少したと報告されました。
 これらのほか、食道がん、胆のうがん、肺がんに関する疫学調査でも、ほうれん草の有効性が認められました。27~40歳の女性23名を調査した結果、ほうれん草、トマト、にんじんなどはリンパ球DNAの損傷を著しく減らし、がん予防効果を発揮することが示されました。また、ほうれん草の抽出液は発がん物質で引き起こされる染色体異常を抑制することも報告されました。
・・・その2に続く・・・

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2008/11/01

ピーマンの話

 「ピーマン頭」というと、頭の中が空っぽということらしい。確かに、ピーマンは子どもの「おもちゃ」のように愛らしく、ふっくらとした外見だが中身は空っぽです。しかし、ピーマンは緑黄色野菜*であり、栄養的にはなかなかのものです。ピーマンはナス科の植物で、なす、トマト、馬鈴薯、トウガラシなどと同じ仲間で、特に、トウガラシとは植物的に近く、辛味のないトウガラシがピーマンと呼ばれています。真っ赤で、肉厚、やや大型のパブリカもピーマンです。スパイスとしてのパブリカは種子を除いた赤い皮を粉末にしたものです。
 トウガラシは中南米の熱帯地方が原産地であり、1493年にコロンブスによってトマトや馬鈴薯などと一緒にスペインに渡来し、ヨーロッパ各地に広まりました。日本へのトウガラシの渡来は①1542年にポルトガル人によって伝えられた、②1590年に朝鮮半島から導入されたなどの説があります。欧米における辛味のないトウガラシは18世紀頃;アメリカにおける甘味大型品種は19世紀に作られました。甘味大型品種が明治以降に日本へ導入されたが、ピーマンは特有な青臭さのため普及しませんでした。その後、ピーマンは品種改良が進み、くせの少ない肉厚の中型品種が作られ、昭和30年代以降に一般家庭に広く普及しました。ピーマンとはフランス語でトウガラシの仲間を指す「ピメント」に由来するといわれています。
 緑ピーマンは完熟すると形がやや大型化し黄色や赤色となり、ビタミンA、C、Eの含量が高まります。完熟赤ピーマンは食味も甘くて美味しくなり、老化抑制効果のある抗酸化活性が緑ピーマンはもちろん赤パブリカと比較しても著しく高まります。
 ピーマンはビタミンCとカロテンに富む野菜です。ビタミンCは緑ピーマンには100g中76mg、赤ピーマンには170mg含まれており、レモン果汁50mgよりも豊富です。ビタミンCは細胞と細胞をつなぐ接着剤のような働きをするコラーゲンの生成を助けます。また、メラニン色素の増加を抑えたり、皮膚の抵抗力を強めるので、美容にも効果があります。免疫力を高め、感染症も防止します。カロテンは緑ピーマンには100g中に400μg、赤ピーマンには1100μgも含まれており、トマト540μgと比べても決して劣りません。さらに、赤ピーマンにはビタミンE も豊富に含まれています。これらのビタミンは強い抗酸化力があり、老化やがんの原因とされる活性酸素を除去します。
 ピーマンの機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:厚生省(当時)は野菜の摂取とがん発症の関係を調べるため、1956年から1982年の27年間、40歳以上の成人255,118人を対象とした追跡調査を実施しました。その結果、老化を遅らせ、がんや心臓病などの発症を少なくするには、緑黄色野菜を毎日食べることが重要であると発表しました。ピーマンには乳がん、胃がんなど各種のがんの発症リスクを減らす作用があります。2004年、アメリカで乳がん患者1,463名、対照者1,500名を対象として、野菜や果物の摂取と乳がんの発症について疫学調査が実施されました。   その結果、更年期以降の女性では赤色・緑色ピーマンを含むブロッコリー、にんじんなどの野菜を多く摂取する人は乳がんの発症リスクが37%低かったと報告されました。2007年、韓国で乳がん患者359名、対照者708名を対象とした疫学調査が実施され、更年期以降の女性では緑ピーマンの摂取が乳がんの発症リスクを40%減少させることが分かりました。また、2003年、中国女性の乳がん患者1,459名、対照者1,556名を対象として、野菜や果物の摂取と乳がんの発症について疫学調査が実施され、緑ピーマンを含むほうれん草、チンゲンサイなどの暗緑色野菜を多く摂取する人は乳がんの発症リスクが35%低かったと明らかにされました。さらに、愛知がんセンターによる閉経前後の女性について実施された疫学調査では、緑黄色野菜や牛乳を多く摂取する人は乳がんの発症リスクが減少したと報告されました。
 また、1990年、アメリカにおける胃がん患者293名を対象とした疫学調査では、胃がんの発症リスクを軽減するには、カロテンの摂取、特に緑ピーマン、トマト、たまねぎなどの生野菜の摂取が重要であると発表されました。
 このほか、赤ピーマンのジュースが大腸がんの発生を抑制した;赤ピーマンから分離した成分には皮膚がんに対する抗がん作用が認められたなどが報告されました。
コレステロール値の改善:赤ピーマンのジュースを、9名の健康な成人男性に2週間継続して飲用してもらったところ、血液中の善玉(HDL)コレステロール濃度が上昇しました。一方、血液中の総コレステロール濃度や中性脂肪には変化が認められませんでした。これらの結果から、赤ピーマンのジュースの飲用は総コレステロール濃度に影響を与えることなく善玉コレステロール濃度を上昇させるので、動脈硬化をはじめとする循環器系疾患の予防に有効であることが示唆されました。
 以上のほか、赤ピーマン粉末を添加した飼料で飼育した実験動物は、加齢に伴う学習・記憶能などの老化現象が抑制されたことも報告されました。
 なお、ピーマンに含まれるカロテノイドであるカプサンチンやビタミンEは加熱しても変化せず水にも溶けないが、ビタミンCは熱に弱く水に溶け出すので、ピーマンは油で軽く炒めて食べるとよいでしょう。
*緑黄色野菜:ほうれん草、にんじん類、トマト類、ピーマン類、ネギ類など68品目の野菜が指定されています。
参考資料:
①Gaudet MMら:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2004 Sep;13(9):1485-94    
②Do MHら:Int J Vitam Nutr Res. 2007 Mar;77(2):130-41
③Malin ASら:Int J Cancer. 2003 Jun 20;105(3):413-8
④Hirose Kら:Int J Cancer. 2003 Nov 1;107(2):276-82
⑤Graham Sら:Nutr Cancer. 1990;13(1-2):19-34
⑥Narisawa Tら:Proc Soc Exp Biol Med. 2000 Jun; 224(2):116-22
 

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2008/10/02

セロリーの話

 セロリーはセリ科の植物で、原産地はヨーロッパから中近東の広範囲で涼しい高地の湿原地帯といわれています。セロリーが人類に利用されたのは非常に古く、既に、紀元前490~480年頃の貨幣にはセロリーの葉が刻み込まれています。当時、セロリーは主として薬用や香料として使われていたようです。日本への渡来は戦国期の朝鮮征伐(1592)の際、加藤清正が持ち帰ったといわれています。しかし、セロリーは独特の強い香りがするために普及しませんでした。戦後、食生活が洋風化してから本格的に栽培されるようになりました。
効能:古代ギリシャの医者は万能薬(胃薬、催眠薬、利尿剤、解熱剤など)として、セロリーを使用していたといわれています。現在、セロリーは漢方書では健胃、神経の興奮、頭痛、利尿、排尿困難、血圧降下、婦人の月経不順・出血多量に効能がある;ある啓蒙書では強壮、消化促進、食欲増進、疲労回復、不眠、解毒に効果がある;別の啓蒙書では強壮・強精、貧血、肝臓病、血栓症の予防・改善、生理不順・更年期障害、糖尿病に効果があると記されています。
 このように、セロリーの効能は非常に広範囲に及んでいます。
含有成分:セロリーには次のような成分が含まれています。
・「アピイン」は香りの成分であり、神経系統に作用しイライラや頭痛を鎮めたり、高血圧や不整脈を抑える作用があります。
・「ルテオリン」は花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギ症状を改善したり、肝臓の解毒作用を促進するとされています。これらの成分はポリフェノールの一種であり、動脈硬化や心臓病、がんや老化の原因となる活性酸素を除去する作用もあります。
・「ピラジン」は血液をサラサラにし、脳梗塞や心筋梗塞を予防・改善する作用があります。
・「ブチルフタリド」はホルモンを調整し血圧を安定させたり、イライラや興奮を鎮めてリラックスさせる効果のほか、利尿作用もあります。
・「ビタミンU」はキャベジンと呼ばれている物質です。胃酸の分泌を抑制し、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療や予防に用いられます。
・「カリウム」はバナナよりも多く410mg/100gも含まれています。カリウム摂取量の増加によって、血圧値の低下、脳卒中の予防、骨密度の増加などが動物実験のみならず、疫学調査によっても示されています。
 セロリーの効能に関係する研究例は見つけることができませんでした。セロリーの効能は長い年月を経た経験から認められるようになったと考えられますが、含有成分の作用からも理解できそうです。
 抗がん作用が認められた研究例を次に記します。
抗がん作用:1990年、ニューヨークで胃がん患者293名および対照者について疫学調査が実施された結果、食塩や脂肪の摂取で胃がんの発症リスクが高まるが、セロリーやキュウリ、トマトなどの生野菜の摂取で発症リスクが低下したことが分かりました。1991年、大腸がん患者336名および対照者336名について疫学調査が実施されたところ、野菜、特に緑色野菜であるチャイブやセロリーには大腸がんの予防効果が著しく認められました。2000年、大腸がん患者1,993名および対照者2,410名について疫学調査が実施されたところ、カロチノイドの一種であるルテインを多く摂取している人は、ほとんど摂取しない人に比べ、大腸がんの発症リスクが20%程度、若者では34%低いことが明らかになりました。
 ルテインはほうれん草、ブロッコリー、・・・セロリーなどに含まれており、これらを食事に加えることによって大腸がんの進行を遅らせることができると報告されました。
 また、セロリーやピーマン、エゴマ葉に含まれている上記のルテオリンは腫瘍の発生を阻害し、大腸がんの細胞を自然死させることも分かりました。2007年、肺がん患者218名および対照者436名について疫学調査が実施されたところ、セロリーを多く摂取している人は、ほとんど摂取しない人に比べて、肺がんの発症リスクが60%低いと報告されました。
調 理:セロリーは独特の香りと、さわやかな歯ごたえのため、生のまま食塩を振って食べたり、サラダの材料とするとよいでしょう。葉は茎よりも栄養価が高いので、炒めものや天ぷらにするとよいでしょう。また、葉や茎はスープやシチューなど肉料理の香味野菜としても使用できます。
参考資料:
①葉 橘泉編著:医食同源の処方箋 1997年4月 (株)中国漢方発行  
②Graham Sら:Nutr Cancer. 1990;13(1-2):19-34
③Hu JFら:Int Epidemiol 1991 Jun; 20(2):362-7
④Slattery MLら:Am J Clin Nutr. 2000 Feb; 71(2):575-82
⑤Geleone Cら:Ann Oncol 2007 Feb; 18(2):388-92
⑥Lim do Yら:Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2007 Jan;292(1):G66-75

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2008/09/05

日本ナシの話

 日本ナシは中国中部や朝鮮半島南部、日本中部以南に原生していたヤマナシが改良されたものと考えられています。ナシは弥生時代の遺跡から種子が出土しており、日本で初めて栽培された果実といわれるほど古い歴史があります。二十世紀は明治21年(1888年)に千葉県松戸市で偶然に見出され、その後、鳥取県に導入され、現在、鳥取県の特産品となっています。ナシの機能性について次に記します。
ダイエット効果:
 ナシには水分が約90%含まれており、重量当たりのカロリーはご飯(精白米)の約1/4です。ボリュームが大きいので、ナシを食べると空腹感が和らぎダイエット効果が得られます。児童5,559人および成人9,117人を対象とした調査では、果物を多く食べる人には肥満者が少なく、果物の摂取がダイエットに効果あることが分かりました。
痔・便秘改善:
 ナシにはソルビトールや食物繊維が多く含まれています。ソルビトールは果物の中で特にナシに多く、低カロリーで、むし歯になりにくい糖質として知られています。また、ソルビトールは吸水作用があり便を軟らかくし、腸の動きを活発にします。
 食物繊維はカロリー当たりで比較すると、サツマイモよりも多く含まれています。不溶性食物繊維も水分を保持する力が強く便のボリュームを増やすので、ナシは痔や便秘の改善に役立ちます。
糖尿病・心臓病・脳卒中の予防:
 水溶性食物繊維は胃の中で粘度の高い状態になり、一緒に食べた他の食べものと混ざり合い、ゼリー状になって小腸までゆっくり進みます。そのため栄養分の吸収速度が遅くなり、血糖値の急激な上昇が抑えられ、それを抑えるインスリンを膵臓は多量に分泌する必要がなくなります。水溶性食物繊維の多い、ナシは糖尿病の予防や軽減に有効です。
 また、水溶性食物繊維には血液中のコレステロール濃度を低下させ、動脈硬化や脂肪肝、心筋梗塞、脳梗塞などを予防する効果もあります。心臓病と食物繊維の関係について、男性91,058人および女性245,186人を対象として6~10年間調査した結果、食物繊維を1日10g多く摂取すると、心臓病の発症率が14%、死亡率が27%低いと報告されました。ナシは心臓病の予防に有効です。また、食事内容と脳卒中の関係について、43,738人の男性を対象として調査した結果、カリウムを多く摂取している人は、脳卒中になるリスクが38%低いと報告されました。ナシは、カリウムが1個当たり約280mgと多いので、脳卒中の予防に有効です。
高血圧予防:
 約27%の高血圧患者を含む459人の成人を対象として試験した結果、果物と野菜を多く食べ、コレステロールなどを減らす食事をした人は、試験開始後、2週間以内に血圧が劇的に下がったと報告されました。ナシに多い水溶性食物繊維は血液中のコレステロール濃度を低下させ、カリウムは血圧を下げる作用をするので、ナシは高血圧の予防にも有効です。
 これらのほか、オランダで25年間、793人の成人を対象として調査した結果、ナシやリンゴを多く食べる人は、ぜん息や気管支炎などの慢性的な呼吸器系疾患の発症リスクが37%低いと報告されました。さらに、ナシには風邪の熱さまし、咳や痰を除く、二日酔いに効くなどいろいろな効果があるといわれています。ナシの果肉を煮詰めた「ナシ飴」は喉を滑らかにすることも知られています。
 なお、ナシは食べ過ぎると体を冷やすことがあります。胃腸が弱く下痢しやすい人、妊娠中、産後、体が冷えやすい人は食べ過ぎないように注意しましょう。
参考:
1.果実日本 2006 vol.61(6)号 p.30   
2.農林水産省果樹花き課:果物&健康NEWS vol.22;110;116
3.Am J Epidemiol 1993;138:37-45
4.Nature vol.284(p.283) 20 MARCH 1980など

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2008/08/20

大麦の話 その2

心臓病予防:1987年、アメリカで50~79歳の男女859名を対象に、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心臓病による死亡リスクと食物繊維の関係について12年間疫学調査が実施されました。その結果、1日に食物繊維16g以上を摂取すると、それ以下に比べて心臓病による死亡リスクは約60%低下し、また、毎日の食事に食物繊維6gを追加摂取すると、心臓病による死亡リスクは25%低下した。別に、食物繊維を多く摂取すると、虚血性心臓病による死亡リスクが低下することも示された。2004年、アメリカで心臓病疾患の発症と食物繊維の関係について10の疫学研究が纏められました。それによると、1日に10gの食物繊維を追加摂取すると、心臓病の発症リスクは14%低下し、心臓病による死亡リスクは27%低下した。別に、穀物や果物からの食物繊維を摂取すると心臓病の発症リスクが低下することも報告されました。
 このほか、大麦茶を飲むと、血液がサラサラになる;大麦には食物繊維のほか、カリウムが多く含まれているので血圧降下作用があるなどが報告されました。
 現在、大麦は心臓病の多いアメリカで心臓病を予防する食品として認められています。
便秘解消:大麦の水溶性食物繊維は善玉の腸内細菌を増やし腸内環境を改善します。一方、不溶性食物繊維は糞便量を増やすので、大麦は便秘解消に役立ちます。
がん予防:大麦は、「植物性食品によるがん予防」を研究目的とした「デイザイナーフーズ・プログラム」 の成果として、がん予防の可能性がある食品としてリストアップされました。また、大麦に含まれているルナシンはがん予防物質として知られており、β-グルカンは免疫力を高めてがん細胞の増殖を抑えます。しかし、大麦の抗がん作用に関係した疫学調査の研究論文は見当たりませんでした。
 高コレステロール症は動脈硬化の遠因であり、さらに進めば脳梗塞や心筋梗塞になる恐れが生じます。また、平成9年の実態調査によると、「糖尿病が強く疑われる人」と「糖尿病の可能性を否定できない人」の数は全国に1,370万人で、全国民10人にほぼ1人と推定されています。これらの生活習慣病に対して大麦を食べることは大変有効であると考えられます。2005年版の「日本人の食事摂取基準」によると、食物繊維の摂取目標量は年齢、性別によって1日17~20gであり、現在の摂取量は11~16gです。私たちは1日約5gの食物繊維が不足しています。これは、1日1人当たり大麦50g(約100ml)にほぼ相当します。毎日、この量の大麦を米に混ぜた「麦ごはん」を食べれば、食物繊維の不足を補うことができます。

 現在、がん以上に厄介な病気は脳梗塞や心筋梗塞のような脳心血管病です。「寝たきり病人」の多くはこの病気が原因であるといわれています。
 健康維持のため、老いも若きも「麦ごはん」を食べましょう!
参考:①Ikegami Sら:Plant Foods Hum Nutr. 1996 Jun;49(4):317-28   
    ②keenan JMら:Br J Nutr. 2007 Jun;97(6):1162-8 Epub 2007 Apr 20
    ③Montonen Jら:Am J Clin Nutr. 2003 Mar;77(3):622-9
    ④Hinata Mら:Diabetes Res Clin Pract 2007 Aug; 77(2):327-32 Epub 2007 Jan 8
    ⑤Khaw KTら:Am J Epidemiol 1987 Dec; 126(6):1093-102
    ⑥Pereira MAら:Arch Intern Med 2004 Feb 23;164(4):370-6 など。

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2008/08/01

大麦の話 その1

 大麦はイネ科オオムギ属の植物で、イネ、小麦、トウモロコシに次ぐ世界第四の穀物です。大麦の野生種はトルコからイランにかけての山岳地帯に分布し、約1万年前には栽培されていたと考えられています。日本では縄文時代中期の複数の遺跡から炭化した大麦が発見されており、弥生時代には栽培されていたといわれていま
す。
 日本では麦といえば主に大麦のことを意味しています。大麦は水稲の裏作として栽培され、麦飯は白米を十分に食べられない農民の食生活を支えてきました。大麦には日本人が最も不足している食物繊維が豊富で、押し麦100g当たり9.6gも含まれています。この含有量は精白米の約20倍、玄米の3倍以上です。昔、スリムに憧れる若い女性に食物繊維の多い「ごぼう」が大人気でした。栽培農家に「ごぼう御殿」が新築されたほどでした。
大麦には食物繊維が、この「ごぼう」の1.6倍も含まれています。しかも、大麦の食物繊維は水溶性および不溶性食物繊維のバランスがよく、また、食物繊維は外皮のみならず、胚乳部分にも含まれています。これらは後述するように大麦の機能性を一層高めています。このほか、日本人が不足しているカリウムも豊富に含まれています。大麦の機能性について次に記します。
コレステロール低下作用:大麦の水溶性食物繊維は食物中のコレステロールが体内に吸収されるのを抑制し、また、大麦中に多く含まれているトコトリエノールは肝臓内でコレステロールの合成を抑制します。さらに、食べ物が十二指腸には入ると、胆汁が胆のうから出て食べものと混ざり、脂肪やコレステロールの消化吸収を助けます。その後、胆汁酸は小腸下部の腸壁から吸収され肝臓に戻ります。しかし、大麦中の水溶性食物繊維は胆汁酸を吸着して便として排出し、胆汁酸の腸壁吸収を妨げます。胆汁酸は肝臓内でコレステロールを原料として作られるので、結果として水溶性食物繊維はコレステロールを減らすことになります。
 このようにして、大麦は体内のコレステロールを減少させます。
 1996年、高コレステロール症患者および健常者に麦・米飯(1:1)を1日、2回摂食させたところ、高コレステロール症患者では2週間で総コレステロールおよびLDL(悪玉)コレステロールが著しく低下した。健常者では4週間継続しても血液中のコレステロールは変化しなかった。この事実は、治療薬では血液中のコレステロールを必要以上に低下させる可能性があるが、麦・米飯ではそのようなことがないことを示しています。
 1997年、アメリカのミネソタ大学の研究によると、食物繊維を増やすと、血液中の総コレステロールおよびLDL(悪玉)コレステロールが低下すると報告された。また、2007年、155名を対象に大麦中の食物繊維の一部であるβ-グルカンを含む食品を1日2回、6週間継続して摂取させたところ、軽度高コレステロール症患者では総コレステロールおよびLDL(悪玉)コレステロールが著しく低下した。HDL(善玉)コレステロールは変化しなかった。
 このほか、境界域および軽度高コレステロール血症の男女にβ-グルカン2gを1日1回、12週間摂取させたところ、血液中の総コレステロールが低下した;β-グルカンはコレステロールを低下させた;大麦や小麦などの水溶性食物繊維は肝臓におけるコレステロールの蓄積を抑制したなどが報告されています。
糖尿病予防:糖尿病患者に大麦、精白米、ブドウ糖を摂取させたところ、大麦では血糖値が精白米やブドウ糖に比べて著しく低下した。このことは、大麦中の食物繊維が胚乳のデンプンと強く結びついて、デンプンの消化がゆっくりと行われ、血糖値が上がりにくくなるからと考えられています。
 2003年、フィンランドで年齢40~69歳の男性2,286名および女性2,030名を対象に、穀物繊維の摂取とⅡ型糖尿病の発生について疫学調査が10年間行われた。その結果、穀物繊維の摂取がⅡ型糖尿病の発生リスクを減らすことが分かった。穀物繊維を最も多く摂取している人たちは、少ない人たちに比べⅡ型糖尿病の発生リスクが約60%低下した。日本の多くの囚人は1週間に5日間、1日8時間働き、大麦入り米飯を食べています。福島県における囚人の健康記録7年分、4,385件を調査したところ、Ⅱ型糖尿病患者が109名いました。しかし、収監中に全患者の血糖値やヘモグロビンA1cのレベルはそれぞれ激減し、さらにインシュリン治療者や経口糖尿病薬治療者の多くは治療をやめれる状態になった。このように、良好なライフスタイルや食物繊維の長期間摂取がⅡ型糖尿病患者によい影響を与えることが証明されました。
 その2に続く

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2008/07/01

サクランボ(おうとう)の話

 サクランボはバラ科サクラ属サクラ亜科に属し、サクランボには果実が甘い甘果サクランボと酸っぱい酸果サクランボ、中国サクランボなどがあります。甘果サクランボはイラン北部、コーカサス南部、イタリア、スペインなど、酸果サクランボはイラン北部から黒海沿岸地方、中国サクランボは中国で生まれました。わが国における栽培品種は生食用の甘果サクランボで、明治初期にアメリカやフランスから導入されました。海外では酸果サクランボの栽培も盛んで、リキュールやジャムなどに加工されています。
 サクランボにはブルーベリーで有名になったアントシアニンが豊富に含まれています。サクランボのアントシアニンの抗酸化力はビタミンEよりも優れており、視力低下や眼精疲労などの予防、毛細血管の保護、動脈硬化や心筋梗塞、脳血管障害の予防などに効果があります。また、サクランボにはD-グルカレイトが多く含まれています。
この物質は強力な解毒作用で発がん物質を取り除き、がんを予防するほか、血中のコレステロールも減らします。さらに、便通をよくするソルビトール、胎児の成長に不可欠な葉酸も多く含まれています。
 次に、サクランボの機能性に関した研究例などを記します。
痛風予防効果:カリフォルニア大学の研究グループはサクランボの摂取が痛風予防になると報告しました。痛風は血液中の尿酸濃度が高くなり、足の親指の付け根に激しい痛みが生じる病気です。痛風は腎臓や尿管に結石を作ったり、腎臓の機能障害を起こします。合併症として高血圧、動脈硬化、心臓病などを起こしやすい病気です。22~40歳の健康女性10名にサクランボ280gを食べてもらい、血液および尿中の尿酸濃度や炎症指数(炎症性疾患があるときに著しく増える血漿たんぱく質や一酸化窒素など)を測定しました。その結果、摂取5時間後、血液中の尿酸濃度は減少し、尿中に排泄される尿酸濃度は増加しました。また、3時間後には血液中の炎症指数は著しく低下しました。このように、サクランボの摂取は血液中の尿酸濃度を減少し抗通風効果が認められました。炎症指数の低下は関節リウマチや炎症性腸疾患など炎症性疾患の予防・治療に効果が期待されます。また、健康な男女18名にサクランボ280gを28日間食べてもらったところ、炎症指数は著しく減少したと同様な報告もありました。
神経細胞保護効果:アントシアニンは上述のように視力低下や眼精疲労などを予防するほか、細胞を傷つけるような酸化ストレスから神経細胞を守ります。サクランボはアントシアニンを30.2~76.6mgと豊富に含んでおり、植物機能成分の優れた供給源であることが分かりました。
メラトニン供給源:抗酸化物質メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンです。メラトニンは血液中の濃度が昼に低く夜に高くなるように明暗サイクルと関係しており、睡眠・覚醒のサイクルをコントロールするホルモンで、俗に「眠りを助ける」、「若返り効果がある」といわれています。植物にも極微量であれば見出されると考えられていました。しかし、近年、サクランボには哺乳動物の血液中濃度に比べて高濃度のメラトニンが含まれていることが見出されました。このメラトニン含有量はサクランボの収穫時期や収穫場所によって影響されませんでした。サクランボはメラトニンの重要な供給源であることが分かりました。
便秘改善効果:サクランボには難消化性のソルビトールが、果実200g中に4.6gと豊富に含まれています。このソルビトールには便のPHを下げる働きと、便の量を増す効果が認められています。便秘の人にソルビトールを投与した試験では、1日20gの摂取で便秘が解消されました。便秘になると有害物の濃度が高まり肌荒れ、吹き出物、肩こりなどに悩まされます。サクランボは便秘がちの人に適した果物といえます。
 以上のほか、サクランボは激しい運動による体力消耗や筋肉痛などを著しく軽減させることも報告されています。
参考:
①農林水産省果樹花き課:果物&健康NEWS:VOL.11、12、104、106、107、109
②Jacob RAら:J Nutr. 2003 Jun;133(6):1826-9
③kelley DSら:J Nutr. 2006 Apr.136(4):981-6
④kim DOら:J Agric Food Chem 2005 Dec 28;53(26):9921-7
⑤Burkhardt Sら:J Agric Food Chem. 2001 Oct;49(10):4898-902
⑥Connolly DAら:Br J Sports Med. 2006 Aug;40(8):679-83; discussion 683

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2008/06/01

ショウガの話

 ショウガはショウガ科ショウガ属の植物で、原産地はインドと考えられています。熱帯アジアから東アジアの温帯域で栽培され、古くから香辛料や薬用として重要な作物でした。漢方では「ショウガは百邪を防御する」といわれるほど、ショウガは生薬として健胃、嘔吐、むかつき、冷え性、腹痛、解毒などに効果が期待され利用されてきました。
 日本には3世紀頃中国から渡来し、平安時代には既に栽培されていた記録があります。ショウガは収穫方法によって、根ショウガ、葉ショウガ、軟化ショウガに分けられます。根ショウガは根を食べるもの;葉ショウガは根が小指大で葉の付いたもの;軟化ショウガは太陽にあてずに栽培され、茎葉が15センチくらいに伸びたときに光にあてて茎に赤みを付けたもので、刺身のツマや漬け物などに利用されます。
 ショウガの辛味成分(ショウガオール、ジンゲロン;総称名:ジンゲロール)には魚の生臭さを消したり、肉や魚など食物の毒を消したり、新陳代謝を活発にして発汗作用を高める働きがあります。寿司につきものの「がり」は魚の臭みをとり、食あたりを防ぐ役目を果たしています。また、辛味成分には強力な鎮痛作用があり、炎症や痛みをすばやく鎮めたり、DNAの損傷を防いでがんを予防します。ショウガの香気成分(シネオール、ジンギベロール、ジンギベレンなどの精油成分)は疲労回復や夏バテ解消に役立つといわれています。
 また、ショウガにはたんぱく質を強力に分解する酵素(ジンジベイン)が含まれているので、肉をショウガ漬けにしておくと肉が軟らかくなります。また、この酵素は肉や魚の消化吸収を助け、消化不良や胃のもたれを防ぎます。ショウガに関係する研究例を次に記します。
体温上昇:ショウガ粉末0.5g(生ショウガ5.9g相当)を水150gに懸濁させた試料およびショウガ粉末を添加したパンを用いてヒトを対象に試験が実施されました。その結果、ショウガ水の飲用後は額の体表温のみが上昇したのに対して、ショウガ添加パンの摂取後は額と手首の体表温が上昇しました。ショウガはパンへ添加することにより温熱効果がより顕著になりました。また、実験動物にショウガ粉末2%の餌を食べさせたところ、酸素の消費量が増加することが確認されました。ショウガと唐辛子の辛味成分は非常に類似した作用が認められています。
つわり症状の軽減:妊娠16週間以内で、吐き気や嘔吐に苦しめられている妊婦126名を、ショウガ650mgを投与するグループと、つわり軽減に有効なビタミンB6(25mg)を投与するグループに分け、1日3回、4日間投与したところ、ショウガとビタミンB6共に、つわり症状を著しく軽減しました。しかも、ショウガはビタミンB6よりも有効でした。また、妊娠16週以内の妊婦291名についても同様な試験が実施され、妊娠初期に投与されたショウガはビタミンB6と同等に有効でした。また、妊婦675名の試験でも、ショウガの有効性が認められました。ショウガによるつわり軽減の際の安全性も試験されたが、ショウガ投与群と対照群の間には差はほとんど認められませんでした。
抗がん作用:ショウガはデイザイナーフーズ・プログラム(本シリーズ「体に効く野菜・くだもの」参照)で、がん予防効果が認められた食品です。ショウガの辛味成分であるジンゲロールはヒト乳がん細胞の運動性などを低下させ、がん細胞の転移を阻害することが分かりました。また、ジンゲロールは血管の形成を阻害し腫瘍の増殖を抑制するため、腫瘍治療に有用であることも報じられました。さらに、ショウガは卵巣がん細胞を成長させる血管形成を阻害し、がん細胞の成長を抑制することが認められました。ショウガオールは大腸がん細胞の成長を抑制し、がん細胞を自然死させることも分かりました。
血小板凝集阻止 血液サラサラ:健康な男性20名の食事に100gのバターを7日間継続して添加したところ、血小板凝集が高まりました。しかし、ショウガ粉末5gを追加添加したところ、血小板の凝集を阻止することができました。また、冠動脈疾患患者にショウガ粉末10gを3月間投与したところ、血小板凝集が著しく低下しました。また、高血圧患者と健常者を対象に、ショウガと血液拡張剤(ニフェジピン)の相乗作用を試験したところ、これらは血小板凝集を相乗的に抑制することが示されました。従って、これらの投与は血小板凝集に原因する心臓血管・脳血管の合併症に有効であることが分かりました。
 以上のほか、シヨウガには胃部の損傷を阻止する抗潰瘍効果;胃・十二指腸の動きを活発にする効果などがあると報告されています。
 なお、ショウガの成分は胃の粘膜を刺激し、腹痛の時には下痢を起こします。一時に大量に使用することは避けてください。
参考:
1.藤澤史子ら:日本栄養・食糧学会誌 第58巻 第1号3-9(2005)
2.Chittumma Pら:J Med Assoc Thai. 2007 Jan; 90(1):15-20
3.Smith Cら:Obstet Gynecol 2004 Apr; 103(4)639-45
4.Lee HSら:J Nutr Biochem. 2007 Jul 31
5.Verma SKら:Indian J Med Res 1993 Oct; 98:240-2 
6.Young HYら:Am J Chin Med. 2006;34(4):545-51

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2008/05/01

イチゴの話

 栽培イチゴは、アメリカ大陸に自生している二つの野生種が1700年代にヨーロッパで交雑され、その中から誕生したといわれています。日本へは1800年代に長崎に初めて導入されましたが、本格的な導入は明治時代に入ってからです。また、イチゴが全国的に栽培されるようになったのは1920年代、特に昭和時代に入ってからです。
 イチゴはビタミンCの女王ともいわれ、成人が1日に必要とするビタミンCは果実約150gから摂取できます。
 また、イチゴにはビタミンCのほか、ポリフェノール類(エラグ酸、アントシアニン類、カテキン、ケルセチンなど)のような強い抗酸化成分が含まれれています。これらの成分は活性酸素を捕捉・消去することができるため、イチゴは活性酸素による酸化ストレスが引き起こす様々な生活習慣病(がん、循環器系疾患、糖尿病など)の予防に役立つといわれています。
 次に、イチゴの機能性について主な研究例を記します。
発がん予防:イチゴはがん予防に関係する栄養素が豊富に含まれており、栄養学者の間では「スーパーフード」と呼ばれています。イチゴの発がん予防メカニズムとしては、イチゴ果汁を添加した食事が体内における発がん物質の生成を抑えたり、肝がん細胞を細胞死(アポトーシス)させ、がん細胞の生存率を低下させるなどが報告されています。また、野菜や果物の摂取量と結腸がん・腺腫の関係を疫学調査したところ、女性ではイチゴや柿を多く摂取している人は腺種の発生リスクが43%に低下したという結果が得られました。
 また、ヨーロッパ10カ国が共同研究した結果によると、血液中のビタミンCが最も高い人たちは、最も低い人たちに比べて胃がんのリスクが45%も低く、赤肉や加工肉の摂取量が多い人ほどこの効果が顕著であったと報告されています。
 このほか、冷凍乾燥したイチゴは食道がん細胞の増殖を阻止するとか、イチゴ抽出物は大腸がん細胞や乳がん細胞、子宮頸がん細胞、肝臓がん細胞の増殖を阻止するなどが報告されています。また、イチゴ抽出物は肺上皮がん細胞の増殖を阻止するが、この作用はイチゴの抗酸化力や酸化ストレスを減少させる力によると考えられています。
 イチゴには葉酸が200g当たり180μg含まれています。葉酸を1日当たり200~249μg摂取している人たちは、
200μg以下に比べて、すい臓がん発症のリスクが半減するといわれています。スエーデンに住む81,922人を対象とした8年間の研究結果によると、葉酸を1日当たり350μg以上摂取している人たちは、200μg以下に比べ、すい臓がん発症のリスクが75%も低かったと報告されています。
循環器系疾患予防:イチゴにはポリフェノールが豊富に含まれています。これらの抗酸化作用が、悪玉コレステロールの酸化を阻止し動脈硬化予防に効果を発揮したり、血小板の凝縮を著しく阻害し血栓阻止などによって心臓血管症や脳卒中のリスクを軽減することが期待されます。
老化に伴う疾患予防:酸化ストレスに弱いほど老化が進み、アルツハイマー病や痴呆のような加齢に伴う神経系疾患が起こりやすいことから、抗酸化力の強いイチゴやほうれん草の抽出物について長期的な影響が試験された結果、これらの抽出物は認知や運動・行動などの加齢に伴う神経系疾患の発症を抑え、回復させることが数件の論文で報告されました。さらに、これらの抽出物に含まれるポリフェノール類が疾患予防に有効に作用していることも分かりました。
 その他、イチゴのようなベリー類は胃潰瘍や胃がんの原因になるといわれているH.ピロリ菌の増殖を著しく阻止し、同時にピロリ菌の抗生物質に対する感受性も高めることが報告されています。
参考:
1.農林水産省果樹花き課:果物&健康 News Vol.107&151
2.東 敬子:野菜・果物の健康維持機能に関する研究動向
        主な果物の生理機能イチゴ(ネット)   
3.Hannum SM:Crit Rev Food Sci Nutr 2004;44(1):1
4.Meyers KJ ら:J Agric Food Chem, 2003 Nov 5;51(23):6887
5.Helser MA ら:Carcinogenesis 1992 Dec; 13(12):2277
6.Joseph JA ら:J Neurosci 1998 Oct 1:18(19):8047など

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2008/04/02

バナナの話

 バナナはバショウ科バショウ属の多年生草本です。バナナは1万年も前から栽培され、人類が最も古くから利用していた果物といわれ、この分布域は広く西アフリカから太平洋の熱帯・亜熱帯地域にわたっています。沖縄では1500年代にバナナの栽培が始まったといわれています。現在、日本で食べられているバナナの約8割がフィリッピン産であり、次いで、エクアドル産、台湾産となっています。
 バナナはカロリーが高そうにみえますが、バナナは100グラム(ほぼ1本分)当たり86Kcalであり、ご飯(168Kcal)の約1/2、食パン(264Kcal)の約1/3と低カロリーです。しかも、バナナの糖質はブドウ糖、果糖、しょ糖、でん粉などであり、これらは体内に吸収される速度が異なるため、エネルギーの補給が長時間続きます。朝食抜きでも、バナナを食べれば長時間、脳が活性化され仕事や勉強に集中することができます。
 また、バナナは腹にたまらず、腹持ちがよく、手軽に栄養補給できる果物としてスポーツ選手に重宝されています。バナナの機能性について次に記します。
抗がん作用:1995年、大腸がん患者279名および対象者279名について疫学調査が実施されたところ、ベーコンやバターは大腸がんの発症リスクを高めるが、バナナやパパイアは発症リスクをそれぞれ46%、42%低下させました。ウルグアイで実施された疫学調査でも大腸がんの発症リスクは野菜や果物の摂取で低下し、特にバナナの摂取は発症リスクを著しく低下させることが分かりました。また、2005年には韓国でも野菜や果物の摂取と大腸がんの発症リスクが疫学調査され、バナナ、梨、スイカを多く食べる者は大腸がんの発症リスクが約60%低下しました。これらのほか、スエーデン女性61,000名を対象とした疫学調査の結果、野菜や果物の摂取は腎臓がんの発症リスクを低下させるが、果物の中では特にバナナの摂取が腎臓がんの発症リスクを低下させることが認められました。
脳卒中予防:バナナはカリウムを100グラム当たり360ミリグラムと豊富に含んでおり、生果ではカリウムが最も多い果物の一つです。高血圧は脳卒中の最も重要な危険因子です。食事からカリウムを多く摂取すると血圧が低くなることは臨床的にも疫学調査上からも示されています。カリウム摂取量と脳卒中に関係した死亡率を50~79歳の男女859名について疫学調査したところ、カリウムの摂取量が最も少ない人たちは、多い人たちに比べて死亡率が2.6倍(男性)~4.8倍(女性)でした。また、1日のカリウム摂取量にバナナ1本分に相当するカリウムを追加摂取すると、脳卒中に関係した死亡率を40%低下させることも認められました。
免疫増強作用:免疫力とはウイルスやがんのような異物を見つけ、それを排除する力です。実験動物にいろいろな野菜や果物の抽出物を静脈注射して血液中のTNF(白血球が作り出す物質)産生能を調べたところ、果物ではバナナ、スイカ、ブドウなどが臨床で用いられる免疫増強剤と同じくらいのTNFを増やすことが分かりました。TNFは免疫ホルモンの一種で腫瘍壊死因子と訳されており、腫瘍を動物に移植し、その動物にTNFを静脈注射すると腫瘍だけを壊死させるという物質ですが、さらに、TNFはウイルスや病原菌を排除する作用もあります。そこで、バナナはがん予防だけでなく風邪などの感染症予防にも期待できます。
 バナナは熟度によって免疫活性が変化し、黄色より黒い斑点が現れたほうが免疫活性が高いといわれています。
コレステロール値抑制作用:コレステロールに富んだ食餌を実験動物に与える際に、この食餌に冷凍乾燥したバナナを添加すると、総コレステロール値や悪玉コレステロール値の上昇が著しく抑制されました。バナナ果肉のでん粉やタンニン、脂質を与えてもコレステロール値の抑制は認められず、セルロース以外の食物繊維に認められたことから、バナナ果肉によるコレステロール値抑制作用は食物繊維に由来すると考えられています。バナナの摂取によってコレステロール値の抑制が期待されます。
便秘解消など:バナナには消化吸収されにくい低カロリーのフラクトオリゴ糖が含まれています。この糖は小腸で消化されずに大腸まで到達し、ビフィズス菌や乳酸菌などの栄養源となり善玉菌を増殖します。バナナは便通解消や腸内環境の改善に効果が認められました。
 なお、美味しいバナナを選ぶにはジクが痛んでいない、太さが揃い、丸みの帯びたものを選びましょう。バナナは谷型に置くと、バナナの重みで下の部分がつぶれます。山型に置きましょう。また、バナナを食べる際には直前に短時間冷蔵庫に入れたほうが甘みが増します。
参考:
1.間苧谷 徹編者:果物の真実 p.117~118 化学工業日報社 2003年
2.Lohsoonthorn Pら:Asia Pac J Public Health 1995;8(2):118-22 
3.Deneo-Pellegrini Hら:Nutr Cancer. 1996;25(3):297-304
4.Lee SYら:Korean J Gastroenterol. 2005Jan;45(1):23-33
5.Horigome Tら:Br J Nutr. 1992 Jul; 68(1):231-44   
6.Khaw KTら:N Engl J Med. 1987 Jan 29;316(5):235-40、など

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2008/03/02

キャベツの話

 キャベツはケールやブロッコリー、カリフラワーの仲間で、ギリシャ時代から薬用として栽培されていたようです。原産地は地中海沿岸およびヨーロッパの大西洋沿岸地域であると考えられており、これらの地域には原産種が広く分布しています。わが国には江戸末期から明治時代に渡来したが高温多湿のため定着せず、日本の気候に適するよう改良された品種が明治時代の末期に登場しました。
 キャベツで特記すべきは、60年ほど前、アメリカのスタンフォード大学教授が難治性の胃潰瘍患者にヨーロッパの民間療法であるキャベツ汁を飲ませたところ、全員が治癒しました。その後、キャベツから「キャベジン」と呼ばれるビタミンUが見されました。ビタミンUはキャベツやレタス、セロリなどの野菜に多く含まれていますが、また、医薬品としても胃・十二指腸潰瘍の治療や予防の薬として使用されています。ビタミンUは熱に弱い物質なので、キャベツを加熱する際には手早くゆでたり、一気に炒める必要があります。
 キャベツは、キュウリやレタス、トマト、セロリ、ブロッコリーなどサラダ野菜の中ではブロッコリーに次いで、ビタミンB6、C、K、M(葉酸)、U、食物繊維が多く含まれています。B6は女性特有なイライラなどの「月経前症候群」に有効;Cは細胞と細胞をつなぐ接着剤のようなコラーゲンの生成に関与し、また、かぜ予防や肉体疲労軽減のほか、発がん物質生成の抑制;Kは血液凝固や骨粗鬆症の予防;Mは胎児の成長に不可欠、妊娠・授乳中は必須;食物繊維は便秘解消などに役立ちます。また、キャベツにはブロコリーや大根、わさびなどのアブラナ科野菜に特有な辛味成分が多く含まれており、強い抗菌力が認められています。さらに、でん粉分解酵素であるジアスターゼも含まれています。キャベツは1日に50~60gを目標に摂取するとよいといわれています。
 キャベツの機能性について主な研究例を次に記します。
抗がん作用:胃がん患者379名および健常者1,137名を対象に疫学調査が実施されたところ、キャベツや人参、にんにくなどの生野菜を多く摂っている人は胃がんになるリスクが低く、キャベツを月1~3回以上摂っている人はほとんど摂らない人に比べて胃がんになるリスクは76%も低下した;胆のうがん患者153名および健常者153名を対象とした疫学調査では、キャベツやほうれん草、大根葉、からし菜などの野菜を多く摂っている人は胆のうがんになるリスクが低く、キャベツの場合、ほとんど摂らない人は週3回以上摂る人に比べて胆のうがんになるリスクが2.26倍であったなどが報告されました。また、スエーデン女性81,922名について野菜や果物の摂取量とすい臓がんの発生数が調査されました。キャベツを週に1サービング(注)以上摂っている人は、ほとんど摂らない人に比べて、すい臓がんになるリスクは38%低かった。40~76歳の女性61,000名について疫学調査したところ、野菜や果物を毎日5サービング以上摂っている人は腎臓がんになるリスクは低く、キャベツを摂る回数が多いほどリスクは低かったと報告されています。キャベツやブロッコリー、大根などのアブラナ科野菜を多く摂ると、肺がんや胃がん、大腸がん、前立腺がん、卵巣がんになるリスクは減少するが、これはアブラナ科野菜の成分がイソチオシアネートやインドールなどに変化し、これらが発がん予防に寄与していると考えられています。別に、キャベツ抽出物を肝臓がんの実験動物に経口投与したところ、免疫系が活性化し腫瘍の大きさを減少させたという報告もあります。
免疫力を高める:免疫力とはウイルスやがんのような異物を見つけ、それを排除する力です。キャベツ発酵エキスを摂取すると、全身および腸管免疫系における免疫グロブリン(IgG)が増強されることが示されました。また、実験動物に野菜ジュースを静脈注射して血液中のTNF(白血球が作り出す物質)の量を調べたところ、キャベツやなす、大根、ほうれん草などはインターフェロンなど白血球を活性化する免疫増強剤と同じくらいのTNFを増やすことが分かりました。TNFは免疫ホルモンの一種で腫瘍壊死因子と訳されており、腫瘍を動物に移植し、その動物にTNFを静脈注射すると腫瘍だけを壊死させるという物質ですが、さらに、TNFにはウイルスや病原菌を排除する作用もあります。そこで、キャベツはがん予防だけでなく、かぜなどの感染症予防にも期待されます。
(注)野菜・果物の1サービングの目安:生野菜1カップ;調理された野菜1/2カップ;
   果物(中くらい)1個;100%ジュース180cc
参考:①Zickute Jら:Medicina(kaunas) 2005;41(9):733-40   
②Rai Aら:Eur J Cancer Prev. 2006 Apr;15(2):134-7
③Larsson SCら:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2006 Feb;15(2):301-5
④Rashidkhani Bら:Int J Cancer 2005 Jan 20;113(3):451-5
⑤Van Poppel Gら:Adv Exp Med Biol. 1999;472:159-68
⑥山崎正利:サイトカインの秘密 1999年 PHP研究所 など  

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2008/02/15

農薬入りギョーザ

 農薬入りギョーザの問題が新聞やテレビで毎日のように報道されています。原因が速く解明され、安全・安心が確保された食生活が営めるようになりたいと願います。農産物中の残留農薬除去法については、このブログで既に記載しています。参考にしてください。
 2005年3月30日記:きゅうり、トマト、なす、ピーマン、ばれいしょ、にんじん、りんご、なし、桃
 同   3月6日 記:ほうれん草、キャベツ、はくさい、レタス
 同   2月13日記:食卓の食べもの

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2008/02/03

柿の話

 柿はカキノキ科カキノキ属の植物で、東南アジアの温帯地帯に原生しています。古くは、日本にも自生していたといわれ、また、中国から伝来したという説もあります。柿は古事記にも記されており、奈良時代には干し柿として売られ、鎌倉時代以降に甘柿が現れました。柿の品種は800種類以上あり、「富有」や「次郎」などは優れた品種として広まりました。柿は中国や朝鮮半島南部でも栽培されていますが、日本のような優れた甘柿は作られていません。柿は日本人が作り出した果物です。
 柿にはビタミンC、カロテン、食物繊維、カリウム、タンニン類(ポリフェノール)など多様な機能性成分が豊富に含まれており、抗がん作用、抗酸化作用、免疫能向上作用、老化防止作用などが期待されています。江戸時代には「柿が赤くなると医者は青くなる」といわれました。甘柿(生)のカロリーは60Kcal/100gで、ごぼう(ゆで)58Kcal/100gと同程度であり、精白米ご飯168Kcal/100gの約1/3と少ないのです。
 また、がんやストレス、風邪だけでなく美容にも効果があるビタミンCは、温州みかんやグレープフルーツの約2倍、70mg/100gと多く含まれています。柿一個(中程度、150g)食べるだけで一日に必要なビタミンCの推奨量を十分に満たすことができます。果物を煮詰めていくとゼリー状になりますが、これはペクチンの作用です。柿のペクチンは果物類の中では特に多く、0.5~1.0%含まれており、血中コレステロールを減らしたり、乳酸菌を増やし腸の調子を整えたり、大腸がん予防にも力を発揮します。
 柿の機能性について主な研究例を次に記します。
動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞など循環器系疾患の予防:悪玉コレステロールが血管の内壁に沈着し、活性酸素などで酸化されると、血管は弾力性を失い動脈硬化となります。動脈硬化がさらに進むと脳梗塞や心筋梗塞などが発症します。70歳以上の日本人961名を対象とした疫学調査の結果によると、柿やオレンジ、いちごを日頃食べている人はコレステロールなどの脂質が酸化されにくくなることが明らかになりました。  このことから、柿は高齢者における循環器系疾患の予防に有効であることが示唆されました。また、柿酢1日当たり20mlを3月から5月にかけて8週間飲用したところ、血中の抗酸化能が高まることも認められました。
 実験動物を対象とした試験では、コレステロールを多く含む餌を与えると、血中の総コレステロールや悪玉コレステロールが上昇するが、柿の乾燥粉末を餌に添加した場合にはコレステロールの上昇が著しく抑えられました。これは柿に含まれている水溶性食物繊維、カロチノイド、ポリフェノール類などによると考えられています。
 また、脳卒中になりやすい高血圧ラットを用いた実験では、カキタンニン0.5%含んだ水を与えると、脳梗塞や脳溢血の発生が70%から20%に激減し、生存率が50%から90%へと改善されました。これはカキタンニンが脳中のコレステロールなど脂質の酸化を抑制することによると考えられています。カキタンニンは酸化抑制力がビタミンEの20倍以上とみられています。
糖尿病予防:食物中の糖質は体内でブドウ糖に分解され、ブドウ糖は血液の流れの中に入り、体内の細胞に運ばれます。柿の果皮に含まれているプロアントシアニジンの変化物は糖質のブドウ糖への分解を強く抑制すると報告されました。このため、柿は血糖値を急激に上昇させないので、糖尿病予防や治療に有効に作用します。また、プロアントシアニジンは血糖や尿たんぱくなどを減少させ、糖尿病の症状を改善することも認められました。奈良県農業技術研究センターの研究チームは、カキタンニンに糖尿病や高血圧などの生活習慣病を改善する機能性があることをマウスの実験で明らかにしました。
関節炎予防:柿やみかんに多く含まれているカロテノイドの一種であるβ-クリプトキサンチンに関節炎の予防効果があることが明らかになりました。55~69歳の約3万名の女性を対象としたアメリカの疫学調査の結果によると、β-クリプトキサンチンの摂取量が多い人は少ない人に比べてリウマチ性関節炎になるリスクが41%低いと報告されました。また、25,000名以上を対象にしたイギリスの疫学調査の結果によると、炎症多発性関節炎患者は健常者に比べて食事からのβ-クリプトキサンチン摂取量が40%程度低かった。関節炎発症のリスクを減らすには、β-クリプトキサンチンの摂取量を適度に増やす必要があり、その量は一日、コップ一杯の新鮮なオレンジジュースに相当すると報じています。
 このほか、柿には抗菌作用、消臭作用、体温低下作用、悪酔い防止作用などがあるとされています。
 なお、新鮮柿と乾燥柿には機能性成分がいずれも高濃度に含まれており、新鮮柿が入手できないときは乾燥柿でも十分に有効です。
参考:①農林水産省果樹花き課:果物&健康News Vol.74
    ②Kuriyama Sら:Int J Vitam Nutr Res 2006 Mar. 76(2):87-94
    ③Gorinstein Sら:J Nutr. 1998 Nov;128(11):2023-7
    ④Lee YAら:J Nutr Sci Vitaminol(Tokyo) 2007 Jun;53(3):287-92
    ⑤Yokozawa Tら:Food Chem Toxicol 2007 Oct;45(10):1979-87など。

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2008/01/01

体に効く野菜・くだもの

 「トマトの話」、「ニンジンの話」などのテーマを約2年6ヶ月間継続して掲載してきました。これらのテーマを扱った動機や現状などを記します。
 今から15年ほど前まで一般の消費者は、がんの原因は食品中の残留農薬や食品添加物であると考えていました。当時でも、科学者たちは数多くの科学的データから、「がんの主な原因は日常の食べものや喫煙であり、残留農薬や食品添加物はほとんど無視できる」と考えていました。また、国立がんセンターが科学的な根拠に基づいて作成した、「がん予防に有効な12箇条」でも八箇条までが食べものに関係したもので、その他はたばこを吸わない、日光に当たりすぎない、身体は清潔にする、運動するでした。
 当時、私は一般の消費者に農薬を正しく理解してもらうため、啓蒙活動に参加していました。講習会の会場で、がんの主な原因は残留農薬ではなく日常の食べものや喫煙ですと話したところ、受講者から食べものは「安全なもの」であり、がんの原因になるとは到底考えられないと反論されたことがありました。
 現在では一般の消費者も「がんの主な原因は日常の食べものや喫煙である」と理解しているでしょう。科学者の常識が一般の消費者に浸透するのに15~20年もかかったことになります。科学的成果が速やかに社会に還元されないことは大きな損失です。
 1990年、アメリカ国立がん研究所が中心となって、「植物性食品によるがん予防」を目的とした「デザイナーフーズ」計画が発足しました。この成果として、世界的な疫学調査などによって過去10年間に「がん予防効果」が認められた約40種類の植物性食品が発表されました。第一位にランクされた食品はにんにく、キャベツ、甘草、大豆、にんじんなど、第二位にはたまねぎ、茶、トマト、ブロッコリーなどです。これらには医食同源で有名な生薬でもある甘草や仙薬として中国から伝わり日本で常用されている茶などが挙げられています。
 このように植物には、がん予防効果のほかに古くからいろいろな病気に対する治療効果が認められています。
そこで、上述の約40種類の植物性食品を中心とした野菜や果物などの機能性に関連した科学的成果を、一般の消費者に少しでも速く紹介したいと考えて、文献調査することにしました。
 私が住んでいるつくば市内には数多くの研究機関があり、少し離れて筑波大もあります。これら施設の学術論文や総説類を複写したり、大学の研究者や関係機関から学術論文や資料を取り寄せたり、医学系の欧文誌はデータベースMEDLINE(注)を利用して検索し、1カ月程度かけて20~30種類の論文や資料を収集しています。そのため、一つのテーマを記事にするのに1月半程度かかります。
 しかし、この文献調査によって得られる貴重な知見は私自身の食生活の改善にも大きく役立っていますので、これからも調査は続けていきたいと考えています。
 (注):アメリカ国立医学図書館が公開している医学系文献のデータベースであり、世界約70カ国、4,500誌近      い雑誌に掲載された文献が検索できる。

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2007/12/01

ニンジンの話

 ニンジンはセリ科ニンジン属の作物で、ヨーロッパ南部から北アフリカ、中近東に野生種が分布しています。この野生種が栽培されたのはアフガニスタンと考えられています。この栽培種がヨーロッパに伝わり西洋種が生まれ、中国に伝わって東洋種が生まれました。東洋種の一部が17世紀に日本に渡来し18世紀以降に西洋種が導入されたので、日本には東洋種と西洋種が存在します。現在、収量が多く栽培管理の容易な「五寸」と呼ばれる西洋種が主に栽培されています。なお、朝鮮人参はウコギ科の多年草で、ニンジンとは別品種です。朝鮮人参は高麗人参とも呼ばれ、古くから薬用効果が著しいとされてきました。
 ニンジンはカロテンが最も多く含まれている野菜の一つであり、ニンジン100g当たりカロテンが8.6mgも含まれています。この量は成人の健康維持・増進のために必要な「推奨量」に相当します。しかし、カロテンが体内へ実際に吸収される量は調理法によって大きく異なります。体内への吸収率は生のままでは10%、もみじおろし21%、塩ゆで47%、バター炒め80%です。
 カロテンにはα-、β-、γ-カロテンがありますが、食品中に含まれているのは主にβ-カロテンです。β-カロテンは体内に入ると、必要に応じてビタミンAに変わり、残りは肝臓や脂肪組織などに蓄えられます。ビタミンAは①目の疲れをとり、夜盲症を予防する、②粘膜の乾燥防止、細菌感染に対する抵抗力を高める、③肌荒れやしわを防ぐなどの効果があります。ビタミンAは過剰に摂取すると倦怠感や情緒不安定などの過剰症を引き起こしますが、β-カロテンは過剰に摂取しても皮膚の色が黄色くなる柑皮症を除けば副作用は認められていません。
β-カロテンはビタミンAに変わって初めて生理作用を発揮すると考えられていましたが、近年ではそれ自体の効力が注目されています。β-カロテンの摂取が多いと、肺がん、胃がん、子宮頸がんの発生率が少ないという疫学による調査結果があります。また、動脈硬化を引き起こしたり、狭心症や心筋梗塞の原因となる、悪玉コレステロールの酸化を防止する作用;コレステロールの合成を抑制する作用も明らかにされています。
 ニンジンの機能性について主な研究例を次に記します。
抗がん作用:緑黄色野菜を摂取すると「がん」になりにくいことは60年以上も前から指摘されていました。ウエールズ地方のがん患者500名を対象に調査した結果、ニンジンやキャベツなどの緑黄色野菜と牛乳を摂取するとがん抑制効果があると報告されました。その後も、ニンジンと牛乳が肺がん;ニンジンとキャベツ・ブロッコリが膀胱がん;緑黄色野菜が胃がん、肺がん;トマトが胃がん;かぼちゃとなすが胃がんに有効であるという研究成果が相次いで報告されました。
 近年の研究例として喫煙女性を対象に16年間、疫学調査した結果、ニンジンを食べている女性は肺がんになるリスクが著しく減少し、週に5回以上食べる者は、食べない者に比べて肺がんのリスクが60%も減少した(1999年);非喫煙者を対象に肺がん患者506名および健常者1045名を調査した結果、ニンジンを食べる者は肺がんになるリスクが20%減少した(2000年);肺がん患者417名および健常者849名を対象にした調査では、普段たばこを吸いニンジンを食べない者は、週1回以上ニンジンを食べる者に比べて、肺がんになるリスクが3倍であった(1986年)などが報告されました。また、愛知がんセンター病院の調査によると、緑黄色野菜やニンジンをしばしば食べる者は乳がんになるリスクが半減し、子宮頸がんになるリスクは50~70%減少した;マサチューセッツ州やウイスコンシン州などにおける調査によると、ニンジンやほうれん草を週2回以上食べる者は乳がんになるリスクが44%減少したなどが報告されました。これらのほか、ニンジンやセロリなどによる胃がんの軽減;ニンジンやトマトからの抽出物が肝臓がんの初期に有効;β-カロテンの血中濃度が高いほど、がんによる死亡率が低い;ニンジンジュースの飲用がDNAの酸化的損傷を著しく減らし、がん予防の効果を発揮すると理解される、などが報告されています。
コレステロール値低下作用:近年、わが国では食生活の変化に伴って血中のコレステロールや中性脂肪が過剰な、高脂血症者が急増しています。高脂血症は動脈硬化を引き起こし、さらに進むと脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な疾患を誘起します。
 境界域および軽度コレステロール血症者にニンジンを主原料とした野菜ジュース1缶(190g)を毎日8週間飲んでもらったところ、総コレステロール値は摂取開始直前231.0±22.3mg/dlに対して実質13.1±12.9mg/dl;LDL(悪玉)コレステロール値は摂取開始直前149.1±21.7mg/dlに対して実質13.1±14.1mg/dl、それぞれ低下しました。また、実験動物においても、ニンジンを添加した食餌で飼育すると血漿や肝臓中のコレステロールや中性脂肪が減少したと報告されました。
 以上のほか、ニンジンを食べることによって血糖値上昇抑制、免疫機能の向上、便秘解消などにも効果があると報告されています。
 なお、ニンジンはビタミンCを破壊する酵素が含まれているので、大根にニンジンを混ぜた「もみじおろし」ではビタミンCは60分後に80~85%も減少します。ニンジンを茹でてからすりおろすか、「もみじおろし」に酢(例:レモン汁)を加えるとよいでしょう。
参考:①Speizer FEら:Cancer Causes Control, 1999 Oct; 10(5):475-82   
    ②Pisani Pら:Int J Epidemiol, 1986 Dec; 15(4):463-8      
    ③Tajima Kら:Gan No Rinsho. 1990 Feb;Spec No:351-64     
    ④Longnecker MPら:Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 1997 Nov;6(11):887-92  
⑤Brennan Pら:Cancer Causes Control, 2000 Jan;11(1):49-58   
    ⑥尾本修身ら:健康・栄養食品研究 Vol.6(1),37-50,2003 など

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2007/11/01

私の視点

 地元の梨園を訪れた。広い梨園には下草が一本も見当たらない。農家は雑草を手で一本一本抜き取ったという。本当かと一瞬疑った。しかし、除草剤を使用すれば枯れ草の残骸がある筈だ。やはり手で抜いたに違いない。また、近所の農道を散歩中、広い畑の雑草を手で抜いている、おばあさんに出会った。農産物を生協に出荷するため除草剤は使わないのだという。知人の農家でさえ農薬散布のことを話したがらない。肩身の狭い思いをして農薬を使用していることが感じられた。
 わが国では戦後、食糧不足の時代に毒性が極めて高い、あるいは残留しやすい農薬を作物の病害虫防除剤として多用してきた。その結果、散布中における事故のほか、これらの農薬が自殺や他殺にも悪用され、農薬による中毒事故や死亡事故が年間1,591件にも達したことがあり、また、残留問題もしばしば起こった。これらはその都度、新聞や雑誌、TVなどで報道され、農薬は「危険なもの」、「恐ろしいもの」、「怖いもの」という印象を消費者の脳裏に深く刻み込んだ。1971年に農薬取締法が安全性の面から大改正され、それ以降30数年間、農薬は安全性を常に追求しながら改良されてきた。
 現在では安全性の高い農薬のみが登録されている。農薬の80%以上は毒物でも劇物でもない普通物であり、主要な農薬10種類のうち、8種類は茶やコーヒ中のカフェイン、野菜や果物中のビタミンC、馬鈴薯中のソラニンよりも急性経口毒性が低い。また、国内の農産物が調理された、食卓の食べ物の中には農薬はほとんど残留していない。
 2002年から2年間かけて農薬取締法が再度大幅に改正され、食用作物および飼料作物に農薬を使用する場合、その使用量や総使用回数などに違反したものは「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科」が科せられるようになった。
 このような厳しい罰則が科せられる国は日本以外にはないだろう。しかし、農薬が「すっかり変わった」という情報は消費者に十分に伝わらないため、現在でも、農薬は「何となく怖いもの」と思っている消費者が多い。その上、食品の安全性が宣伝されるとき、「無農薬」とか「減農薬」という文句が「安全」食品の枕詞として頻繁に用いられるため、農薬は「何となく怖いもの」という印象が消費者の脳裏からなかなか払拭されない。
 農薬に対する誤解や偏見のために農家は減農薬を厳しく求められたり、必要以上に減農薬せざるを得ない状況に追い込まれ、過酷な労働を強いられている。
 その結果、農家の後継者はますます減り、食の安全性確保の観点からも重要な国内農産物の生産基盤である、日本農業が衰退することを強く懸念している。

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2007/10/01

アズキの話

 アズキ(小豆)はマメ科ササゲ属の植物で、原産地は中国南部の雲南省・四川省あたりという説が有力です。日本では縄文時代中期の遺跡から出土しており、「古事記」や「日本書紀」にも登場しています。アズキは美しい赤色のために呪術的にみられ、日本や中国、韓国では魔よけや怪我を払う力があると考えられ、お正月15日のアズキ粥や節句の赤飯など、おめでたい日の食べものとされてきました。
 アズキにはカリウムやビタミンB1,B2,葉酸が多く含まれています。カリウムの摂取は血圧値の低下、脳卒中の予防、骨密度の増加につながり重要です。カリウムが多いといわれる食品にバナナがありますが、アズキにはバナナの4倍のカリウムが含まれています。ビタミンB1は糖質を分解してエネルギーを作るために必要で、不足すると体内に疲労物質がたまり疲れやすくなります。代表的な欠乏症は脚気です。アズキにはビタミンB1が玄米よりやや多く含まれています。ビタミンB2が不足すると口内炎や口角炎、口唇炎ができやすく、肛門や陰部がただれやすくなります。葉酸は造血作用や細胞の新生・増殖に欠かせません。最近の発表によると、葉酸は膵臓がんやアルツハイマー病の発症リスクを下げることが疫学調査で明らかにされました。
 アズキの機能性について次に記します。
抗がん作用:活性酸素は動脈硬化、心筋梗塞、脳血管障害、がんなどの生活習慣病のほか、痴呆、しわ、シミなどの原因にもなっているが、アズキには、この活性酸素を除去する、強い抗酸化力のあるポリフェノールが大量に含まれています。アズキの熱抽出物は人の胃がん細胞だけでなく、薬物でがん化された動物のがん細胞に対しても細胞自殺(アポトーシス)させて、がん細胞の増殖を抑えます。この抑制作用にはアズキ種皮に含まれているアントシアン(ポリフェノール)が関与していると考えられています。
コレステロール低下作用・血液サラサラ:高血圧や動脈硬化は悪玉コレステロールが活性酸素で酸化されて進行します。アズキに含まれているサポニン(ポリフェノール)は血液中のコレステロールや中性脂肪を減らし、高血圧や動脈硬化、高脂血症などの予防に有効です。また、赤色のアントシアニンも血液をサラサラにする効果があります。アズキの抽出物を添加した食餌を与えた実験動物ではコレステロールの上昇が抑えられ、コレステロールの排泄量や糞量が増加しました。
血糖値上昇抑制作用:アズキの煮汁から得られた小豆ポリフェノールを実験動物に投与した後、馬鈴薯デンプン、しょ糖を与えたところ、実験動物の血糖値が小豆ポリフェノールを投与しないものに比べて低い値を示しました。小豆ポリフェノールによる血糖値上昇を抑制する作用は、デンプンなどの糖質を糖に分解するα-グルコシダーゼやα-アミラーゼなど糖分解酵素の活性を抑えることが原因であると考えられています。
便秘解消:アズキは昔から便秘に効果があることが知られていました。アズキには食物繊維がごぼうの3倍、竹の子の6倍含まれています。しかも、アズキの食物繊維は水に溶けないので、腸の中で水分を保持し便を軟らかくすると同時に、腸のぜん動運動を活発にして便秘を解消してくれます。
 これらのほか、アズキには肝臓保護作用や利尿作用のほか、産後の肥立ち、イライラの改善に効果があるといわれています。
 なお、アズキを調理するとき鉄鍋を用いると、アントシアニン色素と鉄が結合して煮汁が黒褐色になります。
参考:①伊藤智宏ら:日食工誌 第49(5) 339(2002)
    ②Tomohiro Itohら:J Nutr Sci Vitaminol ,50,295,2004
    ③小嶋道之ら:日食工誌 第53(7) 380(2006)
    ④小嶋道之ら:日食工誌 第54(1) 50(2007)
    ⑤(財)日本豆類基金協会資料
    ⑥農林水産省果樹花き課:果物&健康 NEWS VOL.107;VOL.135

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2007/09/01

ブドウの話

 ブドウはブドウ科ブドウ属の植物で、現在栽培されている品種は黒海・コーカサス地方を原産とするヨーロッパ系と北アメリカ原産のアメリカ系およびこれらの交雑種がほとんどです。日本のブドウ栽培は平安時代末期にヨーロッパブドウの一品種である「甲州ブドウ」が山梨県勝沼町で発見されたのが始まりとされています。江戸時代になると、ブドウは甲州の名産品として広く知られるようになりました。「巨峰」はわが国で育成され、「デラウエア」は米国で育成されました。いずれも欧米雑種です。
 ブドウはレスベラトロール、アントシアニン、カテキンなどのポリフェノールを豊富に含んでいます。これらは抗酸化作用があるため、動脈硬化やがんなどの生活習慣病を引き起こす活性酸素を除去する作用があります。
 ブドウの機能性について次に記します。
抗がん作用:ブドウの果皮にはポリフェノールの一種であるレスベラトロールが豊富に含まれています。この成分は試験管レベルだけでなく、ヒトレベルでも強力な抗がん作用が注目されています。1993年と2003年にスイスで、乳がん患者369名、健常者602名について、ブドウの摂取と乳がんの関係について疫学調査が実施されました。その結果、ブドウの摂取によって乳がんのリスクが36~45%減少していることが分かりました。実験動物の場合、紫色のブドウジュースの摂取は乳房の腫瘍面積を著しく縮小し、初期腫瘍の成長を阻害した;レスベラトロールを週2回塗布したところ、皮膚がんが98%抑制されたなどが報告されました。がんの発生にはDNAが突然変異する、細胞が異常になる、異常細胞が増殖し他の臓器にまで移転するという三段階の経過をたどりますが、レスベラトロールはこの三段階のいずれにも抑制的に作用します。レスベラトロールはがん細胞を死滅(アポトーシス)させるという報告もあります。
脳梗塞予防・心筋梗塞予防:悪玉コレステロールが酸化されると動脈硬化の原因となり、進行すると血管の破裂や血栓形成などが起きやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞へと進んでいきます。動脈硬化や血栓形成の予防を通して脳梗塞や心筋梗塞のリスクを下げることが重要です。冠状動脈疾患(心臓病)の患者に2週間ブドウジュースを飲用してもらったところ、血液中の悪玉コレステロールの酸化が遅れることが明らかになりました。また、血液中の血小板の凝集が減少し、血管拡張率も改善されたと報告されています。
 また、紫色ブドウジュース、オレンジジュース、グレープジュースが血小板凝集を減らすかどうか試験されました。健常者10名が、これらのジュース5~7.5ml(体重Kg/日)を7~10日間飲用したところ、ブドウジュースは1週間で血小板の凝集を減少させたが、他のジュースでは効果が認められませんでした。紫色ブドウジュースは柑橘ジュースに比べて約3倍のポリフェノールが含まれています。このように、ブドウの摂取は悪玉コレステロールの酸化を抑制し、血小板凝集・血栓形成を抑制することによって、循環器系疾患の予防に効果的であることが示されました。
細胞寿命の延命:ハーバード大学医学部の研究チームはブドウに含まれているポリフェノールの一種であるレスベラトロールが、ある種の酵素に作用して細胞の寿命を延ばす働きがあることを明らかにしました。また、脂肪分が多い高カロリー食で飼育されたマウスの寿命は標準食で飼育されたマウスに比べて短いことが知られていますが、レスベラトロールを高カロリー食と一緒に与えると寿命短縮を防ぐ効果がありました。
 以上のほか、ブドウの成分が脳細胞の酸化障害を予防するとか、高血圧患者の血圧を下げるなどが報告されています。
 余話:フランスでは動物性脂肪の摂取量が極めて多いにも拘わらず虚血性心疾患による死亡率が低く、「フレンチパラドックス」として注目されています。フランスは世界一の赤ワイン消費国であることが原因の一つとして考えられ、数々の研究の結果、赤ワイン中に含まれている強い抗酸化作用のある「プロアントシアニジン」などのポリフェノール類がアルコールによって効率的に体内に吸収され、動脈硬化が抑制され、その結果、虚血性心疾患による死亡率が低くなったとみられています。
参考:①農林水産省果樹花き課:果物&健康 News Vol.25,26,71,127,146
    ②間苧谷・田中:くだもののはたらき 日本園芸農業協同組合連合会、2005年
    ③Jung KJら:Cancer Lett. 2006 Feb 28;233(2):279
    ④Levi Fら:Eur J Cancer Prev. 2005 Apr;14(2):139
    ⑤Keevil JGら:J Nutr. 2000 Jan;130(1):53 など

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2007/08/01

ゴマの話

 ゴマはゴマ科ゴマ属の一年生草木です。日本でゴマが本格的に食用として重要視されるようになったのは平安時代になってからですが、縄文後期の遺跡からゴマが出土しているので、渡来したのはかなり古い時代とみられています。ゴマには髪の毛を増やし白髪を防ぐ働きがあるといわれ、中国の古い薬物書には「白髪を黒に返す」とあり、黒ごまをすりつぶして粉にして丸薬が作られました。日本では「不老長寿食」とされ、畜肉を摂ることができなかった禅宗の寺院で、ゴマ和えやゴマ豆腐などが作り出されました。
 現在、国連のWHO(世界保健機関)、FAO(食糧農業機関)でも人類の健康増進のためゴマを食生活により多く取り入れるように勧告しています。
老化予防:老化は、いわば人間の細胞が活性酸素などによって酸化され、細胞がさびていくことです。ゴマは、この酸化を強力に防止します。ゴマには、特有のセサミン、セサモリンが多く含まれ、これらは抗酸化力の非常に強い物質に変化します。例えば、独特の香りと茶褐色の焙煎ゴマ油は60℃の下で空気中に放置しても数十日間酸化されず、抗酸化力は他の食用油に比べて突出して強いのです。ゴマの成分は老人から得られた培養細胞で試験したところ、酸化障害が抑えられました。実験動物の場合でも肝臓や腎臓 における酸化障害が抑えられ老化抑制効果が認められました。さらに、老化の原因となる物質の蓄積も抑えることが認められたと報告されています。
 これらのほか、ゴマには抗酸化力が認められる報告が多く、パーキンソン病やアルツハイマー型痴呆など老年病の予防に大きな期待がかけられています。
肝機能保護:ゴマの成分には肝機能を保護する作用が認められています。ゴマを予め(1週間程度)摂っていると、アルコール飲酒後の顔面温度が飲酒30分頃から低下し、呼吸心拍数の変動も少なくなりました。また、実験動物の場合でも、血液中からアルコールの消失が早まり、血清のGOT、GPTなど肝機能指標も顕著に改善されました。さらに、アルコール摂取による筋弛緩も軽減したなどが報告されています。
 酒好きの人は日頃からゴマを摂るように心掛けるとよいかもしれません。
コレステロール濃度の低下、動脈硬化抑制:ゴマに含まれるセサミンは血清コレステロール濃度を低下させます。セサミンはコレステロールが小腸から吸収されるのを阻害し、同時に肝臓におけるコレステロールの合成を妨げます。高コレステロール患者にセサミンを8週間投与したところ、血清コレステロール値が20%も低下しました。コレステロールが酸化されると、それが血管壁に溜まり、血管が硬くなり動脈硬化症になります。ゴマサラダ油には抗酸化力が強い物質があり、その物質は悪玉コレステロールの酸化をビタミンEよりもはるかに強力に抑えます。
脳中のビタミンE濃度上昇作用:ビタミンE(α-トコフェロール)は強い抗酸化力をもち、老化の原因である過酸化脂質の害を防ぎ、「若返りビタミン」と呼ばれています。また、アルツハイマー型脳症を軽減するともいわれています。実験動物を①普通飼料、②普通飼料に含まれる量の、10倍量のビタミンE添加、③普通飼料にゴマ添加の3種類で8週間、飼育したところ、肝臓中のビタミンE濃度は②飼料の場合が最高でしたが、脳中のビタミンE濃度は大きな上昇が認められませんでした。しかし、ゴマ添加の③飼料の場合には脳の各部位でビタミンE濃度が顕著に上昇しました。特に記憶を司るといわれている海馬で大きな上昇が認められました。ビタミンEが脳細胞に直接作用し、脳の酸化ストレスを軽減できれば脳細胞が活性化します。老化問題を扱っている研究者はゴマの摂取と認知症発症の関係を疫学調査で調べたいと考えています。
 以上のほか、ゴマには、がん予防作用、血圧上昇抑制作用、血栓防止(血液サラサラ)作用などがあるといわれています。
 なお、すりゴマや練りゴマは1日に10g以上摂るとよいそうです。ゴマを食卓に常備するように心掛けましょう。
文献:①食の科学 4,18-49(1996);12,4-38(2005)
    ②並木満夫編「ゴマ その科学と機能性」、1998年 (株)丸善プラネット
    ③Chisato Abeら:J Nutr Sci Vitaminol、51,223-230,2005 など

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2007/07/02

コーヒーの話

 コーヒーの起源には諸説があり、その一つにエチオピアのヤギ飼いが赤い木の実を食べているヤギが興奮しているのを見て不思議に思い、その実を食べたところ、気分が爽快になったのが始まりという説があります。
 コーヒーの木はカフェインなどのアルカロイド類を多く含むアカネ科に属する熱帯性低木で、熱帯の高地で年間の平均気温が20℃前後、朝夕の寒暖の差が比較的大きい地域で栽培されています。この地域は主として赤道を中心とした南北の回帰線の範囲内でコーヒーベルトと呼ばれています。収穫したコーヒーの赤い実から果肉や皮を取り除き、種子を乾燥しローストして焙煎豆を作ります。
 現在、コーヒーは生産地や積出港の名を取り、スマトラの「マンデリン」、アラビアの「モカ」、タンザニアの「キリマンジェロ」、ジャマイカの「ブルーマンテン」、ブラジルの「サントス」などと呼ばれています。
 コーヒーが日本に持ち込まれたのは17世紀で長崎とされていますが、今日のように一般家庭にまで普及したのは意外に新しく戦後からです。
 コーヒーの飲用と膀胱がんや膵臓がんなどとの関係を疑う研究結果が発表されたことがありましたが、現在では両者の因果関係に否定的な見方が強まっています。近年ではコーヒーの飲用がいろいろな病気を予防するといった、「有益面」が次々と発表されています。コーヒーの機能性について次に記します。
1.肝臓がん予防・肝臓病予防:肝臓がん患者250人および非肝臓がん患者500人について10年間、コーヒー飲用の状況を調査したところ、コーヒーを「飲まない」人たちが肝臓がんになる危険度を1とした場合、発症リスクは1~2杯では0.8;5杯以上では0.3であり、コーヒーの飲用が肝臓がんに対して予防効果を示すことが認められました。また、アルコール摂取量が多い人、B型肝炎ウイルス感染者やC型肝炎ウイルス感染者でも、コーヒーの飲用が肝臓がんの発症リスクを低下させることも観察されました。
 また、中年~中高年の男女90,452人について調査したところ、コーヒーを「飲まない」人たちの危険度を1とした場合、肝臓がんの発症リスクは1日1~2杯では0.52;5杯以上では0.24であり、習慣的なコーヒーの飲用が肝臓がんを減らすことが認められました。さらに、アメリカの民間保険加入者約13万人を対象に10年近く追跡調査し、肝硬変による入院・死亡が検討された結果、コーヒーの飲用が多い者ほどアルコール肝硬変による入院リスクが低いことが認められました。 これらのほか、コーヒーの飲用が多いと、肝機能血液検査値(γ-GTP、GOT,GPT)も改善されることが認められています。以上のほか、コーヒーの飲用が肝臓がんの発症リスクを減らすという研究結果が多数報告されています。
2.直腸がん予防:愛知がんセンター病院が、コーヒーによる影響が大きいと考えられる消化管について、40歳以上の患者(がん患者1,760人、非がん患者21,128人)を対象に調査したところ、コーヒーを「飲まない」人たちの危険度を1とした場合、1日3杯以上飲む人たちは直腸がんの発症リスクが半減することが認められました。
3.糖尿病予防:30~60歳のオランダ人男女17,111人について、コーヒーの飲用と2型糖尿病の関係を調査したところ、1日7杯以上飲む人たちは、2杯以上に比べて2型糖尿病の発症リスクが半減することが認められました。また、アイオワ州における閉経後女性28,812人について11年間調査したところ、コーヒーを「飲まない」人たちの危険度を1とした場合、1日6杯以上の飲む人では、糖尿病の発症リスクは22%減少しました。また、126,310人を対象として、コーヒーの飲用と2型糖尿病の発症関係を2~4年ごとに12年間以上調査したところ、コーヒーを「飲まない」人たちの危険度を1とした場合、1日4~5杯飲む人では糖尿病の発症リスクは30%程度減少しました。このほか、コーヒーの飲用が2型糖尿病の発症リスクを減らすという研究結果が多数報告されています。
4.リラックス効果・気分スッキリ:コーヒーの香りとラベンダーの香り、水を用いて、脳の血流を調べたところ、コーヒーの場合には快感のコントロールに関係する部位の血流量が増えていることが分かりました。ラベンダーでも多少血流が増えたが、水とそれほど大きな違いはありませんでした。このようにコーヒーの香りを嗅ぐだけでリラックス効果が認められました。このほか、コーヒーの飲用がストレスを緩和したり、集中力を回復させる実験結果もあります。
 以上のほか、コーヒーは二日酔いの頭痛軽減、大腸菌やピロリ菌の殺菌、胃がん予防、パーキンソン病発症リスクの低減などに効果があるようです。
参考:①食の科学 2005.10(No.332)p.30&1999.6(No.256)p.22
    ②(社)全日本コーヒー協会資料;③Gelatti Uら:J Hepatol 2005 Apr.42(4):528
④Inoue Mら:J Natl Cancer Inst 2005 Feb 16;97(4):293
⑤VAN Dam RMら:Lancet 2002 Nov 9;360(9344):1477-8

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2007/06/02

発芽玄米の話

 白米のご飯は、ふっくらとした柔らかさ、粘り、独特な香りや甘みがあり大変美味です。茶碗で何杯でも食べられそうです。しかし、白い米と書いて粕(カス)と読むように、白米は玄米に含まれている数多くの栄養成分が取り除かれています。
 発芽玄米は玄米を20~30℃の温水に1~3日間浸し、胚芽部分を0.5~1mmほど発芽させたもので、発芽のときに分泌する酵素によって玄米に蓄えられていたデンプンやたんぱく質が分解され、独特な甘みや美味しさが増し、さらに数々の機能性を有するギャバ(γ-アミノ酪酸)が玄米の約3倍、白米の約10倍に強化されています。
 発芽玄米は白米に比べると、ビタミンA3倍、ビタミンB1は3倍、ビタミンE4倍、カルシウム3倍、マグネシウム3倍などビタミン類やミネラル、さらに食物繊維が約4倍と栄養成分に富んでいます。
 発芽玄米は発芽によって軟らかくなっているため、普通の炊飯器で炊けるようになり、玄米よりもミネラルが吸収されやすくなっています。
 ギャバは脳の血流を改善するため、医薬品として脳梗塞や脳動脈硬化症による頭痛、耳鳴り、記憶障害などの脳血管障害の改善・治療に用いられ、また、血圧正常化作用、アルツハイマー型痴呆症の予防・改善、ボケ防止にも有効とされています。次に、発芽玄米の機能性について記します。
血中コレステロール低下作用:健康な女子大生12名を対象として、1日当たり市販の発芽玄米パック(白米:発芽玄米=1:1,200g)を2パック(発芽玄米として200g)、約10週間摂取させたところ、48日目には血清コレステロール値が11%減少した。しかし、通常の食事に戻したところ、1か月後には改善効果はなくなった。また、体脂肪率が20%以上の肥満で、30歳から65歳までの男性12名を対象として、発芽玄米飯を原則として朝食か夕食の1回以上8週間摂取させたところ、血中総コレステロール値は顕著に低下し、LDL(悪玉)コレステロール値も低下した。また、体重や体脂肪率などの減少が認められ、肥満解消に役だった。加えて、試験開始前、平均17%の被験者が、いらいら感、意欲減退、頭痛感、倦怠感などの自覚症状を訴えていたが8週間後消失していたなどが報告されました。血中コレステロール低下作用は胆汁酸(コレステロールを原料として作られる)の便中への排泄が促されることによって起きると考えられています。
血糖上昇抑制作用:健康な成人18名を対象として、糖質50g相当の白米飯、玄米飯、発芽玄米飯を摂取させたところ、発芽玄米飯の場合、白米飯に比べて血糖値およびインスリン値ともに低い値が得られた。また、健康な成人14名を対象として、発芽玄米飯および白米飯の摂取後、血糖上昇値(mg/dl)を測定したところ、発芽玄米飯は白米飯に比べて約40%低く、玄米飯と同様でした。さらに発芽玄米と白米を混合して炊飯した場合、その混合比に応じて血糖上昇値が低下することも確認されたなどが報告されました。
血圧上昇抑制作用:軽症高血圧であり、合併症のない男女18名を対象として、発芽玄米および白米を米飯として、360g/日を前・後期各12週間摂取させたところ、発芽玄米飯摂取期間における収縮期および拡張期血圧は摂取前に比べて低下したが、白米飯摂取期間の血圧は、摂取前後において変化が認められなかった。
 また、肥満傾向で高血圧の人が発芽玄米飯を長期間摂取すると収縮期血圧が正常値に近づくことが認められました。
アトピー性皮膚炎の改善:難治性アトピー性皮膚炎の食事療法に、発芽玄米を導入したところ、アトピーの症状を示す血液パラメーター(免疫グロブリン、乳酸脱水素酵素)が低下し、皮膚所見においても紅斑などの症状が改善された例が報告されました。
 以上のほか、発芽玄米の機能性として便秘解消や脳機能への影響などが指摘されています。
参考:①石渡健一:美味技術研究会誌 No.3.4 p.12-18(2003)
   ②吉川敏一・辻智子:医療従事者のための機能性食品ガイド p.64
   ③井原美香ら:第56回 日本栄養食糧学会 大会要旨集 p.241,2002
   ④岡田忠司ら:日本食品科学工学会誌 第47巻 第8号p.596(2000)
   ⑤益子研土ら:日本健康科学会誌 第17巻 第4号p.236(2001)など
追加:毎日食べるご飯から栄養成分や機能性成分を豊富に摂取できるので、発芽玄米はすばらしい食品です。 しかし、市販の発芽玄米は普通米に比べて2~3倍の値段です(2Kgで1,600円程度)。
 発芽玄米を自分で調製する方法は次のとおりです。
 ①夏期:水洗した玄米を底の平らな容器に入れ、玄米の表面から0.5cm程度の深さに水を入れ日向に2~3日       間放置します。この間、細菌の繁殖を避けるため、数回水を取り換えます。
 ②冬期:水洗した玄米を広口のポットに入れ、ポット内に温水を入れ水温を30℃に調整します。ポットの
      栓を密に閉め2~3日間放置します。この間、半日毎に温水を取り換えます。
 発芽玄米は白米と1:1に混ぜて普通に炊飯できます。自家製の発芽玄米は市販のものに比べて米粒に照りや 粘りがあり、歯ごたえもよく美味です。しかし、胃腸の弱い高齢者や幼児は毎日継続して食べない方がよいで
 しょう。

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2007/05/01

ソバの話

 ソバの原産地は中央アジア、中国などと諸説があります。日本へは縄文時代に渡来し、奈良時代には栽培されていました。米や麦はイネ科に属しますが、ソバはタデ科に属し非常に丈夫な作物で、やせ地や寒冷地でもよく生育します。しかも、ソバは50~70日という短い期間で収穫できるので、飢饉に備える作物として古くから重要視されてきました。
 ソバにはたんぱく質が12~14%含まれており、たんぱく質の栄養価を表す「たんぱく価」はソバ81,白米47,小麦72であり、ソバは白米や小麦よりも栄養価が高いことが分かります。また、糖の代謝を促進するB1,体内の過酸化脂質の分解を助けるB2,糖質・脂質・たんぱく質の代謝に必要なナイアシン、各種ミネラルなども豊富に含まれています。
 このように、ソバは栄養成分が豊富であることに加えて、ソバたんぱく質やルチン、カテキン類など機能性成分も豊富なことが明らかになっています。これらの機能性成分について次に記します。
1.ソバたんぱく質:ソバの可溶性たんぱく質(熱湯で抽出される「たんぱく質」)は、血中コレステロールや肝臓中のコレステロールの上昇を強く抑え、低下させる作用があります。また、血中の中性脂質を低下させる作用、体脂肪の蓄積を抑える作用、便秘改善作用なども認められています。
2.抗酸化成分:ソバにはフラボノイドの一種であるルチンのほか、茶葉に含まれているエピカテキン、エピカテキンガレートなどのカテキン類が含まれており、これらの成分には動脈硬化や脳血管障害、がんなど数多くの疾病に関与している活性酸素を除去する抗酸化作用、血圧や血糖降下作用などが見いだされています。
 ルチンには毛細血管壁を強める作用があり、この作用はビタミンCと同時に摂取すると増大します。ソバを食べるときは、ビタミンCを多く含む野菜や果物と一緒に食べるとよいでしょう。毛細血管を強化するには、1日に20~50ミリグラムのルチンが必要とされています。普通種のソバ粉1グラムにルチンが約1ミリグラム含まれているので、約20~50グラムのソバを食べればよいことになります。一食のソバで十分量のルチンが摂取できます。
 現在、ルチンは高血圧症や眼底出血などの治療薬として用いられています。
 このように、ソバは血中コレステロールの上昇を抑え、血管を強化し、体脂肪の蓄積を抑えるという3つの作用で動脈硬化や脳溢血を予防します。
3.ソバポリフェノール:肝臓がんになった実験動物を用いて、ソバポリフェノールによる、がん抑制効果が試験された結果、肝臓がんの発生率は29%抑えられ、肺転移の発生率は50%抑えられたと報告されています。ソバポリフェノールによって、がん細胞が自滅するアポトーシスが起こったのでないかと考えられています。
 なお、そば湯にはビタミンB類やソバたんぱく質のほか、ルチンの一部も溶けています。そば湯は栄養の面から非常に重要です。また、ソバにはアレルゲンとなるたんぱく質が含まれていますので、そばアレルギーの方は注意が必要です。
参考:①食の科学 2002.11(no.297)p.12;②食料と安全 平成18年第8巻第12号p.45
    ③ソバの科学 p.225 新潮選書など。

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2007/04/01

農薬の役割 7

 一方、世界の穀物生産量は約18.8億トン(1996年)[米5.62259、小麦5.84874、大麦1.55261、とうもろこし
5.76821、各億トン]です。病害虫や雑草などの被害による損失を考慮すると、潜在的な穀物生産量は約32億トン
です。現在でも約13億トンの穀物が病害虫などの被害によって失われていることになります。
 世界の慢性的な栄養不足人口を解消するには、この損失量の25分の一あれば足ります。農作物に対する病害
虫や雑草の防除がいかに重要であるかお分かりになったと思います。
 これからも人口の増大は続きます。その上、多くの人たちは今まで以上に肉類や卵などが豊富な食生活を求め
るようになるでしょう。しかも、今後はこのような食料需要の増大を耕地の拡大によって解決することができなくな
ります。
 昔、イギリスの政治哲学者が「地球上の人口が過剰になると、すべての対策の中で最期の救済は戦争であ
る。」と言ったそうです。20世紀は戦争に次ぐ戦争の時代でした。人口過剰に伴う食糧問題を戦争によって解決す
るのでは困ります。
 人類を飢餓から救うためには人口問題への取り組みと併せて、農業の生産性を向上させなければなりません。
 そのためには、将来、農薬はますます重要な農業資材になると思います。
                                                  【完】
参考:鈴木啓介著「安全食品 農薬を知ろう!」p.151 文芸社
追加:飢餓人口を半減させるという「ローマ宣言」の目標には、ほど遠いと報道されました。
     (平成17年10月12日付け、読売新聞)

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2007/03/13

イチゴの大量廃棄

 今年の2月、真っ赤に熟したイチゴが大量に廃棄される映像がテレビで映し出され驚きました。本当にもったいない。イチゴに残留している農薬が残留基準をオーバーしたからだそうです。あんなに美味しそうなイチゴを大量に捨てなければならないとは、農薬は、やはり凄く「危険なもの」、「怖いもの」と多くの人たちは思ったことでしょう。
 問題の農薬は「ホスチアゼート」という有機リン殺虫剤で、この農薬がイチゴに残留基準の約9倍残留していました。この農薬は土壌中の害虫を駆除するため、いろいろな作物に使用されます。この農薬は大規模に残留実態が調査されたことがあります(参考資料1)。にんじん、たまねぎ、ほうれんそう、イチゴなどを含む96種類の農産物1803点が調査されたが、この農薬が検出されたのは2点のみでした。ホスチアゼートはほとんど残留しないのです。残留基準のオーバーは農薬を不適正に使用したのが原因でした。
 使用回数1回のところ2回使用した;イチゴの定植前に使用するところ定植3か月後に使用したなど、いい加減な使われ方がされました(参考資料2)。それでは問題のイチゴを食べたとき、健康を害するのでしょうか?
 農薬が残留した農産物を一生涯にわたって毎日食べ続けると、どのような影響が出るのか、胎児へどのような影響を及ぼすのか、孫子の代になってどのような影響をもたらすのか、また、どの程度の農薬量なら悪影響をもたらさないかなど、ラット、マウス、犬などの数千匹という膨大な数の実験動物を犠牲にして、約20種類の毒性検査が農薬に対して実施されています。これらの結果を判断して、毒性が認められない農薬の最大量(無毒性量)が定められ、この無毒性量に安全係数(通常1/100、時には1/1000)をかけて、一日摂取許容量が算出されます。
 この許容量は一般に「健康を害することなく、一生涯にわたり毎日摂取することができる農薬量」とされ、残留農薬を評価するときの基礎として、国際的に広く採用されています(参考資料3 p.160&172)。
 この許容量から考えて、成人が問題のイチゴを1/3パック程度、一生涯にわたり毎日食べ続けても健康を害することがないことが分かりました(参考資料4)。しかし、イチゴを一生涯にわたり毎日食べ続けることはあり得ません。しかも、一般の農薬でも農産物中に残留する割合は0.5%程度と極めて低く(参考資料1)、特に、この農薬では上述のようにほとんど残留しません。ですから、問題のイチゴには残留していても、明日のイチゴ、明後日のイチゴ、その次の日のイチゴには、この農薬は残留しないと予想されます。
 これらのことから、問題のイチゴをごく普通に食べても健康を害することはないと考えられます。
 それではなぜ、イチゴを大量に廃棄するのでしょうか? 
 食品衛生法によって農薬の残留基準をオーバーした農産物は不良品とされ、どんなに美味しそうなイチゴでも廃棄せざるを得ないのです。
 次に、食塩について考えてみます(参考資料3 p.259)。私たちは食塩を1日に約12.9g摂取しています。食塩の経口致死量は50~150gですから、毎日食べている量の約10倍量をたった一度食べるだけで、ヒトは中毒死することになります。このため、砂糖の代わりに間違って食塩を入れたミルクを飲み、あるいは多量の食塩を加えた料理を食べて中毒死したケースさえもあります。
 しかし、イカの塩辛や塩漬け野菜は廃棄するどころか、私たちにとって大切な食品です。
 残留基準をオーバーしたイチゴは廃棄するが、イカの塩辛や塩漬け野菜は廃棄しません。
 ヒトは塩がなければ生きられません。農薬はなくても生きられます。野菜が病害虫によって加害されれば虫食い野菜を食べればよい。米が全滅しても芋を食べればよいのです。病害虫によって食料が全滅し、江戸時代のような飢饉で多くのヒトが餓死するようにでもなれば、残留基準はもう少し緩やかになるに違いありません。
 現在、農薬の残留基準が極めて安全側で厳しく設定されているのは、食料が豊富な時代だからかもしれません。
参考資料
1)平成16年版:食品中の残留農薬(CD-ROM)
2)栃木県<県政広報>記者発表記事 平成19年2月15日
3)鈴木啓介著「安全食品 農薬を知ろう!」 文芸社
4)栃木県<県政広報>記者発表記事 平成19年2月1日

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2007/03/06

ブルーベリーの話

 ブルーベリーはツツジ科スノキ属で、種にはローブッシュブルーベリー、ハイブッシュブルーベリー、ビルベリーなどがあります。主として北半球に広く自生しており、古くから野生の実を摘んでそのまま食べたり、自家加工用に貯蔵して利用されてきました。日本に導入されたのは1950年頃です。栽培されるようになったのは70年以降ですが、80年代に入ってから急激に生産が増え、現在では全国的に栽培されています。
 ブルーベリーには動脈硬化やがんなどを誘引する活性酸素を消去する抗酸化力があります。米国の農務省が43種類の野菜や果物の抗酸化力を調べた結果、抗酸化力はブルーベリー>にんにく>いちご>ほうれん草>ブロッコリ->ぶどうの順であったと報告されています。ブルーベリーから抽出したアントシアニン色素やエキス分はイタリアやフランスでは医薬品として、日本や米国ではサプリメントとして利用されています。
眼精疲労、夜間視力、近視などの改善・予防:第二次世界大戦中、ブルーベリーを好んで食べていたイギリスのパイロットが、夜間飛行中「薄明かりの中で物がはっきり見えた」と証言したことから、ブルーベリーが「目によい果物」であることが注目されました。眼精疲労を訴える患者にブルーベリーエキスを1日に62.5mg投与したところ、眼精疲労の改善度が7割以上向上した。;視力回復訓練をするように薦められていた小学生63名に、ブルーベリーに豊富に含まれているアントシアニンを1日37.5mg、8週間投与したところ、目の疲労感が減少し、視力が改善した。;糖尿病性網膜症の患者にビルベリーエキス(480mg/日 )を6カ月間投与したところ、網膜出血が顕著に改善した。;近視の患者にビルベリーエキス(354mg/日)とβ-カロテン、ビタミンEを6カ月間投与したところ、視野が改善したなどが報告されています。
 また、眼科医・葉山先生が30~100人を対象として、アントシアニン含有量25%のサプリメントを約1カ月間投与したところ、眼精疲労ではほぼ100%の効果;近視では7割の改善;遠視でもほぼ100%の効果があり、老眼にも有効性が認められました。
脳の老化回復:高齢のラットをブルーベリー添加の餌で、8週間飼育した後、棒歩きテストを行ったところ、老化に伴って起こる運動能力、平衡感覚などの低下が抑制されました。また、高齢のラットを①対象区、②ブルーベリー・エキス2%添加区で別々に飼育した後、厚板歩行テスト、モリス水迷路テストを行ったところ、添加区のラットは老化に伴う運動能力と認知機能の低下が回復しました。最近の研究から、ブルーベリーエキスを長時間投与したラットでは、老化に伴う脳神経機能の障害を顕著に抑制することが明らかとなりました。このメカニズムとして、老化に伴なって増加する、ある種のたんぱく質(NF-KappaB)が減少することが分かりました。これらのほか、ブルーベリーの中枢神経に対する優れた効果が数多く報告されています。最近、アントシアニン類が脳組織内に見いだされたことから、ブルーベリーのアントシアニン類が脳神経に直接作用して優れた効果を発揮するものと考えられています。
脳梗塞の発作軽減:ラットにブルーベリーを8週間続けて投与したところ、脳への血液の流れを止めたときに起きる脳障害が軽減されました。このことから、ブルーベリーは脳への血液循環の異常で起きる脳卒中を予防できると期待されています。
抗がん作用:血液のがんである白血病細胞と大腸がん細胞の培養液に、それぞれ各ベリー類の成分を加え培養したところ、すべてのベリー類においてがん細胞の増殖が抑えられ、特にビルベリーの場合には高い効果が認められました。また、別の論文でもブルーベリーは正常細胞のがん化予防およびがん細胞の消滅にはっきりとした効果が認められたと記されています。
 以上のほか、ブルーベリーにはピロリ菌増殖の阻害作用、糖尿病の予防、成人女性の脚のむくみ改善効果などが挙げられています。
参考:①食品工業Vol.49(2)p.20(2006);②農林水産省果樹花き課:果物&健康News Vol.53;54
    ③(財)食生活情報サービスセンター:平成17年度 野菜等健康機能調査部会報告書
    ④葉山:ブルーベリーは本当に目に効く! 現代書林
    ⑤Joseph JAら:J.Neurosci.1999;19(18):8114-8121
    ⑥Goyarzu Pら:Nutr.Neurosci.2004;7(2):75-83、など。

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2007/02/01

農薬の役割 6

 世界人口白書によると、1999年10月、世界の人口は60億人を突破しました。1960年の30億人から40年間で倍増したことになります。世界の人口は毎年7560万人ずつ増加しています。2050年には89億人になると予想されています。一方、耕地面積は人口の増加に比べると余り拡大していません。この40年間で約10パーセントしか増えていません。この40年間は人口のみが爆発的に増加したので、大変な食料不足になるところでした。
 しかし、幸いなことに1960年代中頃から世界の農業技術が著しく進歩し、あの有名な「緑の革命」が始まったのです。すなはち、1960年代に茎が短く背の低い「こびと小麦」と呼ばれる小麦の高収量品種が作られ、メキシコにおける小麦の生産量が3倍に増加しました。次いで、フィリッピンの国際稲作研究所でミラクル・ライス(奇跡のコメ)と呼ばれる米の高収量品種が作られました。その結果、アジアでは米の反収が1986~90年代には1961~65年代に比べて約1.6倍に増加し、特にインドネシアでは約2.4倍に増加しました。インドネシアやインドは長い間穀物を輸入していましたが、1985年にはアフリカ諸国に穀物を輸出できるようになりました。
 このように発展途上国において農業が大きく変革し農業の生産性が高まったため、上述した人口増のもとでも食料を何とか賄うことができました。それにも拘わらず、現在でも世界には8億4,000万人(1990~1992年の平均)の慢性的な栄養不足の人たちがいます。
 このような状況を考慮して、1996年、国連食料農業機関(FAO)は世界食料サミットで2015年までには世界の栄養不足人口を半減させるという「ローマ宣言」を採択しました。しかし、世界の1人当たりの穀物生産量の伸びは1984年以降鈍化しており、輸出可能な穀物の余剰分も1980年以降ほとんど増えていません。1994年、国際稲作研究所は、「アジアにおける米の生産量は人口増などによる消費増に追いつけず、21世紀初頭にはアジアの多くの国々が米不足に陥るおそれが強い」と警告しています。
 FAOによれば、栄養不足の人々とは「1年間平均の食料消費水準が体重を維持し軽い活動を支えるのに必要な水準以下と推定される人々」とされています。この水準は基礎代謝率の1.54倍に設定されており、アジアでは平均で1人1日1,760キロカロリーです。
 現在の栄養不足人口を解消するため、1人1日500キロカロリーを追加し供給するには、穀物にして1日150gが必要となります。
 年間合計では、150g×365日×8億4,000万人≒4,600万トン の穀物が必要です。
 この程度の穀物は先進諸国の人たちが肉の消費量を少し減らすか、あるいは各国が実施している減反政策を少し緩和すれば確保できます。しかし、前者は個人の食の問題です。後者は余剰農産物が輸出できなければ、減反政策を緩和した当事国がコストを負担しなくてはなりません。いずれの方法もその実施にはかなりの困難が伴います。
「農薬の役割 7」に続きます。
参考:鈴木啓介著「安全食品 農薬を知ろう!」p.151 文芸社

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2007/01/01

カボチャの話

 カボチャはウリ科に属する一年生草本で、世界各地で栽培されている代表的な野菜です。現在、日本で栽培されているカボチャには日本カボチャ、西洋カボチャなどがありますが、スーパーで販売されているカボチャはほとんどが西洋カボチャです。西洋カボチャの原産地は南アメリカのアンデス高原で、日本には明治時代初期に持ち込まれました。当初は冷涼地向きの品種が多く、北海道などで定着し「まさかり」カボチャなどができました。現在は暖地でも栽培できるように品種改良されています。昔から「カボチャを食べると中風(脳卒中)にならない」といわれています。カボチャは高血圧と密接に関係する動脈硬化、心臓病、脳血管疾患並びに、がんなどに対して予防・改善作用があります。
女性を守る美容食:カボチャはカロリーがご飯の1/2程度でダイエットに適しています。また、カボチャにはビタミン類(A,C,Eなど)や食物繊維がバランスよく含まれており、特に注目されるのがβ-カロテンです。β-カロテンはみかんの4倍、トマトの7倍以上も含まれており、抗酸化作用があり、動脈硬化やがんなどを誘因する活性酸素を消去する作用があります。β-カロテンを多く摂取すると、肺ガン、胃がん、子宮頸がんの発生率が少ないと報告されています。β-カロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚のかさつき、肌荒れを予防します。ビタミンCもみかんと同じくらい含まれており、免疫力を高めたり、しみ、そばかすを防ぎ、発がん物質の生成を抑えます。また、ビタミンEはうなぎのかば焼きと同じくらい含まれており、「若返りビタミン」と呼ばれ、血行をよくし動脈硬化を予防し、高血圧、心臓病、脳卒中なども防ぐとともに、冷え症、しみ、そばかすなどを予防します。食物繊維は大根の葉(生)と同じくらい含まれており、便通をスムーズにしてがんを予防するだけでなく、便秘からくる肌荒れも防ぎます。
 このように、カボチャは栄養たっぷりな野菜です。特にダイエット、冷え症、しみ、そばかす、便秘、肌荒れなど女性が気にかける問題を予防してくれる美容食です。
高血圧・心筋梗塞・脳卒中の予防:高血圧は血管の表面を傷つけ動脈硬化をもたらし、血液の流れを悪くします。その結果、血圧はさらに高くなり、動脈硬化が一層進むという悪循環が起こります。しかも動脈硬化が進めば、狭心症や心筋梗塞、脳卒中などが発症します。この悪循環を絶つためには血圧を下げなければなりません。降圧薬として頻繁に用いられるACE阻害薬は、血管を強く収縮して血圧を上昇させる物質(アンジオテンシンⅡ)の生成を抑えます。このACE阻害作用は野菜や果物にも広く認められ、カボチャの作用は特に優れています。また、食塩(ナトリウム)の過剰摂取は高血圧の原因となりますが、カボチャに豊富に含まれているカリウムが体内の余分なナトリウムを排出してくれます。さらに、カボチャにはβ-カロテンが多く含まれていますが、これも動脈硬化を防ぎますので、カボチャは高血圧を予防するために大変有効です。
 このように、カボチャはすばらしい血圧降下食品であり、高血圧や心筋梗塞、脳卒中の予防に役立ちます。また、カボチャとたまねぎを組み合わせると、一層優れた血圧降下作用が認められます。このことは動物試験や、高血圧患者を対象とした臨床試験によって検証されています。なお、カボチャは栄養価の高い野菜ですが、たんぱく質と脂質が不足しているので、肉や牛乳、チーズなどと一緒に食べるのがよいでしょう。
参考:①斉藤・宮尾著「カボチャで血圧が下がった!」2004年 (株)ペガサス
    ②斉藤ら:臨床医薬 第20巻第5号 2004
    ③津志田藤二郎ほか編「地域農産物の品質・機能性成分総覧」p.186 サイエンスフォーラム(2000)など

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2006/12/01

農薬の役割 5

 「米」という字は米の収穫までに八十八回も手間が掛かることを意味しているそうです。暑い盛りの草取りは腰をかがめ稲の葉先で頬を傷つけながら作業する過酷な労働です。この草刈りから初めて開放してくれたのが、1950年から使われ始めた2,4-PA除草剤(2,4-D剤)です。
 水田面積10アールの除草時間の年間推移は、農薬が未だ使用されなかった1949年には約51時間、1970年には13時間、1992年には2.0時間と、除草時間は10年ごとに半減し、40年間に25分の1となるような激減ぶりです。近年、入浴剤に似た錠剤を田の畦から10アール当たり10~20個投げ込むだけで除草できる農薬が用いられています。投げ込まれた農薬は水田の水に拡散し、除草剤としての効果が発揮できるように作られています。
 さらに、田植機に農薬容器を付けて、田植えと同時に除草剤を散布する「田植え同時散布法」も開発されており、除草時間は限りなくゼロに近づいています。
 炎天下で腰を曲げて田の中を這い回って草取りしていた時代を思うと隔世の感があります。
 また、農薬の有効成分は農業以外の分野、たとえば、ハエ、蚊、ゴキブリ、シロアリなどの駆除にも用いられています。終戦直後、私たちは伝染病を媒介するシラミには大いに悩まされました。学校ではDDTが頭から振りかけられ、背中にも入れられました。年に一度の大掃除の後には、どこの家庭でも畳の下の床一面にDDTを撒いたものです。これによって1年間はノミやシラミに苦しめられずに過ごせました。当時、発しんチフスの発病者が200万人見込まれていたそうですが、3万人程度に抑えられたのはDDTが用いられたからといわれています。
 また、スリランカにおけるマラリア発症報告件数の年間推移は、DDT使用前には280万人でした。1962年および1963年にDDTが大規模に使用されてからは発症報告件数が20~30人に激減しました。しかし、1964年、DDTの使用が中止されると年ごとに発症報告件数が激増し、1968年には100万人、1969年には250万人にも達しました。
 DDTの優れた殺虫効力を見いだしたポール・ミュラー博士はマラリア撲滅の功績によってノーベル賞を受けました。
 現在でもマラリアによる死者は毎年約270万人いるといわれています。多くは途上国の子どもたちです。環境団体などはDDTの全面廃止を叫んでいますが、多くの科学者や医者は途上国におけるマラリア対策のためにDDTの存続を求めています。
 このように、現在、農薬は農作物の減収防止、収量の安定および品質の向上に欠くことができません。また、農薬は農作業の労力を著しく軽減しています。さらに、農業以外の分野でも人々が健康で衛生的な生活を営むために大きく寄与しています。
「農薬の役割 6」に続きます。
参考:鈴木啓介著「安全食品 農薬を知ろう!」p.146 文芸社

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2006/11/01

にんにくの話

 にんにくは原産地が中央アジアのキルギス地方で、東南アジアや地中海地方に伝わったといわれています。日本には朝鮮半島、中国大陸を経て奈良時代に入ってきたと考えられています。エジプトでは紀元前からピラミッド建設に従事する労働者にスタミナ源として食べさせたり、怪我をしたときにはその絞り汁を消毒にも使っていたようです。日本の仏教には「葷酒山門に入ることを許さず」という戒めがありました。にんにくのような精のつきすぎる食べものを食べたり、飲酒することは山門における修行の妨げになると禁止されたのです。また、日本では赤痢の特効薬としてにんにくが利用されたといわれています。インド古来の伝統療法では、にんにくが鼻風邪、食欲不振、体力減退、胃腸障害などに効くとされていました。東ヨーロッパではごく最近まで高血圧症の治療に、にんにくが使用されていました。近年、にんにくの多様な薬効が科学的に明らかになってきました。
 にんにくの機能性について次に記します。
スタミナ増強効果
①にんにくの中には特有の含硫物質(硫黄を含んだ物質)があります。にんにくが切り刻まれると出てくる酵素によって、この含硫物質はアリシンという臭い成分に変化します。このアリシンがビタミンB1と結合すると、ビタミンB1の吸収をよくし持続性も高めます。その結果、エネルギー代謝を高め、疲労回復の効果を発揮します。
②交感神経末梢から分泌されるホルモンであるノルアドレナリンの分泌を促し、脂肪を分解し、エネルギー代謝を促進します。
③男性ホルモンであるテストステロンの分泌を促し、元気で、ヤル気を起こさせます。
生活習慣病予防
①コレステロールの低下:食事の時、バターを摂ると血液中のコレステロール濃度は食後数時間で上昇します。しかし、にんにく油を一緒に摂るとコレステロール濃度は10から15%下がり、バターを摂らない場合の値よりも下回りました。にんにくはコレステロールの代謝を促進するだけでなく、この合成を抑える作用も報告されています。
②血栓形成の抑制:脳血管障害があり、血小板が凝集している60人に対して1日800mgのにんにく粉末を4週間与えたところ、血液中の血小板凝縮が10.3%減少しました。にんにく粉末を摂取すると血液の流れがよくなり(血液サラサラ)、血液中の凝固塊を取り除く働きが向上します。
③血圧上昇の抑制:ドイツで行われた調査では、高血圧症患者に対して、にんにく錠剤を与えたところ、収縮期血圧176、拡張期血圧99であったのが、収縮期血圧164、拡張期血圧88と下がり、緩やかに血圧を下げることができました。
感染症予防
 にんにくはブドウ球菌、大腸菌、連鎖球菌、ビブリオなど非常に多くの細菌に対して殺菌効果があり、しかも、耐性がほとんど生じないといわれています。にんにくを食べると腸内細菌は急激に変化し、悪玉菌が姿を消す;咳や気管支炎など胸の病気の治療薬として世界中に知られていた;慢性気管支炎などに苦しんでいる子どもが、すばらしい回復を見せた;ペニシリンが使われる以前は、傷の手当てにも用いられ傷口を消毒して化膿を防いだなど、にんにくによる感染症予防効果が書物に数多く記されています。
発がん予防
 アメリカにおける、がん予防に有利な食品を探す研究の中で、にんにくは最も重要性が高いとして位置づけられています。また、アイオワ州で41,837人を対象とした5年間の疫学調査で、にんにくを多く食べた人は結腸がんのリスクが35%低下したという報告もあります。
 なお、にんにくは多量食べると胃を荒らします。特に、のぼせ気味の人や胃潰瘍の人は避けてください。また、抗凝血剤を服用している人は医師に相談する必要があります。
参考:①医療従事者のための機能性食品ガイドp.60 講談社;②ニンニクと健康p.73 昌文社
    ③Am J Epidemiol 139(1)1-15(1994) など。 

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2006/10/01

農薬の役割 4

 農薬を散布しない場合、どの程度収穫できるかを知ることは重要です。水稲で試験したところ、試験期間10年間のうち、農薬散布区に対する無散布区の収率が90%以上あった年が3カ年あり、収率が99.6%の年もありました。しかし、15%以下の年も3カ年あり、2%しか穫れない年もありました。10年間の平均収量は62.6%でした。
 このように、農薬を散布しない場合でもかなり収穫できる年もありますが、長い年月における平均収量はかなり減少します。これでは農業はやっていけません。
 ある年にはインフルエンザが大流行し風邪薬を飲みますが、年によってはインフルエンザがほとんど流行しないことを私たちは知っています。病害虫のような細菌や昆虫の発生には年による流行があるのです。病害虫が発生した年には農薬を散布しないと農作物が全滅することがあります。
 次に、いろいろな種類の農作物の場合はどうでしょうか?1991~1992年度の2カ年間、農業試験場や農業改良普及所など全国69カ所の試験機関で、いろいろな種類の農作物を用いて試験が実施されました。無農薬栽培では、もも、りんご、キャベツ、キュウリの減収が目立っていました。
 人が生で食べて美味しい農作物を病害虫もよく知っています。美味しい農作物はより大きな被害を受けます。
 特に、ももの場合、無農薬栽培では全く収穫できませんでした。ももが病害虫の被害を受けやすいことは私自身も経験しています。私ごとで恐縮ですが、わが家にももの樹が2本ありました。収穫時期には大きさや形のよいももがバケツに何杯も穫れました。終戦直後であったため、有機合成農薬はありませんでした。折角、穫れたももには黒色や褐色の斑点、昆虫による食害の傷が無数にあり、まともなももは一つもありませんでした。当時は食糧不足の時代でしたので、それらの斑点や傷口を取り除いて、煮て食べた経験があります。
 りんごの無農薬栽培でも病害虫による被害が著しく、収量、品質ともに極端に低下し、販売できるものはほとんど穫れませんでした。この無農薬栽培の試験を見学した一般消費者もこの惨状には驚いていたようです。
 さらに、りんごの樹へも悪影響を及ぼし、無農薬で栽培した翌年は通常の農薬散布しても満足な収穫は得られませんでした。
 わが国の果実は手数をかけて育てられ外観も食味もすぐれ、グルメ時代に適した、まさに芸術品のような品質です。そのため病害虫などの外敵に対する抵抗力が弱いのです。
 キャベツの無農薬栽培では、春期~秋期に収穫するものは70%も減収しました。キャベツのような葉菜類では大きな被害を受けやすいのです。
 キュウリの無農薬栽培では病害虫による被害を受けると果実が大きく育ちにくく、また、アブラムシ類の糞などが葉や果実を汚染し、ウイルス病が伝搬されます。
 このように、農薬散布区に対する無散布区の収率は農作物の種類によっても大きく異なりますが、農薬を散布しないと収量がかなり減少します。特に、ももやりんごは収穫が壊滅的に減少します。
「農薬の役割 5」に続きます。
参考:鈴木啓介著「安全食品 農薬を知ろう!」p.146 文芸社

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2006/09/02

りんごの話

 りんごは中央アジアのコーカサス山脈と、中国の天山山脈を中心とした山岳地帯が原産地であると考えられており、約4,000年前には栽培されていたと推定されています。
 現在、私たちが食べているりんごは、明治時代の初期にアメリカから導入されました。「1日1個のりんごは医者いらず」といわれるように、りんごには抗がん作用、心臓病・脳卒中の予防、アレルギー予防のほか、便秘の改善やダイエットにも有効であるなど多くの健康維持機能が報告されています。これらの機能について次に記します。
抗がん作用:フィンランドで25年間、疫学調査が実施された結果、りんごを多く食べている人は、食べていない人に比べて肺がんになるリスクが58%減少すると報告されました。野菜のうち最も効果があると考えられている、たまねぎよりも効果があることが分かりました。また、ウルグアイで241例を対象に疫学調査が実施された結果、りんごを多く食べている人は直腸がんや結腸がんになるリスクが60%減少することも報告されました。
 動物実験でもりんごのペクチンが結腸がんに有効であることが裏付けられました。
心臓病・脳卒中の予防:高脂血症になると、血中の脂質が過剰となり動脈硬化を引き起こして心臓病や脳卒中などの生活習慣病になるおそれがあります。高脂血症の患者がりんごのペクチンを1日15グラム摂取すると、血液中の総コレステロールや中性脂肪が低下し、善玉コレステロールが増加すると報告されました。約1万人の男女を対象に、28年間、疫学調査が実施された結果、りんごを多く食べている人は脳卒中になるリスクが、男性では41%、女性では39%減少すると報告されました。この減少効果はワイン、お茶、たまねぎよりも高いとされています。また、青森県と秋田県に住む約1万8000人を対象に疫学調査が実施された結果、りんご地帯である青森県津軽地方の住民は血圧が低く、脳卒中による死亡率が低いことも明らかになりました。
アレルギーの予防:イギリスで男性5,582人、女性5,770人を対象に気管支ぜん息の症状と生鮮果実の摂取量が調査された結果、生鮮果実を食べているグループでは、食べていないグループに比べて気管支ぜん息のあえぎ症状の発生回数や発声障害発作が軽減されると報告されました。そこで、気管支ぜん息患者1,471人と健常者2,000人について調査した結果、りんごを1週間に2回以上食べている人は気管支ぜん息になるリスクが32%減少することが明らかになりました。この軽減効果はりんごのペクチンによるものと考えられています。
便秘の改善:りんごには食物繊維のペクチンが豊富に含まれています。ペクチンは水を含むとゼリー状になるので、便秘の際、水分を失った便を軟らかくして排便を促します。また、りんごのペクチンは腸内で乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を増やし、悪玉菌を消失もしくは減少させ、腸内環境を整えます。
ダイエットに有効:りんご、馬鈴薯、パン、チャパテイなどを摂食後、血糖値と満腹度が調査された結果、りんごの場合には血糖値の上昇が少なく、食後の満足感も持続することが明らかになりました。りんごは水分と食物繊維が多く低カロリーのうえ、かみごたえがあるので、少量でも満腹感が得られ、ダイエットに適しているといえます。
追加:65歳以上の男女1,836人を7~9年間、疫学調査した結果、コップ1杯(約240ml)の果物・野菜ジュースを週に最低3回飲む人は、1回未満の人に比べてアルツハイマー病の発症リスクが73%低いことが分かりました。複数の実験結果も果物の摂取で、この病気を予防できると示唆しています。
参考:①食料と安全 第9巻3号p.41
    ②農林水産省果樹花き課:果物&健康NEWS Vol.第32回、第39回、第117回 など多数。

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2006/08/01

農薬の役割 3

 当時の日本の人口2,692万人中、飢人数は265万人、餓死者数は97万人(徳川実記)といわれています。これらを現在の人口に換算すると、飢人数は1,253万人、餓死者数は459万人となります。この餓死者数は第二次世界大戦における日本人の戦没者数約310万人をはるかに上回り、まさに驚異的な数字です。
 福岡市博多では当時の人口1万9516人の約3分の1の6,000人が餓死しました。親が子を喰い、子が親を喰うほどの凄惨な状況であっようです。この世ながらの地獄を出現したのです。
 博多区中洲にある「飢え人地蔵」では、毎年8月23、24日に施餓鬼供養が行われています。
 普段の日でも線香、供花が絶えません。私は二度お参りしましたが、一度目は女子高校生、二度目は若い数人の男性が地蔵様に手を合わせていました。
 餓死者の霊を慰めるため、「飢え人地蔵」のほか、「餓死亡霊塔」、「おむすび地蔵」などの供養塔や地蔵が各地に建てられ、それらが今でも現存しています。
 このような大飢饉は日本だけではありません。1845年から48年にかけてアイルランド国民の主食である馬鈴薯に「疫病」が大流行し収穫が激減し、大飢饉となり、餓死したり栄養失調のため種々な病気が発生し、多くの人たちが死亡しました。当時の人口800万人のうち約150万人が餓死または飢餓による病気のために死亡し、約160万人がアメリカやイングランドへ移民したといわれています。アメリカに移民した人たちは「ポテト移民」と呼ばれ、この中にケネデイやレーガン元大統領などの祖先が含まれていたことは有名です。4、5年前、たけしの万物創世記でこのアイルランドの大飢饉が紹介されていました。
 このように、私たちの先祖は長い間病害虫に苦しめられ続けてきました。
 「農薬の役割 4」に続きます。

参考:「農薬の役割 2」と同じ
 

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2006/07/01

大豆の話

 大豆は原産地が中国の東北部といわれ、4000~5000年前には既に栽培されていたようです。日本には弥生時代に稲作と一緒に入ってきたと考えられています。大豆(乾燥)にはたんぱく質が35%も含まれており、しかも、大豆たんぱく質は必須アミノ酸のバランスがよいため、「畑の肉」と呼ばれています。また、玄米や小麦(玄穀)に比べて、カロチン、ビタミンB1、B2、B6、E、K、葉酸などビタミン類がかなり多く含まれ、カリウム、カルシウム、リン、鉄などミネラル類も豊富です。
 このように、大豆は栄養的に非常にすぐれた食品ですが、最近では健康を維持し、疾病を予防・改善する機能性成分に関心が集まっています。大豆たんぱく質の血中コレステロール低下作用;大豆オリゴ糖による腸内ビフィズス菌の増加効果、大豆イソフラボンの女性ホルモン様作用、納豆としてのビタミンk2の骨粗しょう症予防作用などが認められています。これらの成分を含む食品は特定保健用食品として、数々の商品が販売され、現在、大豆は「畑の肉」から「機能性成分の宝庫」として期待されています。
 特に重要なイソフラボンおよびナットウキナーゼの機能性について次に記します。
イソフラボン ①骨粗しょう症予防作用:女性は更年期になると、骨からカルシウムが溶け出し骨粗しょう症のリスクが高まります。大豆にはイソフラボンという、女性ホルモン様の物質が含まれています。閉経後女性478名を対象とした疫学調査の結果、大豆製品を多く食べると骨密度の低下を防ぐのに有効であると報告されました。
②更年期障害の軽減:35~54歳の女性1106人を対象に6年間調査した結果、大豆製品を多く食べている人は「のぼせ」の出現が少ない。また、別の調査でも大豆イソフラボンの摂取が多い人たちは「動悸」、「腰痛」の程度が軽いと報告されました。
③がん抑制作用:大豆製品を常食としている東南アジアの国々には、欧米諸国と比較して乳がんが少ないという疫学調査の結果が注目されています。厚生労働省研究班が1990年から10年間、約2万人の女性を対象に調査した結果、大豆製品を多く食べる人たちは乳がんの発症率が少なかったと報道されました。また、日本で前立腺がんの死亡率が低いのも大豆製品を多く食べているからといわれています。
④高血圧・心筋梗塞予防:イソフラボンは悪玉コレステロールを減らし、血液を流れやすくして血圧を下げるといわれています。更年期の女性が大豆食を3週間摂ったところ、収縮期血圧が低くなり、コレステロール値も低くなったと記されています。イソフラボンは高血圧や心筋梗塞などの生活習慣病にも効果があることが明らかにされています。
 なお、イソフラボンをサプリメントで追加摂取する場合には目安として1日30mg以下とし、妊婦や小児は摂取しないように摂りすぎに注意します。
ナットウキナーゼ 納豆の成分ナットウキナーゼは心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす血栓を溶かす作用があります。血栓は夜中から朝にかけてできやすいので、納豆は夕食に摂るとよいでしょう。
 大豆はアレルゲン物質を含むので、アトピー性皮膚炎やぜん息の人は大豆製品を摂る際に注意が必要であるといわれています。
参考:①医療従事者のための機能性食品ガイドp.306 講談社
    ②Am J Epidemiol 153(8)790-793(2001) など、多数

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2006/06/02

農薬の役割 2

 わが国には古くから人が死ぬと虫になるという宗教的な考えがありました。映画「ホタル」にも沖縄の海に散った特攻兵がホタルになって戻ってくると言い残して特攻基地・知覧を飛び立つシーンがありました。虫となった死者の霊を慰めなければ虫が異常発生し、農作物に大きな被害を及ぼすと昔の人は考えました。
 江戸時代には水田に発生した稲虫(稲の害虫:ウンカ)を村境の川や海まで送り出し、虫の霊を鎮めるという「虫送り」の行事が、五穀豊穣を願う村人たちによって全国的に行われました。
 日が暮れると村人たちが集まって、わら人形を先頭にして、紙旗を持ち松明を炊き、カネを鳴らし、太鼓を打って田の畦を練り歩き「虫送り」を行ったと伝えられています。
 また、斉藤実盛が源平の乱で源義仲の家臣と戦い、稲株につまずき討ち取られ悲壮な最期を遂げ、実盛虫(ウンカ)になったと伝えられています。それ以来、実盛公の怨霊を鎮めるため実盛虫を弔い送る「実盛送り」が九州各地で行われるようになりました。このほか、神社には蟲除大菩薩が祀られたり、除虫祈願の絵馬が掲げられたり、蝗除札(蝗:ウンカ類)、昆虫消除札などのお札が田圃に立てられたり、神社の砂が散虫粉として田圃に撒かれるなどの呪いも行われました。時には、大きな草履を担いで行列を作って歩き、巨人の存在とその威力によって悪霊悪虫を追い払うという「虫送り」の行事も行われました。
 このような、神仏への祈願、呪い、「虫送り」などのほか、タバコ、よもぎ、ドクダミのような苦みが強い植物を苗
代の用水取り入れ口、排出口など水口に埋め、それらを腐らし、その臭いを水に移し害虫を苗に近づけさせないとか、これらの植物成分を水で揉み出し、笹の葉で稲に振りかけていました。
 しかし、最も盛んに利用された方法は注油駆除法です。
 この方法はまず鯨油やなたね油、明治時代になると石油などの油を田圃に注ぎ、水面に油膜を作ります。次いで、わら箒などで稲を左右に叩きながらウンカ類を水面に払い落とします。虫は油膜で飛び去ることができず、油が気門を塞いで虫を窒息死させるのです。
 この技術は1955年頃、塩素系殺虫剤BHCや有機リン系殺虫剤パラチオンが市販されるまで利用されました。
 このように、私たちの先祖は病害虫による農作物の被害を極度に恐れ、当時考えられるあらゆる方法を試みて病害虫の駆除に努めていました。
 しかし、病害虫を十分には駆除できませんでした。
 特に、1732年(享保17年)、徳川第八代将軍吉宗、テレビでお馴染みの暴れん坊将軍の時代に歴史上特記すべき大飢饉が起こりました。西日本を襲ったウンカによって稲が著しい被害を被り、収穫皆無のところもあったようです。「農薬の役割 3」に続きます。

参考:鈴木啓介著「安全食品 農薬を知ろう!」p.141 文芸社 

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2006/05/01

たまねぎの話

 たまねぎはユリ科でネギ属の仲間です。原産地は中央アジアから地中海沿岸に至るあたりとされています。 日本には、1770年代に南蛮船によって長崎に持ち込まれましたが、本格的に普及したのは明治時代になってからです。古代エジプト時代におけるピラミッド建設の様子を記録したものに、労働者が腰にニンニクやたまねぎをぶら下げている図があります。重労働のため、貴重な強壮剤としてニンニクやたまねぎが用いられたと考えられています。たまねぎがピラミッド建設時の労働者に給料として支払われていたという説もあります。
 たまねぎは、血液の凝固を抑制(血液をサラサラ)する働きやコレステロールの合成を抑制する作用があり、脳卒中や脳血栓、あるいは心筋梗塞など多くの生活習慣病の予防に欠かせない食品の一つとして認められています。主な生理機能について次に記します。
血栓防止作用
 たまねぎの中には特有の含硫物質(硫黄を含んだ物質)があります。たまねぎが切り刻まれ細胞が破壊されると出てくる酵素によって、この含硫物質はいろいろな含硫物質に変化します。変化物の一つであるチオスルフィネートは、血栓の予防薬アスピリンやニンニク成分と同程度の血栓予防作用があります。また、この変化物は別の含硫物質と協力して、さらに血栓予防効果を高めることも明らかになっています。血栓予防の効果を期待するには、たまねぎを水にさらさずに、そのまま生で食べるのがよいが、加熱する場合には切り刻んだ後15分ほど、できれば1時間ほど放置してから調理するとよいといわれています。
がん予防作用 
 たまねぎの抽出物は、発がん物質として有名なニトロソアミンの生成を抑制する働きがあります。また、たまねぎの含硫物質は発がん物質を解毒する体内機構を活性化してがんの予防に役立つと考えられています。
動脈硬化予防作用
 たまねぎに豊富に含まれている成分の一つであるケルセチンは、強い抗酸化作用があり、活性酸素によって引き起こされるとされる動脈硬化症やがんの予防、老化防止などとの関連が注目されています。たまねぎを油炒めすると、ケルセチンの体内利用率が高まり、疾病予防機能を高めると考えられています。
血糖値の急激な上昇を抑制する作用 
 たまねぎのフルクタンは水溶性食物繊維であるため、腸管内で糖の吸収を遅らせ、血糖値の急激な上昇を抑制したり、また、ビフィズス菌などを増殖させる作用が強く、腸内環境を改善して整腸作用を示すものと期待されています。
抗菌作用
 たまねぎには抗菌作用があります。たまねぎの成分はむし歯の原因となる口の中の細菌の増殖を阻害したり、ある種の皮膚病にも有効であると報告されています。
 なお、犬や猫など多くの動物は、たまねぎの含硫物質が体にはいると血液中の赤血球が破壊され、ひどいときには死ぬことがあるといわれています。注意してください。
 参考:①食料と安全 第8巻第11号p.32
     ②Phytother.Res.,16,603-615(2002) など

   

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2006/04/01

農薬の役割 1

 農家の人たちは農薬の散布は最も嫌いな作業の一つであるといいます。真夏の暑いとき、特にビニルハウスの中は30度以上、時には40度近くにもなり風通しも悪く、その中で散布用の防護衣を着て、手袋、マスク、メガネを付け、重い薬液タンクを背負い、畑を何回も往復するのは大変な重労働です。その上、農薬の購入代金も結構馬鹿にならないのです。農薬は散布しないで済めばそれに越したことはありません。
 しかし、わが国はアジア・モンスーン地帯に位置し、夏は暑く湿度も高いため病害虫の発生が多く、雑草も繁茂しやすいのです。さらに、わが国の農業は狭い地域の中に多くの種類の農作物を栽培し、ビニルハウスなどの施設栽培も発達し、また、栽培規模が小さいため単位面積当たりの収量も上げなくてはなりません。
 このような農業の特徴は病害虫や雑草の発生に好都合となり、農薬散布なしで農業を営むことが困難になります。病害虫が大発生した年には収穫がゼロになることもあります。
 農薬はやむを得ず使用されているのです。
 自然の生態系は、その地域における気象条件とか地理的条件などの環境下において、多種多様な植物や動物などの間に存在する、ある種のバランスの基で成り立っています。農業を営むには、まず、樹木を切り倒し雑草を取り除き、土を掘り起こして田畑を作ります。そこに品種改良された単一作物を栽培します。これらは自然のバランスを壊すことになります。
 人類が野生の植物の中から農作物を作り始めたのは約1万年前と推定されています。はじめは野生の植物から食べられそうなものを選んできたと思います。さらに進んで、野生の植物が病害虫などの外敵から身を守るために持っていた堅い果皮、苦み、有毒成分など植物自身の武器を、人類は長い時間をかけて一つ一つ奪い、食べやすいように品種改良して今日の農作物ができました。
 その結果、農作物は自然の外敵に対する抵抗力が失われてしまいました。
 農作物は野生の植物に比べると食味がすぐれ、可食部が柔らかく肥大しています。
 これらは昆虫にとっても好ましい食べものです。昆虫は直ちにこれらの農作物に集まり、また、雑草の種も田畑へ限りなく飛び込んできます。
 農業は病害虫や雑草との戦いを続けてきたのです。

参考:鈴木啓介著「安全食品 農薬を知ろう!」p.141 文芸社 

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2006/03/02

お茶の話 3

抗肥満効果
 実験動物にカテキンを1ケ月間投与したところ、体重が減少し内臓脂肪が低下しました。そこで、ヒトにカテキン555mgおよび902mgをそれぞれ12週間、毎日与えたところ、いずれも体重や皮下脂肪の厚さ、内臓脂肪の面積が低下しました。これらの結果を基に抗肥満緑茶が開発され、販売されているそうです。
抗がん作用
 静岡県内の胃がん死亡率の調査が1973年から5年間実施されたところ、茶を生産し、よく飲む地域の胃がん死亡率は全国平均の5分の1以下でした。また、別の調査でもお茶をよく飲む市、町、村のがん死亡率は全国平均の5分の1以下でした。また、がんの治療の中で最も重要視されるのは、がんの転移を阻止することです。がん転移阻害作用がある茶成分があるかどうか検索したところ、ある種のカテキンおよび紅茶に含まれるテアフラビンに強い阻害作用が見いだされました。茶成分に実用的ながん転移阻害作用があるかどうか、現在、研究が行われています。
 一方、緑茶のがん予防効果は期待したほどではなかったという新聞報道(毎日新聞 2005年12月5日)もありました。茶の生産者と一般の人たちの間には茶の飲み方に大きな違いがあるからと思われます。
 上記のように、カテキン類には抗酸化作用、抗菌抗ウイルス作用など数多くの生理機能がありますが、カテキン類は血液中に一度に僅かしか吸収されません。カテキン類をできるだけ多く吸収するためには、茶を飲むとき、2、3注意する必要があります。
 ❶煎茶、玉露、抹茶、番茶、ほうじ茶の中で、カテキン類が最も多いのは煎茶です。
 ❷カテキン類の中でも特に高い効果を発揮するEGCGは高温の湯に溶けやすいので、緑茶は100℃の湯で3分  待って淹れます。やや渋めの味となります。
 ❸緑茶を飲んだ2時間後にはカテキン濃度がピークとなり、3時間後には濃度はほぼゼロとなりますので、緑茶  は1日に何度も飲むようにします。
カフェイン
 茶は昔から「目覚まし草」と呼ばれており、茶のカフェインには覚醒作用があります。また、カフェインには利尿作用もあるといわれています。
γ-アミノ酪酸
 数年前に誕生したばかりのギャバロン茶という新しい茶があります。国立茶業試験場(旧称)が商業的に価値の低い二番茶、三番茶の利用法を研究中に偶然開発されました。このギャバロン茶はγ-アミノ酪酸(ギャバ)と呼ばれるアミノ酸の一種が普通の緑茶の20~30倍多く含んでおり、血圧降下に著しい効果を発揮します。
 これらのほか、特定品種である「べにふうき」や「べにほまれ」は花粉症などのアレルギー症状に効く成分を多く含むことで、最近一躍脚光を浴びています。さらに、緑茶のおいしさに関係があるといわれているテアニン等のアミノ酸(旨み)など、緑茶には数多くの生理機能が見いだされています。
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2006/02/19

お茶の話 2

 茶の葉にはカテキン類(渋み)、カフェイン(苦み)、各種のビタミン類(C、B,A、E)、テアニン等のアミノ酸(旨み)、食物繊維などが含まれています。緑茶にはカテキン類が10~13%含まれており、主要なカテキンは4種類です。これらのうち抗酸化作用の強いエピガロカテキンガレート(EGCG)が最も多く50%程度を占めています。緑茶のカテキン類は煎茶が約13%で最も多く、玉露と抹茶は約10%、番茶は約11%です。
カテキン類
 緑茶のカテキン類には①抗酸化作用、②抗菌抗ウイルス作用、③消臭効果、④歯の健康保持効果、⑤抗肥満効果、⑥抗がん作用など数多くの生理機能があるといわれています。主なものについて次に記します。
 抗酸化作用
 緑茶のカテキン類は抗酸化作用が強く、老化と密接な関係があるといわれている過酸化脂質の生成を抑えることが認められています。特に、EGCGの抗酸化作用はビタミンEの18.5倍強という実験データも得られています。また、カテキン類は、血管内の過剰な活性酸素を消去し悪玉コレステロールの酸化を抑え、生活習慣病の一因である動脈硬化を防ぐ働きがあります。
 抗菌抗ウイルス作用
 緑茶のカテキン類には三大食中毒原因菌とされるサルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌のほか、病原性大腸菌O-157を殺菌する作用が認められています。食事中や食後すぐに、一、二杯の緑茶を飲めば効果があるそうです。腸内には善玉菌や悪玉菌など、100兆個もの細菌がいます。悪玉菌が善玉菌よりも増えると免疫力が低下し、体調不良や慢性的な便秘を引き起こしますが、緑茶一日五、六杯相当量のカテキン類を3週間投与したところ、腸内細菌の菌叢が変化し便中の総細菌数が減り、ビフィズス菌や乳酸菌など善玉菌が増加し、悪玉菌が減少したことが認められました。また、日本人の約半数は消化性潰瘍や胃がんの引き金になっているピロリ菌に感染しているといわれています。緑茶のカテキン類はピロリ菌に対する抗菌作用も示し、カテキン類を投与したピロリ菌感染者34名中6人が完全に除菌され、半数以上にピロリ菌の活性低下が認められました。緑茶を飲むことがピロリ菌に関連した病気の予防に役立つことが期待されます。また、乳幼児の腸内で繁殖し、下痢を引き起こすロタウイルス感染を阻止する成分が、緑茶にあることも明らかになりました。茶には抗ウイルス効果もあり、緑茶や紅茶でうがいするとインフレンザの予防効果が実感できるそうです。
 消臭効果
 緑茶のカテキン類は揮発性の窒素化合物や硫黄化合物と結合して、その臭気を消す作用があります。
 歯の健康保持効果
 緑茶にはカテキン類とフッ素が含まれています。カテキン類はむし歯の主な原因になる歯周菌を殺したり、口腔内細菌の増殖を著しく抑制します。フッ素は歯のエナメル質を強化するので、カテキン類と相乗してむし歯を予防する効果があります。
 以下、「お茶の話 3」に続きます。

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2006/02/01

お茶の話 1

 茶の原産地は中国の雲南省とベトナムからインド東部にかけての山岳地帯だといわれており、日本には平安時代に最澄や空海が中国の唐から茶を持ち帰ったとされています。鎌倉時代には臨済宗の開祖である榮西禅師が「喫茶養生記」を著し、その中で”茶は養生の仙薬なり、延齢の妙薬なり”と喫茶の効能を記しています。榮西禅師以後、茶道が千利休によって体系化され、さらに江戸時代には煎茶として飲む習慣が一般的になりました。
 現在、お茶は日本人の生活に深く根付いており、「茶柱が立つと縁起がよい」、「鬼も十八、番茶も出花」、「お茶を濁す」など、「茶」の字のつく「ことわざ」が多く見られます。
 日本では茶といえば緑茶ですが、イギリスをはじめ世界各国では紅茶が飲用されています。緑茶と紅茶は同じ茶の葉から作られます。緑茶は茶葉を蒸して酸化酵素を殺した後、揉んで乾燥させたものです。紅茶は茶葉を蒸さずに発酵させるので、酸化酵素が茶のカテキン類(通称タンニン)を酸化して茶色に変色したものです。このカテキン類の酸化を途中で止めた茶がウーロン茶です。緑茶には玉露や抹茶、煎茶などがあります。玉露は煎茶に比べてうま味が強く渋みが少ないが、これは茶樹の栽培法の違いによるものです。玉露は成長期の新芽がよしず等で遮光されて作られるので、新芽が鮮やかな緑色になり、うま味成分が増え、渋みを示すカテキン類の増加が抑えられるのです。さらに独特の香気も生成されます。茶の湯で使われる抹茶は玉露と同様に遮光されて栽培された茶葉の微細な粉末で、茶葉を蒸した後、揉まずに乾燥し石臼で挽いて作られます。
 日本人がお茶といえば、通常、煎茶をさしています。茶を飲む際に知っておくとよいことがらを次に列記します。
①茶を注ぐ湯は玉露では50から60℃、煎茶(上)では70℃、煎茶(並)では90℃、番茶やほうじ茶では熱湯がよ  いとされています。
②中国では「食前にお茶を飲むのは貧乏人の家に強盗にはいるようなもので、食後のお茶は医者が青くなる」と いわれています。食前の茶は消化不良を起こしやすく、茶の諸成分を活用するには食後が効率よいとされてい ます。
③空腹時に濃い茶を飲むと、胃の粘膜を荒し消化液の分泌を妨げ、胃腸の弱い人は吐き気や下痢を起こすことが あります。
④茶で薬を飲んではいけません。茶の諸成分が薬の作用を低下したり、吸収を妨げることがあります。
⑤「宵越しの茶は飲むな」といわれています。茶の浸出液には抽出されないたんぱく質が夏には一夜で腐敗し、 お湯の中に溶け出しやすくなり、食中毒を起こすおそれがあります。
⑥茶を飲むと肌が黒くなると心配する人がいますが、そのようなことはありません。
⑦沢山食べながら茶を飲んでも、やせることはありません。
⑧寿司屋が煎茶を使うのは、茶のカテキン類は消臭効果や抗菌作用が強いので、生鮮魚介類の消臭と食中毒  予防のためと考えられます。
⑨玉露や煎茶などは冷蔵庫に保管し、早めに使うようにします。
 なお、お茶の効能などについては「お茶の話 2」、「お茶の話 3」で記します。
 参考:①つくばリサーチギャラリー資料「茶を科学する~茶のさらなる活用をめざして~」
     ②茶のサイエンス 筑波書店;③日本茶全書 農文協、など

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