アスパラガスの話
アスパラガスは玉ねぎ、にんにく、にらなどと同じユリ科の雌雄異種の多年生植物です。アスパラガスは、歴史が非常に古く、紀元前からギリシャやローマで栽培され、薬用や食用に供されていたといわれています。日本へは江戸時代にオランダ人によって長崎に伝えられました。当時は繁茂した姿がかすみ草に似ているので、観賞用に栽培され、オランダキジカクシ、オランダウドなどと呼ばれていました。食用としての導入は明治4年とされており、大正になって本格的な加工用栽培がされるようになりました。アスパラガスは長さが25cmくらいに伸びた柔らかい茎を食用とします。盛り土をして日光を当てないように栽培したものをホワイトアスパラガスといい、普通に栽培した緑色のものはグリーンアスパラガスといいます。ホワイトアスパラガスはクリーミーな独特の風味、柔らかい歯ざわりと高級感があり、「野菜の女王」とか、「貴婦人の指先」などと呼ばれますが、栄養的にはグリーンアスパラガスの足元にも及ぶません。ホワイトアスパラガスにはビタミンCおよび食物繊維が含まれていますが、グリーンアスパラガスにはカリウム、カロテン、ビタミンB1、B2、E、葉酸(水溶性ビタミン)、アスパラギン酸のほか、穂先にはルチンが含まれています。特に、カリウム、ビタミンB1、B2、E、葉酸はサラダなどによく使われる野菜(ブロッコリー、トマト、キュウリ、レタス、キャベツ、セロリ、大根、カリフラワー、玉ねぎ)の中ではトップクラスです。しかも、グリーンアスパラガスの葉酸(ゆで180μg/100g)は、ほうれん草(ゆで100μg/100g)、いちご(90μg/100g)よりもかなり多く含まれています。
グリーンアスパラガスは野菜の中ではタンパク質と糖質が比較的多く、ビタミン類、ミネラル、食物繊維など、さまざまな栄養をバランスよく同時に摂れる緑黄色野菜です。
アミノ酸の一つであるアスパラギンはアスパラガスから初めて発見されたために命名されました。これは体内でアスパラギン酸に変化し、新陳代謝を促し、スタミナの増強や疲労回復にも効果があるといわれています。ルチンは毛細血管を丈夫にする働きや、弾力性がなくなり破れやすくなった血管を修復する働きがあるため、高血圧や眼底出血を防ぐ作用があります。
アスパラガスの機能性に関する研究例は余り多くありません。
発がん、認知機能障害などの予防:アスパラガスに豊富に含まれている葉酸を多く摂取すると、すい臓がんの発症リスクが減少することがスエーデンに住む男女81,922人を対象とした疫学調査で明らかになりました。葉酸の摂取量が最も多いグループ(1日当たり350μg以上)は、最も低いグループ(1日当たり200μg以下)と比較すると、すい臓がんの発症リスクが75%も低いことが分かりました。サプリメントから葉酸を摂取しても、すい臓がんの予防効果は認められませんでした。
また、ホワイトアスパラガスの特徴ともいえる苦味成分であるサポニンは、ある種のがん細胞の増殖に対して抑制作用が認められた、ルチンは初期段階のがんを抑制したなどの報告もありました。葉酸とビタミンB12の組み合わせが肺がん予防に効果があるということも話題になりました。さらに、葉酸が不足すると、特に高齢者では認知機能障害や血管症などが誘発されるので、アメリカでは数多くのインスタント穀類に葉酸が添加されているが、アスパラガスやいちごなど葉酸に富んだ食品を摂取するほうがよいと報告されました。
血圧上昇抑制作用:血圧を上昇させるメカニズムの一つとして、血液中に存在するホルモンの一種アンギオテンシン1がACE(酵素)によってアンギオテンシンⅡに変換されます。このアンギオテンシンⅡは血圧を上昇させる物質です。したがって、このACEの作用を阻害してやればアンギオテンシンⅡができにくくなり、血圧の上昇を抑制することができます。数多くの食物の抽出物について、このACEに対する阻害試験を実施したところ、そば粉、アスパラガス、からしな、いちご、小豆、パイナップルなどに阻害活性が高いことが分かりました。この事実からアスパラガスには血圧上昇抑制作用が期待されます。
便通解消など:アスパラガスやバナナには消化吸収されにくい低カロリーのフラクトオリゴ糖が含まれています。この糖は小腸で消化されずに大腸まで到達し、ビフィズス菌や乳酸菌などの栄養源となり善玉菌を増殖します。アスパラガスには便通解消や腸内環境の改善効果があります。
なお、アスパラガスは茹でてよし、揚げてよし、焼いてよし、和食や洋食、中華料理のいずれにも広く使用できます。保存する場合には濡れた新聞紙などに包んで乾燥を避けて冷蔵庫に立てて入れます。
参考:1.津志田ら:地域特産物の生理機能・活用便覧 サイエンスフォーラム 2004年 2.飯野久栄・堀井正治編:医食同源の最新科学 農文協 1999年
3.Larsson SCら:J Natl Cancer Inst. 2006 Mar 15;98(6):407-13
4.Shao Yら:Cancer Lett. 1996 Jun 24;104(1):31-6
5.Rampersaud GCら:J Am Coll Nutr. 2003 Feb;22(1):1-8
6.Gibson GR:Br J Nutr 1998 Oct;80(4):S209-12
| 固定リンク


コメント