メロンの話
メロンとマクワウリはウリ科キュウリ属の植物です。ウリ科植物には数多くの変種があり、原産地は西アフリカのニジェール川流域と推定されています。わが国には中国を経て伝わったと考えられていますが、西アフリカから東方へ伝わった品種群はウリと呼び、マクワウリや主として奈良漬けなどに使用される「シロウリ」があります。わが国の古墳時代には既にマクワウリ品種やウリ品種が存在していました。
一方、西アフリカから古代エジプトを経て西方に伝わり、後にヨーロッパで改良されたのがメロンです。
わが国へは明治時代に西洋系ネットメロンがイギリスやフランスから導入されましたが、メロンは非常に高価で一般庶民には高嶺の花でした。
昭和30年代後半に、マクワウリとメロンの交雑育種によって新しいメロンが作られ、皇太子(平成天皇)のご成婚に因んで「プリンスメロン」と命名されました。このプリンスメロンは栽培しやすく低価格で味もよいため、メロンが一般家庭へ急速に普及しました。同一起源のマクワウリとメロンが数千年の時を経て東回りと西回りで再会し、交雑してプリンスメロンが誕生したことになります。何か、大変なロマンを感じさせられます。
現在、メロンには次のような品種があります。
ネットメロン(緑肉系)・温室メロン・・・・アールスメロン(マスクメロン)
・アンデスメロン、アムスメロン
ネットメロン(赤肉系)・夕張メロン
・クインシーメロン
ノーネットメロン ・プリンス系・・・・プリンスメロン
・ホームランメロン
・マクワウリ系・・キンショウメロン
ガラス温室で栽培されているアールスメロン(マスクメロン)は高級品種であり、ビニルハウス栽培されているアンデスメロン、アムスメロン、夕張メロン、クインシーメロンは外観と肉質がアールスメロンに近い特性を有しています。露地でビニルトンネル栽培されているのはノーネットメロンです。
メロンは甘くておいしい果物ですが、100g当たりのカロリーは42Kcalと少なく、バナナの1/2以下、ジャムパンの1/7以下、ポテトチップスの1/13以下であり、パセリ程度です。赤肉系のメロンにはカロテンが緑黄色野菜の基準である600μg/100gをはるかに超え、3,600μg/100gも含まれています。カロテンは体内でビタミンAとして作用するほか、種々の疾病の原因となる活性酸素を取り除く抗酸化作用や抗がん作用が明らかにされています。このカロテン含量はビタミンAの一日当たりの推定平均必要量をかなり上回っています。
また、メロンにはカリウムが可食部100g当たり340~350mg含まれており、生鮮果実の中ではトップクラスです。カリウムは体内の余分な塩分を排除する働きがあり、高血圧や腎臓機能障害の予防に役立ちます。また、温室メロンにはギャバ(γ-アミノ酪酸)が豊富に含まれていることが明らかにされました。ギャバを含む食品には「血圧が高めの方に適する」とされる特定保健食品があります。この点からもメロンの摂取は高血圧の予防によいといえます。メロンの機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:2002年、インドで胆のうがん患者64名、胆石持ち101名を対象に疫学調査が実施されました。その結果、メロンの摂取は胆のうがん予防に効果があると認められました。また、66歳以上のマサチューセッツ住民1,271名を対象に5年間の死亡率を疫学調査したところ、メロンを含む緑黄色野菜・果物の摂取量「多」のグループは、「少」に比べ、がんの死亡リスクが70%低かったと報告されました。さらに、赤肉系メロンに豊富に含まれているβ-カロテンは強い抗酸化力で活性酸素の生成を抑制し、がんを防ぎ、特に口や喉のがん、肺がんなどの予防作用が明らかにされています。
血栓予防:昔からアルゼンチンやドイツなどでは、たまねぎ、にんにく、メロンなどが血液の粘度を下げる食品とされていましたが、メロンには血小板凝集を抑制する作用が強いことが認められました。27種類の果物のうち、血小板凝集を抑制する作用が強いものとして、ホームランメロン、アムスメロン、マスクメロン、プリンスメロンなどが挙げられました。このことからメロンには脳血栓や心筋梗塞などの予防効果が期待できると考えられています。
白内障摘出リスク低下: イタリーで白内障摘出と食物摂取の関係が患者207名および対照者706名を対象として疫学調査された結果、メロン摂取量「多」のグループは、「少」に比べ、白内障摘出リスクが50%低下したと報告されました。
なお、メロンは追熟すると香りや甘味が増します。冷蔵庫にはすぐ入れずに常温で保管して果皮がやや黄色になり香りが強くなってから食べましょう。また、メロンにはアレルゲンがある可能性があります。口の中がチクチクしたり、違和感があるときは注意が必要です。
チョット一休み
その1:アンデスメロンは日本産です。農家が「安心して」作れて、消費者も「安心して」買えるということから、「安 心ですメロン」を略して「アンデス」と名付けられたといわれています。
その2:メロン、いちご、すいかは果物?「くだもの」とは「木になる果実」を指すといわれています。これらは「草に なる果実」ですから生産段階では野菜に分類されており、流通段階の店頭では果物として扱われていま す。
参考:
①間芋谷 徹・田中敬一:くだもののはたらき、日本園芸農業協同組合連合会、2003
②津志田藤二郎編:地域農産物の品質・機能性成分総覧p.213 サイエンスフォーラム、2000年
③中嶋洋子・蒲原聖司監修:最新栄養成分事典p.162 主婦の友社 平成15年
④Pandey Mら:Eur J Cancer Prev. 2002 Aug; 11(4):365-8
⑤Tavani Aら:Ann Epidemiol. 1996 Jan; 6(1):41-6
⑥Colditz GAら:Am J Clin Nutr. 1985 Jan;41(1):32-6
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