レタスの話
レタスはキク科植物で、ヨーロッパの中部からトルコ、コーカサス地方にかけて野生種が分布しています。BC4500年にはエジプトで野菜として利用されていたことが古墳の壁画から知られています。ギリシャ・ローマ時代には盛んに栽培され、ギリシャの哲学者アリストテレスもレタスを賞味したといわれています。6世紀頃には中国に伝播され、「チシャ」と呼ばれました。16世紀のヨーロッパで玉レタスが現れました。現在、レタスは欧米では非常に重要な野菜になっています。日本でレタスと呼ばれている玉レタスは明治以降にアメリカから導入されましたが、本格的に普及したのは洋食化が進んだ第二次大戦以降です。
レタスの茎葉は乳状の汁液を出し苦味があります。この液体はラクチュコピコリンと呼ばれるポリフェノールの一種で、「軽い鎮静作用、睡眠促進作用」の効果があり、19世紀頃まで乾燥粉末にしたレタスが鎮静剤として利用されていたといわれています。
レタスの語源はラテン語で「牛乳」を意味し、また、和名のチシャ(チサ)も「乳草(チチクサ)」を意味し、洋の東西を問わず同一語源から由来していることは興味深く感じられます。
余談になりますが、レタスだけを使ったサラダを「ハネムーンサラダ」というそうです。lettuce alone(レタスだけ)は、let us alone(私たちだけにして)と発音が類似しているからです。
レタスには次のような種類があります。
1.玉レタス(玉チシャ):わが国における普通のレタスで、結球は堅く完全に包合しています。食味は良好で歯切 れよく、甘味があり水分に富み、アメリカで多く栽培されています。
2.サラダ菜:結球するが、柔らかく頂部は完全には包合しません。主に皿に敷いて色取りや添え物に使われる ほか、サンドイッチなどにも利用されます。
3.コスレタス(立チシャ):白菜に似て丈の高い球状になります。
4.リーフレタス(葉チシャ):結球しないが葉数は多い。わが国での栽培は少ない。この仲間にはサニーレタスが
あります。
5.ステムレタス(掻きチシャ、茎チシャ):葉色は淡緑色で生育するにつれ茎は長く伸びる。葉は掻いても食べる が、主として茎を食べます。茎は煮てアスパラガスのように食べたり、油炒めなどします。わが国ではこの茎を 乾燥した後、水で戻し漬け物に加工した「山クラゲ」が有名です。
レタスは種類によって栄養価が大きく異なり、サラダ菜は玉レタスよりビタミン類、ミネラルともに多く含まれています。特に、カロテン(2,200μg/100g)は同じサラダ野菜のブロッコリー(770μg/100g)やトマト(540μg/100g)よりも、はるかに豊富です。玉レタスは栄養豊富な野菜ではありませんが、アメリカではサラダやハンバーガーなどへの利用が多いため、栄養分としてレタスの貢献度は高いといわれています。
レタスはサラダやハンバーガーなどに利用するほか、中華炒め、みそ汁の具、おでんの添え物など加熱処理することもできます。加熱すると苦味が弱まり甘味が増します。
レタスの機能性について研究例を次に記します。
抗がん作用:2000年、フランスで非喫煙者における食物と肺がんの関係が、肺がん患者506名および対照者1,045名を対象として疫学調査が実施されました。その結果、レタスを頻繁に摂取する人たちは肺がんの発症リスクが40%低いことが分かりました。わが国に在住する喫煙者および過去の喫煙者について、肺がん患者282名、対照者282名を対象として疫学調査が実施されたところ、果物、生野菜、緑黄色野菜、レタス、キャベツの摂取が肺がん予防に効果が認められました。レタスやキャベツを頻繁に摂取する人は肺がんの発症リスクが半減しました。特に、喫煙者の場合、発症リスクは著しく減少しました。また、2004年、わが国で胃がん、乳がん、肺がん、結腸・直腸がんの発症リスクと、がんの家族歴やライフスタイルとの関連を調査するため、胃がん患者1,988名、乳がん患者2,455名、肺がん患者1,398名、結腸・直腸患者1,352名および対照者50,706名を対象として疫学調査が実施されました。その結果、果物、生野菜、にんじん、かぼちゃ、キャベツ、レタスなどを頻繁に摂取しており、運動習慣のある人たちは上記4つのがんに対する発症リスクが減少していました。生野菜の頻繁な摂取および運動習慣は、がんの家族歴の状況にも拘わらず、がんの発症リスクを減少させることが明らかにされました。2000年、アメリカで、α-カロテン、 β-カロテン、リコペン、ルテインなど6種類のカロテノイドと大腸がんの発症リスクを、結腸がん患者1,993名および対照者2,410名を対象として疫学調査が実施されました。その結果、ルテインには大腸がん予防効果が認められ、その他のカロテノイドでは効果は明らかでありませんでした。ルテインが豊富なほうれん草、ブロッコリー、サラダ菜、サニーレタスなどの食品を食事に加えることによって大腸がんの進行リスクを減少させるだろうと報告されました。
心臓血管症予防: 実験動物の餌にレタスを20%添加し、3週間飼育したところ、餌中のコレステロールの吸収が著しく(-37%)低下し、糞中のコレステロ-ル関連物質の排泄が44%増え、さらに総コレステロールに対する悪玉コレステロールの割合が減少し、肝臓のコレステロ-ルレベルも著しく減少(-41%)しました。レタスを習慣的に摂取することは体内におけるコレステロールレベルの低下のほか、ビタミンC、E、カロテンのような抗酸化物も供給されるので、心臓血管症に対して予防的に働くと期待されます。
なお、レタスは冷蔵庫に保管してもビタミンCは1週間で半減しますので、購入後できるだけ速やかに食べきります。また、鉄に触れると切り口が褐色に変化しますので、包丁を使わず手でちぎるとよいでしょう。
参考:1.清水 茂監修:野菜園芸大事典 養賢堂発行 1985年
2.Brennan Pら:Cancer Causes control 2000 Jan;11(1):49-58
3.Gao CMら:Jpn J Cancer Res. 1993 Jun;84(6):594-600
4Huang XEら:Asian Pac J Cancer Prev. 2004 Oct-Dec;5(4):419-27.
5.Slattery Mlら:Am J Clin Nutr. 2000 Feb;71(2):575-82
6.Nicolle Cら:Clin Nutr. 2004 Aug;23(4):605-14
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